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第421話 35日目 カトランダ帝国脱出(移動)だ。

結局、昨日はあのままエリカは武雄に絡まないで「移動先で何がしたいのか?」を自問自答していた。

武雄達はのんびりとお茶をして順番に露天風呂を満喫していた。

一晩経って、昨日の失態を自己反省したエリカが朝一で「昨日は無茶苦茶な事を言ってすみませんでした。」と謝って来ていた。

武雄は「まぁ今まで特権貴族だったのでしょう?特別扱いが普通だったのですからしょうがないですよ。」とエリカを労うと。

「とりあえず、タケオさんの言う通りアズパール王国で何がしたいか考えます。」

と言っていたのだが・・・


「タケオさん、私は何をすれば良いのですか?」

エリカが朝食後から今に至るまで武雄にこの質問を何回もしている。

「何でもして良いのですよ?

 法に触れなければ。」

武雄は何度目かわからない同じ答えをする。

「それよりも他の皆には聞いてきたのですか?」

「はい。フリップ、シントロン、ビセンテ、3工房に聞いてきましたが、皆さんは『まずは懐中時計作りで売り上げを確保する』事が当面の目標で各々がいつかはタケオさんに頼らない経営環境を作ってみせると言っていました。」

「そうですか。

 それを聞いてどう思いましたか?」

「近い目標と数年後を見ていました。

 今やらないといけない事をちゃんとわかっていました。」

「なるほど。

 じゃあ、今度はブルックさんやフォレットさんに聞いてみてください。」

「はい。」

エリカは素直に後ろに下がっていく。

その姿を武雄やマイヤー、ヴィクターが温かく見守る。

「ご主人様、エリカ殿はどうしたのでしょうか。

 何だか覇気がないような・・・随所に見られた高位の口調が鳴りを潜めていて・・・随分と素直なんですけど。」

ジーナが武雄に聞いてくる。

「少なくともエリカさんは馬鹿ではないのでしょうね。

 自らで探そうとしていますし。」

「ですが、かなり戸惑っているみたいですね。」

ヴィクターが微笑みながら言ってくる。

「それはしょうがないでしょう。」

マイヤーも苦笑しながら言ってくる。

「お父さまもマイヤー殿もわかるのですか?」

ジーナが聞いてくる。

「ジーナ。

 アナタの今の目標は私の下で25年間働き自由を得る・・・ですね?」

「はい!頑張ります!」

ジーナが元気に返事をする。

「では・・・例えばです。

 ジーナ、今から奴隷契約を破棄します。

 ただし、アズパール王国から出ては行けませんが自由にして構いません・・・と言ったらどうします?」

「え?」

ジーナが悩む。

「んー・・・わかりません。

 住んでいた街にも帰れないのですか?」

「はい。越境は許可しません。」

「んー・・・何をすれば・・・

 あ、お父さまは?」

「ジーナの代わりに50年働いて貰いましょうかね。」

「私だけですか?」

「ええ。」

「・・・では、今のままで良いです。私だけの自由はいりません。」

「ふふ。ヴィクター、良い娘さんをお持ちですね。」

「主、ありがとうございます。」

ヴィクターが礼をする

「さて、ジーナ、エリカさんは今言ったような状態なのです。」

「なるほど。

 でも自分から国を出ていくのですよね?」

「そうらしいですね。」

「ならやりたいことがないのは不自然なのではないですか?」

ジーナが「はて?」と首を傾げる。

「普通ならやりたいことがあるから移動するのですが、エリカさんの場合はカトランダ帝国から出ることが目的なのでしょうね。」

「??・・・言葉の意味はわかりますが・・・ご主人様、なぜなのかがわからないのですが・・・」

ジーナが首を傾げながら聞いてくる。

「それはあの2人にしかわかりませんね。

 でも国外に移住する事を選んでしまった後なのです。

 それも父親に宣言までして・・・もう前言撤回は出来ないのではないでしょうか。

 それにたぶんあの調子だと今まで目標は与えられていたのではないでしょうかね?

 それを自ら考えないといけないという新しい事を始めたんです。

 まぁ1週間くらいは悩むのではないですか?

