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第432話 36日目 何だか久しぶりの一人部屋2(酔っ払いの相手とクリフの牽制)

宿の室内です。


「ん?・・・この感じはヴィクター親子ですね。」

ミアがそう呟く。

「・・・街中はどうだったでしょうかね?」

武雄が少し心配そうに呟く。

と、部屋の扉がノックされる。

「どうぞ。」

と武雄が返事をするとヴィクターとジーナが入って来る。

「主、お疲れ様です。」

「ご主人様、お疲れ様です。」

「はい、2人とも今日もご苦労様でした。

 街中はどうでしたか?

 何もありませんでしたか?」

「はい。やはり町についてすぐに主がマフラーを与えてくださったのが功を奏しているかと。

 誰からも何もありませんでした。」

「まぁ、一時凌ぎでしょう。

 夏場になって気温が高くなったり他の方の屋敷に行った際には取らないといけませんからね。

 それまでに首輪の偏見が無くなってくれるとありがたいのですけどね・・・」

武雄がため息をつく。

「主、平気です。

 私達は耐えて見せますよ。」

「そうですか。

 あまりにもイジメが酷い場合は私に報告を。何か手を打ちますから。」

「はい。」

「ありがとうございます、ご主人様。」

ヴィクター親子が礼をする。

「・・・この感じはエリカ様達?

 ・・・主、鍵をしましょう。」

ミアがそう呟く。

「・・・いやいや、無下に扱うともっと面倒ですよ?」

武雄が苦笑する。

と、部屋の扉がノックされる。

「どうぞ。」

と武雄が返事をするとエリカとカサンドラが入って来る。

「タケオさん、ただいま~。

 あ、ヴィクターさんとジーナちゃんもただいま。」

エリカはほろ酔いで帰ってきた。

ヴィクターとジーナが会釈をしながら武雄の後ろに移動する。

「エリカさん、カサンドラさん、おかえりなさい。

 アズパール王国の食事はどうでしたか?」

「美味しかったですよぉ~。

 いろんな種類があって選ぶのに苦労しました!」

エリカが満面の笑みを向ける。

武雄はカサンドラに顔を向けると顔を振りながら頭を抱え、「すみません」と声に出さずに平謝りしていた

「そうですか。

 お酒も美味しかったですか?」

「はい!

