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第422話 もうすぐ関だ・・・紋章を考えなければ。

お昼を取って今はカトランダ帝国側の関に一行は向かっている。


「タケオさん・・・やりたいことがわかりません。」

エリカは先頭集団に来てグッタリとしていた。

カサンドラはのんびりとエリカの少し後ろに待機している。

「そうですか・・・

 まぁそうなるだろうとは予想はしていましたけどね。」

武雄は普通に返す。

「え!?そう予想していたのですか!?」

エリカが驚愕の表情を武雄に向けてくる。

「はい。

 最低でも1週間は見つからないだろうなぁとは思っていますけど?」

「何で言ってくれないのですか!?」

「言ったら面・・・エリカさんの為にならないでしょう?

 聞いたらすぐに答えが返って来るのは成人前の子供だけに許された特権ですよ。」

「・・・それは・・・そうでしょうけど・・・」

「エリカさんは今まで与えられていた目標や問題を処理する事に慣れているのではないですか?

 今初めて自らがしたい事を探しているのです。

 ゆっくりと探せば良いと思いますよ?」

「タケオさん、優しい口調ですが、言ってることが厳しいです。」

「ふふ、当たり前です。

 大人に対して過度の甘やかしはあまりしませんから。」

「あまりという事はするのですか?」

「はい。私がお世話になっているご一家とかその親類の方々には甘いとは思いますよ?」

「誰ですか?」

「秘密です。」

「むぅ・・・言ってはくれないのですね?」

「ええ、少なくともアズパール王国領に入るまでは。

 それにエリカさん達はまだカトランダ帝国側の人間でしょう?

 ここは私達からすれば敵地です。

 誰が聞いているかもわからないのですから言える事と言えない事があります。」

「私達は信用されていないのですね?」

「それはお互い様でしょう?

 エリカさんだって私に言っていない事があるはずですよ?」

「う・・・まぁそうですけど・・・」

「まぁ、エリカさんが正式にアズパール王国の住民になった時にでも教えてあげますよ。」

「それは向こうの関を越えた時ですか?」

「さて・・・国外退去の越境許可書のみでそう言えるのか・・・

 まぁこっちの事を聞きたいならエリカさんの秘密も教えて貰いたい物ですね。」

「・・・わかりました・・・私達の出自が話せる時が来たらタケオさんの事を聞きに行きます。」

「ええ、それで構いませんよ。

 今はエリカさんは自分のやりたい事を見つけてください。」

「はい。」

エリカとカサンドラはそう言い残し、後ろに下がっていく。

・・

「ふむ・・・マイヤーさん、どう思います?」

「あのぐらいでちょうど良いでしょうが・・・

 キタミザト殿はアズパール王国に入った瞬間から貴族待遇なのですけど・・・わかってしまうのでは?」

「やはりわかってしまいますかね?」

「王都までは何とか隠せるでしょうが・・・流石に爵位の授与式がありますからね。」

マイヤーが「んー・・・」と首を傾げる。

「まぁ・・・別にあの2人にバレても何かが変わる訳ではないでしょうから問題ないでしょう。」

武雄は苦笑しながら自身の失敗を笑い飛ばそうとする。

「そうですね。

 と、そうだ。キタミザト殿、紋章はどうするのですか?」

「紋・・章・・・?」

武雄は首を傾げる。

・・

「あ!紋章!?封蝋用の文様ですね!?

 すっかり忘れていました。」

武雄が「あちゃ」と額に手を当てる。

「何案か出す手はずになっていると伺っていますが・・・」

マイヤーがため息交じりに言う。

「マズいですね。

 んー・・・んー・・・」

武雄は頭を振り絞る。

出てくるものは戦国時代の家紋。

三つ葉葵?六文銭?三つ鱗?四つ菱?桔梗?・・・有名どころしか思い浮かばない・・・

いや逆に組み合わせるか?

丸に二つ引きの間に三つ鱗?丸に亀甲に四つ菱?・・・んー・・・いろんな意味でマズいような気がする。

戦国時代は植物や動物、天体、調度品から取ったのだろうとは思う。

「んー・・・マイヤーさん。

 紋章はどんなのがありますか?」

「王家はドラゴンを基調としていますし、地方貴族は動物ですかね?」

マイヤーが考えながら言ってくる。

「ヴィクターの所はどんな感じなんですか?」

「うちは狼が飛び掛かる様を書いています。」

「うむ・・・」

武雄はそこでさらに思う。

欧州系の車のシンボルに似ているのかな?

という事は日本系の家紋は通る可能性があるのか・・・

何が使えるのか・・・武雄は悩むのだった。


------------------------

幌馬車の1台の荷台にフリップ、シントロン、ビセンテの3工房の店主が集まっていた。

馬車は弟子や孫や息子が操縦している。

「はぁ・・・どうした物か・・・」

「そうだのぉ。」

「・・・」

3人とも昼食時に武雄から宿題が出ていた。

・懐中時計を作る際にかかる人件費以外の素原価を割りだす事

・各部品や組み立てを行う際は何日で何人で作業するかを考える事

・20個を作ることを想定して考える事

武雄は3人からそれぞれ出しても良いし、まとめて出しても可としていた。

「・・・キタミザト様は売り先にいくらか説明したいからさっさと出せと言っていたな。」

「いや・・・そこまで強くは言っていないですが・・・内容はそうですね。」

「ふむ・・・各々が出すのは難しいのではないかの?」

「爺さん、それだと1つの工房として出しているという事だぞ?

 爺さんは自分の工房を作れなくて良いのか?」

「うむ・・・まぁ名残惜しいとは思うがの・・・

 そもそもわしら3工房は違う事をしている。

 一緒にした方がやりやすいとも思うのじゃがなぁ。」

「確かにそうですね・・・うちも私と息子だけですし・・・」

「それを言ったら俺の所は俺とスズネだけなんだが・・・」

「フリップが親方になってうちらを雇わんか?

 もうわしも歳だからな・・・今から弟子を雇っても難しいと思うのじゃ。」

「爺さん、まだ死ぬには早いだろう?

 それにビセンテの所は息子がいる。自分の工房を持てないのは辛いだろう?」

「キタミザト様に拾って貰ってうちらは満足している感があるのは確かなんだよ。

 それに工房を立ち上げても当分は懐中時計の部品製造と組み立てだろう?あまり工房として意味をなしていないと思うんだよな。

 それよりも3工房が一緒になって1つの工房名で出した方が客は来るのではないかとも思う。

 手間も少なくて良さそうだし。」

「んー・・・そういう物か?」

「それに月20個の製造するには向こうでわしらを知らない者を雇わないといけない。

 いくらキタミザト様の口利きを利用してもわしらと最初から打ち解ける者は多くはないじゃろう?」

「ふむ・・・確かにな。

 新規に弟子を雇わないと月産20個は難しいな・・・」

3工房の店主達は考えを巡らせるのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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