 もしくは見つけられないかもしれないですね。」

武雄はジーナに優しく自らの考えを言う。

「ん~・・・ご主人様、そこまでわかっているのに何も言ってあげないのですか?」

「ええ、今は言うつもりはないですね。

 エリカさん達はアズパール王国に移住しにきますが、私の街に来るとは言ってはいません。

 もしかしたら私が居る街に来るかもしれませんが・・・他の街に定住するかもしれませんからね?

 商売敵になるかもしれないのにいろんな助言はできませんよ。」

武雄はクスクス笑う。

「ん~・・・ご主人様は基本優しいのに時に非情です。」

ジーナが首を傾げて言ってくる。

「ふふ、ヴィクターはどう思いますか?

 元領主ですが、その経験からの助言としてはどうでしょうか?」

「そうですね・・・

 ジーナが考えている事もわかります。

 知り合ったのですからもっと助言をしても良いのかもしれませんが、商売敵になるなら詳しくは教えないという主の考えも正しいかと。

 私が領主だった時の感覚で言えば・・・ああいった者は自分の街には置きたくないですね。

 厄介事を招くかもしれません。」

「そうなのですか?お父さま。」

「あぁ。エリカ殿はたぶん上級家庭の出身・・・もしくは施政者側で生活をされていたのだろうとは昨日からの行動や発言でわかる。

 なのでエリカ殿は知識もあるし、物の良し悪しもわかる。

 だが世の中がわかっていない感が少しあるのもまた事実。

 例えば・・・領主側がワザと対応していない・・・例えば小さな犯罪や酒場での喧嘩等を見た際に自らの正義を振りかざす可能性がある。」

「???・・・お父さま、それは民を守る為の行動として正しいのではないですか?」

「あぁ、生き物として正しい行動だ。

 だが、領主の立場からすればとっても面倒だ。」

「ジーナ殿、そういう時は街の兵士を呼んでくるのが正しい行いです。

 自分の正義を基準に介入をしてはいけないのです。」

ヴィクターが面倒そうにため息をつき、マイヤーが苦笑しながら諭す。

「それでは時間がかかってしまいます。やはりその場で介入すべきなのでは?」

ジーナが不思議そうに言ってくる。

「ふむ、箱入り娘が同行者に2名居ましたか。」

武雄が楽しそうに言う。

「ジーナ殿、施政者側・・・対応する兵士側として見ると自らの正義で喧嘩等に介入した者は喧嘩をしている当事者達+参加者でしかないのです。

 なので、全員を連行します。」

「ん?・・・ん~・・・・

 そう言われればそうですね。

 でも施政者と知り合いとわかれば刑は免除されるのですか?」

「ジーナ、そこが面倒なんだよ。

 取り調べの最中に領主や施政者側の高位の者の名前を出されたら現場の兵士が困るだろう?

 そして法を守る兵士が領主の顔を立てる為に刑を緩めてしまう可能性がある。

 そうすると街の住民から『あの者は特別待遇を受けている』と非難が出始め。治安が悪化する可能性がある。

 なので、ああいった者を街に置くと面倒になる可能性があるのだよ。」

「なるほど・・・」

ヴィクターの説明にジーナが頷く。

「ちなみにエリカさん達がするのは問題ですが、ジーナがする分には問題はないですからね?」

武雄が優しく言う。

「え?どうしてですか?ご主人様。」

「私の部下だからです。

 もしジーナが間違った事をしたなら私が怒られるだけですよ。」

「それではご主人様に迷惑が掛かってしまいます。」

「ええ。ですが、介入したという事はジーナが弱者を守る為、もしくは片方の言い分が難癖だったと感じたらでしょう?

 場を治める為には介入が必要だとジーナが判断するのなら私が責任を取りますから介入してきなさい。

 介入する際はちゃんと両者の意見や被害者と加害者の言い分も聞いてくるのですよ?」

「良いのですか?」

「良いですよ。

 店先の物を壊す前に、人が怪我をする前に言い争い段階で場を治めるのは大切です。

 で、やりすぎたりジーナが誰かを怪我させた場合は私が怒られるだけです。

 なので、万が一乱闘とかになった場合は相手に怪我をさせないで取り押さえる技術をジーナは学ばないといけません。

 まずはそこからです。」

「ご主人様、わかりました。」

武雄の言葉にジーナが頷くのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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