 久しぶりにリンゴ酒があったので飲んでしまいました!」

エリカが報告してくる。

「うんうん、エリカさん達が楽しそうで何よりです。

 明日も早いですからね。

 今日はゆっくりと寝てくださいね。」

「はい!タケオさんと寝ます!」

エリカがぶっ飛んだ発言をする。

「はいはい、エリカ様、行きますよ~。」

カサンドラがエリカを引っ張って退出しようとする。

「私は!タケオさんと寝るの!」

カサンドラに手を引かれながらエリカが喚く。

「タケオ殿は後で部屋に来ますからね~。」

カサンドラが嘘をつきながら引っ張る。

「わかったわ!タケオさん後でねぇ~!」

エリカは手を振りながら退出して行く。

「タケオ殿、あとはお任せください。

 本当に失礼しました。」

カサンドラが深々と頭を下げて扉を閉めて行った。

・・

「・・・今度からエリカ殿が酒を嗜む時はカサンドラ殿が同席している時のみとしましょうか。

 あれが1人でうろつかれたら大変です。」

ヴィクターが皆の心境を代弁する。

「まぁ、やっとお役御免なのでしょう。

 解放感から少し多めに飲んでしまったのでは?」

武雄が苦笑する。

「ご主人様、部屋を私達と変えますか?」

ジーナがジト目で扉を見ながら言ってくる。

「いや、そこまでする必要はないでしょう。

 鍵をしっかりとして寝ますよ。」

「そうですか・・・わかりました。」

ジーナが答える。


「ん?・・・この感じはクリフ様と子爵様ですね。」

ミアがそう呟く。

「・・・最後の難関が来ましたか・・・」

武雄が呟く。

と、部屋の扉がノックされる。

「どうぞ。」

と、武雄が返事をするとクリフとアシュトンが入って来る。

「クリフ殿下、アシュトン殿、いらっしゃいませ。」

武雄が席を立ち挨拶をする。

「うむ、タケオ、のんびりしているか?」

「キタミザト殿、お疲れ様です。」

2人が挨拶をしてくる。

「はい、クリフ殿下のお言葉に甘えのんびりとさせて頂いております。

 アシュトン殿、夕飯にご一緒出来なく申し訳ありませんでした。」

武雄の言葉にクリフは頷き、アシュトンは笑みを返す。

「ふふ、他国への視察は大変だろう。

 骨休めになればそれで良い。

 時にこの2人が?」

「はい。私の執事でヴィクターとジーナです。」

「うむ、そうか。

 事情はタケオから聞いた。

 私もタケオの考えに賛同する。

 その首輪についても国内で偏見が全くないわけではないが、出来るだけ偏見を少なくさせるように努力するつもりだ。

 最終判断は父上がするが・・・お主達が望む方向に行くように努力しよう。」

「「は!殿下、ありがとうございます。」」

ヴィクターとジーナが恭しく礼をする。

「ではな。

 また明日は移動だ。

 ゆっくり休め。」

「畏まりました、殿下。」

武雄も礼をする。

と、クリフとアシュトンが退出して行った。

・・

「・・・ご主人様、今のは?」

ジーナが不思議そうな顔を武雄に向けてくる。

「さて・・・なんでしょうね・・・

 ヴィクター、面倒な事に巻き込んでしまったかもしれませんが・・・」

「主、申し訳ございません。」

ヴィクターが謝って来る。

「いや、どちらが悪いかと言われたらクリフ殿下に言ってしまった私でしょう。

 それにしてもこうも露骨に押し売りされるとは・・・

 まぁとりあえず、25年後の話でしょうね。」

「はい、そうですね。」

ヴィクターが頷く。

「お父さま、ご主人様、どういう事ですか?」

「ジーナ、あれが恩の押し売りと言われる物ですね。

 賛同し努力するというあいまいな言葉で私とヴィクターに恩を売りに来たんですよ。

 まぁ次期国王陛下に言われたのですからある程度は信頼できるでしょうが・・・

 何もしなくても偏見がなければ賛同したからだと言い、偏見が強く何かがあっても努力が足らなかったと言い逃れができますね。

 馬車の中での会話からこれはクリフ殿下の考えではないでしょう。王都で私に借りがありますしね。

 誰の入れ知恵・・・まぁこの場には1人しかいないか・・・入れ知恵というより外聞か牽制かな?

