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第439話 ブルック。王都で皆に報告1。

アズパール王の書斎にてアズパール王とウィリアム達第3皇子一家とアリスの5名が夕食前のお茶をしている。

「やっぱり毎日来てくれぬか?」

アズパール王が皆に懇願する。

「・・・面倒です。」

ウィリアムが呟くと他の面々が苦笑する。

と、アズパール王の書斎の扉がノックされる。

「構わぬ。」

「失礼いたします。」

書斎の前に居る警備兵と執事が入って来る。

「失礼いたします。

 陛下、カトランダ帝国より書簡が参っております。」

「うむ、ご苦労。」

「は!こちらになります。

 では、失礼いたします。」

アズパール王が書簡を受け取ると警備兵と執事が退出していく。

・・

「父上、カトランダ帝国からですか?

 例の宣戦布告でしょうか?」

ウィリアムが聞いてくる。

「あの・・・私は席を外した方がよろしいのでは?」

アリスがアズパール王に聞く。

「いや・・・違うな。

 アリスも退出する必要はない。」

アズパール王は書簡の内容を一目見て懐にしまう。

と、書斎の扉が再びノックされる。

「構わぬ。」

「失礼します。」

先程の警備兵が入って来る。

「王都守備隊総長と部下の方が参られました。」

「そうか、通せ。」

「は!」

警備兵は王都守備隊総長達を通す。

「失礼します。」

守備隊総長が礼をし、後ろに控える部下2名も礼をする。

「どうした?」

「はっ!

 キタミザト殿とカトランダ帝国に視察に行っていた2名が一旦戻りましたので報告に参りました。」

「・・・途中で戻ってくるということは緊急か?」

アズパール王は疲れた顔をしながら聞く。

「いえ、違います。」

守備隊総長が苦笑を返す。

「そうか!で、どうしたのだ?」

アズパール王は明かにホッとした表情で返事をする。

「はっ!部下から報告をさせます。

 ブルック。」

「はっ!

 詳細は全員が戻り次第報告書を提出いたします。

 キタミザト殿は3日前にカトランダ帝国からアズパール王国に無事帰国いたしました。

 カトランダ帝国での視察の結果、小銃を製作及び販売していた3工房がエルヴィス伯爵領へ移住する事に合意し、キタミザト殿に同行しております。」

「ほぉ、流石、タケオだな。

 目的を達成させたか。」

アズパール王が嬉しそうに頷く。

「またキタミザト殿はカトランダ帝国にて奴隷商から2名を買い取り側近にされました。」

「「「「はぁ!?」」」」

その場にいる王都守備隊3名以外が驚く。

「買い取りをした奴隷に我々5名とキタミザト殿、ミア殿で聞き取り調査をした所、エルヴィス伯爵領の隣の魔王国領の獣人の伯爵と自称しております。」

「・・・雲隠れ・・・」

レイラが呟く。

「・・・エルヴィス伯爵からの報告に繋がるな・・・

 それにしてもタケオは引きが強いな。

 よくそんな大物と出会えるものだな・・・」

「陛下、実はミア殿が事前に確認し、その報告を聞いてから買うことを決めました。

 奴隷はミア殿が聞き取りした際に『魔王国とは戦えるが、領民を殺せない』と言った事をキタミザト殿は評価され購入を決断されています。」

「うむ・・・そうか。

 確かにまともそうな者だな。

 ちなみに我が国は奴隷制度を採用していない。この事はタケオは認識していたか?」

「はい。第一近衛分隊長が説明しております。」

「そうか・・・タケオは何と言っていた?」

「・・・特に奴隷制度については何も・・・

 ただ2人とも私達に奴隷としてではなく、キタミザト殿の直属の部下として接するように言われています。」

「ふむ・・・そうくるか・・・待遇はどうだ?」

「採用契約として、毎月2人合わせて金貨6枚の給金で採用し、25年間キタミザト殿の下で仕事を行い、金貨300枚が貯まったのちに奴隷契約を破棄すると明言されています。」

