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第431話 何だか久しぶりの一人部屋1。(マイヤーと工房の人達と就寝前の挨拶。)

武雄達は何事も無く関の隣の町に到着していた。

宿は結構部屋数が空いているようで皆が各々の部屋に泊ることになった。

ちなみにクリフ殿下が発した「タケオ隊の宿泊費用もうちで出すから気にするな。」というありがたい言葉に従っている。

なので、部屋割りは武雄とミア組、ヴィクター親子、マイヤー達3名は各々、各工房で1部屋ずつとなっていた。

コラ、モモ、タマの親子は食事を取った後、町外で休むと言っていたので久しぶりの親子水入らずらしい。

クリフは「私は1人部屋じゃないのか?」と不満を漏らしたが「当たり前でしょう!」と周りが反対し渋々従っていた。

武雄達は各々で夕飯を取る事として皆が自由時間になっていた。


武雄は店先で売っていた出来合いの夕飯(パンと揚げジャガイモ)とブランデーの小ボトルを購入し、ミア用のリンゴやオレンジを買って早々に部屋に引き上げていた。

そして武雄は宿の部屋の窓を開け、通りの喧騒を聞きながらのんびりと書類片手に飲んでいる。

机の上には買ってきた物と一緒にミアがリンゴを頬張っているのだが・・・

「主、あと2切れ焼いてください。」

と、リンゴを食べていたミアが注文をしてくる。

「はいはい、ちょっと待ってくださいね。」

と、武雄は書類を空いている椅子に置き、8等分にされたリンゴの2切れを違う皿に置き砂糖とハチミツをかけてファイアを上手く出しながら炙っていく。

「~♪。リンゴを焼くと食感が変わって美味しさ倍増です♪」

と、ミアは武雄の作業を見ながら出来上がりを待っている。

事の発端は武雄が「簡単な焼きリンゴでも作りましょうか?」と言い出した所にある。

ミア的にはリンゴやオレンジは取れたての新鮮さが美味しさの基準だと思っていたので「焼いたら美味しいのですか?」と訝しがりながら聞き返してきた。

武雄もバターがないので「砂糖やハチミツをかけて焼くだけですからね・・・そこまで美味しいかはわからないなぁ」とあいまいな返事をしたら「失敗したら主が食べるなら良いですよ。」と言われ武雄的にはシロップ漬けを軽く炙る感覚で簡単に作ったら・・・ミアのお口にあったようだ。

王都ではちゃんとした焼きリンゴを作ってあげようと思うのだった。


「主は先ほどから飲みながら何を読んでいるのですか?」

と、リンゴの焼き具合を見ながらミアが聞いてくる。

「ん?あぁ、3工房の主人達が出してきた懐中時計のカトランダ帝国での原価表ですよ。

 まずは王家の人達に売ってみようかと思ってですね。

 いくらで売ろうかと思って思案しています。」

「王家からなのですか?」

「基本的にはエルヴィスさんやそこにいる人達用に作りますけど。

 お金とは領地外から持って来ることに意味がありますからね。

 自分たちの内需だけだと行き詰まる可能性があるので。」

「わかりませんがそういう物なのですね?」

「ええ、そういう物です。」

と、武雄はリンゴを焼きながら頷く。

・・

「ん?・・・この感じはマイヤー様達ですね。

 アーキン様とバート様と一緒に戻って来たようです。

 あ・・・マイヤー様のみが来ます。」

ミアが焼きリンゴを頬張りながら呟く。

「早かったですね。

 あの3人はもう少し飲んでくると思っていましたけど。」

と、部屋の扉がノックされる。

「どうぞ。」

と武雄が返事をするとマイヤーが入って来る。

「キタミザト殿、こちらでしたか。

 外に食べに行かれなかったのですか?」

「ええ、のんびりと酒を楽しんでいますよ。

 マイヤーさん達こそもう少し飲んできても良かったのでは?」

「はは、王都に戻ったら飲んだくれる日を作るでしょうけども移動中は深酒は禁止ですので。」

「そうですか。

 そうだ、マイヤーさん。王都守備隊に懐中時計を売り込みをかけると買うと思いますか?」

「ん?懐中時計ですか?

