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第426話 36日目 アズパール王国側の関に到着。

もうすぐ6時課の鐘が鳴る頃にアズパール王国側の関に到着したのだが・・・

関の20m手前で武雄達一行は停止していた。

「んー・・・?」

武雄は関を見ながら悩む。

アズパール王国側の関が閉じているのだ。

1週間前にこの関を通る時は常時開いていたのだが・・・

「戦時以外は基本的に開いているはずなんですがね?」

マイヤーも隣で首を傾げる。

「ご主人様、突撃しますか?」

ジーナが物騒な事を言う。

「ジーナ、自分達の国に戻るのに突撃はしませんよ。

 ・・・たぶん。」

武雄は確信が持てずに若干言い回しが微妙になる。

と、関の上に旗が2本掲げられる。

「ん?あれは」

マイヤーが呟くと同じタイミングで。

「「開門!」」

と、関が開きフルプレートの騎士団が20名程度出て来て道の両脇に並ぶ。

と、奥から見知った人物が騎乗して出てくる。

「あぁ、ジーナ、後ろに行ってアーキンさん達4名を連れてきてください。」

「わかりました、ご主人様。」

とジーナが向かう。

「下馬した方が外聞は良いですかね?」

「はい、そうですね。

 全員下馬!」

武雄の呟きにマイヤーが頷き皆を下馬させる。

・・

皆が下馬すると見知った人物が近寄ってくる。

武雄とマイヤー達5名は礼をして迎える。

他の皆は「何?何?何が始まるの?」と不安顔だ。

「タケオ、戻ったか。」

クリフが騎乗しながらそう告げる。

「はっ!殿下!

 只今、カトランダ帝国の視察を終え帰国致しました!」

「うむ。

 マイヤー隊長達もご苦労。」

「「「「「はっ!ありがとうございます!殿下!」」」」」

マイヤー達も返事をする。

「うむ。

 後ろの者達が?」

「はっ!腕が確かな職人達です。

 私の下で働いて貰う事が決まっております。」

「そうか。

 皆、頼むぞ。」

皆は武雄の豹変ぶりに驚き。

何も言えずにコクコク頷くのみだった。

「ふふ。

 タケオ、詰所で話そう。

 あと全員の替えの馬を用意している。」

「はっ!ありがとうございます。」

武雄達は礼を解くと武雄がマイヤーに顔を向ける。

「マイヤーさんは一緒に行って入国の手続きをしましょうか。

 あとは関を越えて休憩しておいてください。」

「わかりました。」

アーキンが答える。

「うむ、では行こうか。」

クリフを先頭に武雄とマイヤーが先に関を通るのだった。


------------------------

武雄達が去り、皆も関を越えた所で。

「ちょ・・・ちょっと。

 ブルックさん!さっきの方は誰ですか?」

サリタが聞いてくる。

「えーっと・・・

 キタミザト殿に聞いた方が良いかなぁ~?」

ブルックが答えを言うのを保留する。

と、フルプレートの騎士が近寄って来る。

「馬の交換をいたします。

 もうしばらくは移動はないご様子ですのでご休憩をお願いいたします。」

「はい、ご苦労様。あとよろしく。

 わかっていると思いますけど皆のをですからね?」

「はっ!心得ております。」

ブルックがさっさと自分の馬を騎士に預ける。

王家の騎士団と言えど陛下直属の王都守備隊は別格扱いだ。

そして王都守備隊員が「同行者全ての馬を間違いなく変えてね」と念を押すならば命令は確実に履行される。

「さ、私達はキタミザト殿が戻るのをのんびりと昼寝でもして待ちますか。」

ブルックが木漏れ日が丁度良さそうな場所に陣取ると他のメンバーが集まって来て昼寝を始める。

「あ・・・あの?」

サリタがアーキン達の行動に驚く。

「キタミザト殿に聞いて貰えるかしら?

