第423話 カトランダ帝国側の関に到着。
「はぁ・・・着いた。」
武雄一行はカトランダ帝国側の関に到着した。
「早かったですね。」
「ですね・・・
予定ではどのくらいでの到着でしたか?」
「晩課の鐘辺りだろうとは思っていましたが、今は9時課の鐘が鳴って少し経っていますか。」
マイヤーが思案する。
武雄は午後4時である事を腕時計で確認する。
「まぁ途中、村に寄りませんでしたからね。
どうしますか?
今日はここで泊まりましょうかね?」
「さて・・・どうした物か・・・
とりあえず関で越境の審査を受けましょうか。」
「わかりました。」
武雄とマイヤーは詰め所に向かうのだった。
・・
・
「あれ?アナタは・・・」
武雄は軽く驚く。
対応してくれた兵士が入国時の兵士だった。
「あ、キタミザト殿・・・でしたね?
もうお帰りですか?」
「はい。
用件も済ませました・・・のかな?」
「え?何か問題でも?」
「いえ、私は祖父用の剣や防具を頼みに行ったのですが・・・
廃業されて・・・」
「え?それは・・・あ、東町の再開発ですか。」
「再開発ですか?」
「はい。えーっと・・・2週間ほど前に町の再開発政策が始まるという通達が関にも来ていましたので・・・
まさかキタミザト殿が依頼をしに行った先がそれに当たっているとは・・・」
兵士が複雑な顔をする。
「ええ。
ですが、工房の方々には会えたのですが、行き先がないと言われて。
うちの街にまで来て貰う事にしたのです。」
「・・・なるほど、移住ですか。」
兵士は難しい顔をする。
「すみません、引き抜きみたいになってしまって・・・貴国で問題になるかもしれませんが・・・」
「いえ、廃業されてしまったのですから・・・言葉は悪いですが、うちの施政者から不要と思われてしまったのでしょう・・・
そういった者を拾ってくれているのであれば・・・いえ何でもありません。
原則として職人の越境には1か月間という期間がありますのでそれはお守りください。」
「・・・優しいのですね。」
「・・・私は兵士ですので国の方針を支持する立場です。」
「そうですか。
わかりました。1か月ですね?」
「はい、1か月以内でお願いします。
人数を確認しても良いでしょうか?」
「はい、お願いします。」
兵士と武雄達は皆を確認に行くのだった。
・・
・
「14名ですね?あと妖精と猫・・・ですか?」
兵士が確認をする。
「はい。」
武雄が返事をする。
「わかりました、越境を許可いたします。」
「ありがとうございます。
ちなみに今日はこちらに泊っても?」
「14・・・いやあと後ろに2名ですか・・・申し訳ありませんが、16名をお泊めできる施設はございません。」
「そうですか・・・では、先を急いで関間で一泊しましょうかね。」
「お願いいたします。
入用の物があれば少々ですが、売っていますが?」
「わかりました。
詰め所内に確認に行きます。」
と、武雄とマイヤーはサリタ達を呼び一緒に詰め所に入って行く。
・・
・
「あら?タケオさん達は終わったのね。」
「当然ですね。
私達と一緒に行動はしていますが、別組扱いですからね。」
エリカが遠目に見ながら呟くとカサンドラが答える。
「失礼、越境許可書はありますか?」
先ほど武雄達に対していた兵士がエリカ達に話しかけてくる。
「はいはい、これですね。」
エリカは懐から越境許可を出し、兵士に渡すと兵士が中を読み始める。
「・・・え!?・・・このサインはまさか・・・似ているとは思いましたが・・・ラバル主任ですか?」
兵士はカサンドラを見て質問をしてくる。
「あら?私を知っているのですか?」
「ええ、別班でしたが新人の頃の研修で何度かお顔を。
・・・ラバル主任という事は・・・エリカ殿下ですか!?」
兵士がその場で最敬礼をする。
「あぁ・・・それはしないで貰えます?タケオさんにバレます。
それに殿下は今は亡くなっているはずですよ?」
「殿下が生きていらっしゃったとは・・・
・・・ん?・・・ご自身でそういう言い方をするという事は・・・」
兵士が悩む。
「ええ、父上の裁可は頂いています。
皇位の返上も終わっていますので、今は平民になっています。
また、出国したら入国は出来ないとの言葉も頂いています。」
「殿下・・・」
兵士は悲しそうな顔をする。
「平気よ、私が自ら選んだのです。
誰かに貶められたわけではないのよ?
私は第2の人生をアズパール王国で過ごす事に決めたの。」
「殿下、そこまで思い詰めて・・・」
「父上と弟に伝えて貰える?」
「はっ!」
「父上には『今までお世話になりました。帝国の繁栄を願っています』と。弟には『良き君主になる事を願っています。そして体を大切に』と。」
「必ず奏上いたします。」
兵士は最敬礼をする。
「と、立ってください。
タケオさん達が戻ってきてしまいます。」
「はっ!」
兵士は立つと越境許可書をエリカに戻す。
「これからはアズパール王国の一国民になります。
帝国に二度と戻っては来ないでしょうね。」
「殿下・・・お元気で。」
「争いのない世になる事を、そして民が健やかに暮らせる事を願っています。」
「はっ!」
と、武雄達が詰め所から戻って来る。
と武雄がエリカ達に近寄る。
「エリカさん達は終わりましたか?」
「はい。タケオさん、終わりましたよ。」
「そうですか・・・私達は今日は関間で野宿しますけど。
エリカさん達はどうしますか?」
「ふふ、ここまで来て私達をのけ者に?
付いて行きますよ?」
「わかりました。
それよりもアズパール王国に来たらやりたい事は思いつきましたか?」
「まったく・・・何をしましょうかね。
とりあえず食べて食べて食べまくりますかね?」
「はは、食い倒れも楽しいかもしれませんね。」
武雄はクスクス笑う。
「冗談ですよ?」
エリカがジト目で抗議する。
「わかっていますよ?」
武雄は苦笑を止めない。
「むぅ・・・いつかタケオさんを驚かしてみせます。」
「ええ、その際は存分に驚いて差し上げます。
では、出立しましょうか。」
「ええ、お願いします。」
と、エリカの言葉を聞いて武雄が先頭に戻って行く。
「お勤めご苦労様。」
「殿下、お気をつけて。」
「ええ。」
と、先頭から「では、出立!」とマイヤーの号令がかかるのだった。
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