 ・・・売れますね。全隊員分なら150個程度は必要でしょうか。」

「ふむ・・・いくらなら買ってくれると思いますか?」

「さて・・・ちなみに今はいくらにする気なのですか?」

「最低でも金貨6枚銀貨5枚ですかね。

 あとは実際にエルヴィス伯爵邸のある街に着いて試作してから価格が決まるでしょうね。」

「そうですか・・・ですが個人では買い辛い金額ですね。」

「やはりそう思いますか・・・でも利益を度外視するわけにはいきませんからね。」

武雄は難しい顔をする。

「そうですね。」

「はぁ・・・もう少し練ってみますかね。

 あ、マイヤーさん。今日もお疲れ様でした。

 ゆっくりと寝てください。」

「はい、わかりました。

 では、キタミザト殿、ミア殿、お先に。」

と、マイヤーが退出して行く。


「おや?・・・この感じはスズネ様達ですね。

 工房の方々と戻って来たようです。

 皆さま来ますね。」

ミアがそう呟く。

「・・・次から次へと・・・」

と、部屋の扉がノックされる。

「どうぞ。」

と武雄が返事をすると工房の6人が入って来る。

「キタミザト様、お疲れ様です。」

皆を代表してフリップが挨拶する。

「はい、皆さんもお疲れ様でした。

 初めてのアズパール王国の食事はどうでしたか?」

「そうですね、全体的に種類が豊富でしたね!」

サリタが感想を述べる。

武雄は「これで?」と不思議がる。

「明日も移動ですからね。

 ちゃんと寝てくださいね。」

武雄は声をかける。

「あ、フリップさん、ビセンテさん、シントロンさん。

 渡された原価表ですけどね?」

「「「はい!」」」

3人は緊張した面持ちで答える。

「いや・・・別に怒るつもりもないですし緊張される事はないですけど・・・

 一応、これは1つの工房として考えて良いのですよね?」

「はい!」

「ふむ・・・フリップさんを工房の親方として経営をするのですよね?」

「ええ。」

「そうですか・・・んー・・・」

武雄は軽く悩む。

「えーっと・・・どうしたのですか?」

「いえ、工房設立に際して契約をどうしようかと・・・

 アナタ達は懐中時計をメインに作って貰いますが、小銃と弾丸の製造もします。

 なので、出来れば私の直の工房にした方が良いのかなぁと思って。」

「えーっと・・・それだと自分たちの好きに商品を作るのはマズいので?」

ビセンテが聞いてくる。

「いいえ、アナタ達の発想を元に物を作るのは良いですよ。

 ですが、小銃と弾丸は私の許可制で売ります。

 勝手に売られてしまうと収拾できない可能性がありますからね。

 それにアナタ達の工房はこれから大いに忙しくなりますし・・・私も1枚噛みたいなぁ~っと。」

「キタミザト様は商売人なのですじゃ。」

シントロンがため息をつく。

「ええ、目の前に金のなる工房がいるのですからね。

 私の懐を潤す為に画策はします。

 と言っても小銃と弾丸と懐中時計以外は基本的に関与する気はありませんけどね。

 例えば、工房の売り上げの1割を私に納付する契約を作ったとして問題はないですか?

 そうすれば私のコネを使って商売をしても良いですよ?」

「魅力的ですね。」

ビセンテが唸る。

「売り上げの1割で良いのですか?」

フリップが聞いてくる。

「ええ、1割で良いですよ。

 あ、それと懐中時計の販売価格ですけど、今のままの原価で作れるなら販売価格は金貨6枚銀貨5枚とするつもりです。」

「え・・・私どもで売っていた時は金貨6枚だったのですが・・」

ビセンテが言ってくる。

「はい。私への納付分追加ですね。

 20個を月産するのに必要な人件費を除く原価が金貨52枚、人件費が1か月12名として金貨36枚

 計金貨88枚。1個当たり金貨4枚銀貨4枚が原価です。

 そこに私への報酬と利益を乗せて金貨6枚銀貨5枚としました。

 もちろん向こうの街に着いてから試作して原価割り出しを再度して貰い販売価格を決めますし、運送費は別途計算が必要でしょうけどもね。

 それに利益が上がったら時計職人を養成したり、工作機械を作ったり、新商品を考えたりしないといけませんからね。

 あ、ゆくゆくは他の大きな街に支店を出させることも考えていますからね。」

「・・・もうキタミザト様が経営者で良いのですけど・・・」

フリップが頭を抱える。

「・・・・出資者であり相談役としましょうか。

 まぁおいおいその辺は考えていきましょう。

 さ、アズパール王国で仕事はわんさかありますからね?

 弟子も7、8名くらい取らないといけませんよ?

 ちゃんと育てる方法も考えておいてくださいね。」

武雄は楽しそうに言う。

「わかりました。」

フリップ達は苦笑いをしながら頷く。

「さて、明日も移動ですからね。

 ゆっくりと寝てください。」

「はい、わかりました。

 では、キタミザト様、ミア様、お先に。」

と、皆が退出して行くのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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