 私達からは何も言えないから。」

「そうですか・・・

 じゃあ、お爺ちゃん、私達も昼寝だね?」

「そうじゃの。

 わしはお茶でも貰ってくるかの。」

「「ですね。」」

皆が各々しばしの休憩を取るのだった。

エリカ達は若干皆から離れて様子を伺っている。

「殿下かぁ・・・会ったことなかったよね?」

「エリカ様、確かこの地方の総大将は・・・第1皇子でしたか?」

「ええ、質実剛健という噂だったわ。

 政治も街の運営もバランス良くこなして王位を継ぐに相応しい者という高評価の人物ね。

 そんな高位の人物がタケオさんを迎えに来るのね・・・

 一体タケオさんは何者なのかしらね?」

エリカがため息を付く。

「で、エリカ様、タケオ殿からの宿題であるやりたい事は見つかりましたか?」

「まったく。・・・どうしよう・・・勢いでアズパール王国に来たけど、このままだと本当に余生をのんびりと過ごしてしまうわ・・・」

エリカが頭を抱えるのだった。


------------------------

関の詰め所に入ると男性2人と女性1人が立って待っていた。

「アシュトン、戻った。」

「殿下、あまり関の向こうに行かれるのは感心しませんぞ。」

「まぁ、タケオが居るから平気だろうとは思っての行動だがな。」

「クリフ殿下、私を過度に信頼されても困ります。」

武雄が苦笑を返す。

「そうか・・・次は気を付けよう。」

「殿下が『次は』という時の次はないのは承知しておりますぞ。」

アシュトンと呼ばれた男性がため息を付く。

「さて・・・タケオ、

 これがこの関を含めたこの地の領主でアシュトン子爵だ。

 アシュトン。これが噂のタケオだ。」

「タケオ・キタミザトです。アシュトン子爵様。」

「ロイ・アン・アシュトンと申します。

 それと様付けはいりませんな。殿で結構ですぞ。

 キタミザト子爵殿。」

「・・・子爵?」

武雄がクリフに顔を向ける。

「あぁ、タケオは子爵になっている。

 知らなかったか?」

「はい。レイラ殿下からは男爵になったと伺っておりますが。」

「うむ・・・男爵だったのはタケオが王都に到着して6日目くらいまでだな。

 その後の会議で『功績が他の新貴族を上回っているし、王都勤めの貴族よりも貢献している』と武官が言い出してな。

 結果的に『キタミザト卿を子爵にするべき』との声が多数を占めて子爵になった。」

「・・・私は何かしましたかね?・・・いや、いろいろしましたが・・・それでも子爵になる程なのですか?

 貴族にして貰うのは王家の意向、例の給金は王家と貴族会議・・・他には何もないのですけど。」

武雄は首を傾げながら悩む。

「タケオ。

 あの一件で武官内・・・特に警備局がタケオに感謝していた。

 部下の命を救ってくれたと。」

「私は何も言っていませんが?」

「いや、何も言わなかったのが功を奏している。

 『王都の判断に異を唱えない』と言っていたろう?」

「言いましたね。

 ですが、それだけで何で警備局から感謝を?」

「うむ。

 最初は父上が『警備局全員が減給3か月』で終わらせたのだが・・・

 どうもその後に『このような事態に発展したのは対応した警備兵が悪いと思われます。何卒、再考の程を!』と直訴した者がいたらしい。

 で、父上も無下に出来なかったらしくてな『タケオが不服を言って来たら考える』としていて。」

クリフが難しい顔をしながら言ってくる。

「・・・何と言うか・・・」

武雄はため息を付きながら言葉を探す。

「タケオ、言葉を選ばなくて良い。

 今の率直な感想を言ってくれ。」

「その直訴した者は馬鹿じゃないですか?」

「私も同意見だ。」

クリフが腕を組みながら頷く。

「陛下の判決に異を唱えるとは・・・」

「キタミザト殿みたいですね。」

マイヤーがため息を付きながら言ってくる。

「マイヤーさん、いくら私でも陛下の判決に対して不服は言いませんよ。」

武雄がジト目で抗議する。

「そうでしょうか?」

マイヤーが苦笑をする。

「・・・たぶん。

 というより私の場合は事前にわかっているなら事前に言いますし、決まった事なら不服は言いません。

 決まった事に対して思う事があるならそれに沿う形で違う事が出来るか模索します。」

「それは出来る者の感覚だと思うし、皆がそうあって欲しいな。

 なのでタケオは警備兵を救った事になっている。

 まぁ貰える物は貰っておいてくれ。

 後手なのは十分にわかっているし、対応が遅いのもわかるが・・・今はそのぐらいで勘弁してくれ。」

「畏まりました、クリフ殿下。」

武雄が恭しく礼をする。

「で、タケオ、こっちがアシュトンの息子とその娘だ。」

「「「よろしくお願いします。」」」

武雄達は挨拶を交わす。

「さて、アシュトン、あとでまた話そうか。

 馬車で待っていてくれ。」

「クリフ殿下、畏まりました。」

と、アシュトン子爵達は席を立ち詰所を出ていくのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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