「・・・ウィリアム。」

「はい。父上、何でしょうか?」

「我が国が奴隷制度を採用しない理由は知っているか?」

「はい。奴隷が著しい低賃金で働かされ利益を雇い主が独占することによる社会の不均等を防ぎ、奴隷達が雇い主を妬む事で引き起こす政情不安を取り除く為ですね。

 そして王政廃止を唱えられたり裏家業の者どもが蔓延る切っ掛けを与えない為でもありますね。」

「そうだな。

 ・・・で、タケオの奴隷なのだが・・・普通に部下だな。」

「ええ、奴隷の待遇ではないですよね。」

アズパール王とウィリアムが「あれ?」と首を傾げる。

「タケオさんらしいわ。

 他にはその奴隷に何か言ったりとか行動はしていないの?」

レイラが楽しそうにブルックに聞いてくる。

「えーっと・・・

 キタミザト殿が2名を買った際に金貨30枚を渡し、身なりをちゃんとする事と馬の手配とナイフの携帯を許可しています。

 また余った貨幣はそのまま奴隷に渡しております。

 それに2名の給金を教えた際に『少なくてごめんなさい』とキタミザト殿が奴隷2名に謝っておりました。

 そして奴隷の方から逆に『多すぎます』と苦言を言われていましたが、キタミザト殿は『部下で執事なのだから給金があって当たり前』と聞き入れていませんでした。

 何とも変な光景ですが、その光景を私達は見ていましたので、我ら5名は奴隷を奴隷としては見ておりません。

 あくまでキタミザト殿の執事2名として接しています。」

「・・・奴隷に頭を下げる雇い主がいたのだな。

 まぁ・・・タケオらしいと言えばタケオらしいのか?

 優秀な部下を手に入れたぐらいにしか思っていないだろう。」

「ですね。扱いがもう奴隷ではないですね。

 明らかに配下の採用ですね。

 それにちゃんと雇用年数を規定しています。

 ・・・普通奴隷に雇用年数を規定させますかね?」

アズパール王とウィリアムが「あれれ?」と再び首を傾げる。

「んー・・・奴隷を得て入国してきた者には奴隷契約を破棄するように促すのが対応方法なのだが・・・

 ちゃんと奴隷契約の期限を区切っている時点で他の奴隷とは違うな・・・強引に破棄を促せないな・・・」

「ですね。

 今まで聞いた事がない期限付きの奴隷契約ですし、25年というのは普通に王立学院を卒業した文官の採用年数より少ないので特に長いわけでもない。

 給金も2名で金貨6枚だと執事にしては低いですが、3年目の文官程度と同等ですね。

 明らかに少ないとは言えないですね。」

「と、いう事は?」

アルマが聞いてくる。

「タケオが『この2名は奴隷ではないです。部下です』と言えば出会いが奴隷売買だっただけで部下だな。

 それにこっちから奴隷契約を破棄するように言った場合・・・タケオならどう出ると思う?」

アズパール王がため息をつきながら皆に聞く。

「・・・タケオさんなら『優秀な部下を王都の命令で手放すのだから金貨300枚を払ってもらいましょう』とか言うかも。」

レイラが答える。

「・・・僕は奴隷破棄の契約金である金貨300枚とタケオさんが2名を25年間雇った際に受ける利益分の請求が来ると思うなぁ。」

ウィリアムが思案しながら答える。

「・・・我もそう思う。

 最低でも金貨600枚は用意するべきだろうな・・・」

アズパール王がため息をつく。

「はぁ・・・金貨600枚も用意は出来ないでしょう。

 なら奴隷契約もちゃんと履行するように紙に書かせて特例で認めれば良いのではないのですか?

 それに行方不明になっていた伯爵をタケオさんが救ったとして報奨金を与えてみるのも良いのでは?」

「ふむ・・・だが、ファロン伯爵は爵位剥奪を正式にされておるので魔王国相手の手札には使えないな。

 我らが仕組んだと言いがかりを受けてもつまらん。

 ・・・だが、生きた情報源だな。

 あくまで聞き取り調査をさせて貰えれば特例でタケオの奴隷契約を認めるか。」

「そうですね。」

ウィリアムが頷く。

「守備隊総長、お主も出席して真偽を見極めろ。

 タケオが奴隷を連れてくる前に伯爵にしかわからないであろう事を調べておいてくれ。」

「はっ!」

「うむ、報告は以上か?」

「いえ、まだ半分です。」

アズパール王が聞くとブルックが真顔で答える。

「・・・タケオは一体どれだけ濃い旅をしてくるのだ?」

アズパール王の呟きに他の面々は苦笑するしかなかった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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