 まぁ私に賛同したという事は25年の奴隷契約を支持するという事。

 そしてヴィクターとジーナへの偏見を和らげるように努力するという言葉は私と2人に対して貸しとしたいのでしょう。

 そして25年後の任期満了に伴って2人をどうするのか・・・その時に向こうから提案がありそうですね。」

「そうですね。」

「つまりはどういうことなんですか?」

ジーナが聞いてくる。

「最悪の事態は2人を旗頭にして魔王国の切り取りに使うことですかね?」

「え?どうしてそうなるのですか?」

ジーナが驚きながら聞いてくる。

「『2人は不当に魔王国から売られた。

  こんな人格者を駆逐する魔王国は打倒すべし!2人を領主に復権させよう』

 ・・・と言って戦争するという所でしょうか?」

武雄がヴィクターに顔を向ける。

「少し強引なような気もしますが・・・まぁ大義名分としてはそんなところですかね?」

ヴィクターが頭を捻って答える。

「大義名分なんて国民向けの同情を引き出す文言ですよ。

 クリフ殿下の取り巻きとしては領土拡大の可能性も残したいのでしょうが・・・

 現場を対応するであろう魔王国に面した地方貴族は面倒な事です。

 勝てば向こうの領地運営、負ければ領地蹂躙・・・割りに合いません。

 それにこっちが勝つという事は向こうの住民を蹂躙するんですけど・・・誰がそんな土地を治めたいと思うのでしょうね。

 いくら同族のヴィクター達を頭に据えても人間の下に付くのは種族として早々には認められないでしょう。

 で、アズパール王国に反旗を翻すような事態が発生した瞬間に義理を仇で返す不当な輩として再侵攻。

 人間種の領地にするぐらいまでは考えましたが。」

「・・・何ですそれ?」

ジーナが訝しがりながら聞いてくる。

「ん?馬鹿な王様が取る可能性がある最悪のシナリオです。

 まぁあのクリフ殿下がそんな事を考えているとは思えませんけどね。

 現状のアズパール王国では他国への進攻に必要な兵士と財力が足りていないのは自覚していますから。

 侵攻作戦は取らないでしょう。」

「主、クリフ殿下は何をする気でしょう。」

ヴィクターが聞いてくる。

「さて、その時になって手札を多く持っていたいのではないかと思います。

 なので、25年後までは何もないと思いますね。

 ちなみに私の案ですが、国や領主、一貴族としての命令として手を貸しません。

 あくまで友人として復讐の手助けはします。

 なので道は用意してあげましょう。

 ですが、最終的に甥っ子をどうするかはヴィクターが決めなさい。

 無意味と考えて実行しないか、奥様の敵として処分したいのか。

 それは25年後の任期満了時に聞きます。

 ですが、それまでは私の執事ですからね?

 勝手に魔王国に越境してはダメですからね?」

「「はい、わかっております。」」

ヴィクターとジーナが答える。

「はい。じゃあ、もう寝なさい。

 明日も移動です。」

「畏まりました。

 では、お先に失礼します。」

とヴィクターとジーナが退出して行った。

・・

「主、クリフ様やアシュトン様は何で私にはそう言った事を言ってこないのでしょうかね?」

ミアが素朴な疑問を言ってくる。

「ミアを擁護してもアズパール王国の利益にならないからと思っているのでしょう。

 ミアは誰かに虐げられているわけでもなく、正当に私の部下としての地位があります。

 なので現状では、私の許可なくクリフ殿下はミアに何か交渉をできません。

 ですが、ヴィクター達は25年という任期があって満了時点で一旦私から離れます。

 なので、そこでアズパール王国として利益になる事があるかもしれないと踏んでいるのです。

 何かをする為でなく将来のその時に1枚でも良い交渉材料を残して置きたい。

 施政者として当然の行動をクリフ殿下は取っていますが・・・露骨すぎて笑えて来ます。」

武雄は苦笑をする。

「そうなのですか?」

「ええ、これがウィリアムさんやレイラさんならもっと直接的に支援をしてくるでしょうね。

 恩を売るのではなく支援する事で味方だよとアピールしてくるでしょうね。

 そしてその時になったら自分の部下にならないかと言ってくると思います。

 もちろん私が居る前でしてくるでしょうね。」

「何故ですか?」

「領地拡大を考えていないからです。

 なら手駒に良き家臣は欲しいはずです。

 私の前でする事でヴィクター達の価値を上げると共に自分達も見る目がある風を装うでしょうね。

 それにミアも欲しがるかもしれませんね。」

「え?クリフ様は欲しがりませんでしたよ?

 ウィリアム様やレイラ様は欲しがるのですか?」

「ミアは魔物と話せます。

 話す機会があるという事は交渉が可能なのです。

 なので魔物とのイザコザを収める為にミアを必要とするでしょう。

 私のようにね。

 ただ問題は・・・ミアのお腹を満たせるものを用意できるのかですかね?」

「そうですね・・・私は金品には魅力を感じないですね。

 主の料理クラスがあれば行くかも?」

「おや?私に要求を出してきましたね?

 ふふ、良いでしょう。

 エルヴィス領に戻ったらお腹いっぱい新しいお菓子を食べさせましょうかね?」

「新しいお菓子!!主!絶対ですよ!」

ミアが期待の籠った目を武雄に向ける。

「ええ。いくつか考えていますから、試作しましょうね。」

「やりました!

 主、これからもよろしくお願いします!」

ミアは武雄に抱き着き、楽しそうにガッツポーズをするのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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