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第420話 34日目 さて。風呂に入って寝ますか。エリカの癇癪。

武雄と鈴音が皆の所に戻って来る。

「戻りました。」

武雄と鈴音はかまどの周りに座る。

「キタミザト殿、おかえりなさい。

 どうでしたか?」

マイヤーが聞いてくる。

他の皆も気になるのか何も言わずに聞いている。

「ふむ・・・まぁお互いに言いたいことは言いましたね。

 彼女の事もだいたいわかりました。」

「どうしますか?」

「さて・・・どうしましょうかね。

 私と同郷なんですよね。」

武雄は火を見ながら呟く。

その言葉にマイヤーとフリップが驚愕の表情を一瞬する。

他の者は「へぇ~」と気にもしない。

「そ・・・そうですか・・・」

「キタミザト様もスズネと同じなのですか・・・」

「まぁ、身の振り方はアズパール王国に戻ってから考えれば良いでしょうね。

 今は無事に全員が国境を越える事が重要です。

 ・・・と、そうだ。

 フリップさん、シントロンさん、ビセンテさん。」

「「「はい。」」」

「国を変える際に氏名を変える必要があります。

 何か考えておいてください。

 マイヤーさん、それで問題ないのですよね?」

「ええ。かなりグレーなやり方ですけど。」

マイヤーが苦笑を返してくる。

「そんなわけで考えておいてください。

 まぁ先祖代々の名前を捨てるのは寂しいとは思いますけど。

 そうしないとアナタ達を私の住む街まで連れて行けませんのでね。」

武雄が苦笑する。

「「「わかりました。」」」

3人が返事をする。

と、「あぁ、良い湯あみだったわ。」とエリカを先頭に皆が戻って来る。

「・・・エリカさん、結局浸かったのですか?」

武雄はため息を付きながら言う。

「ええ、カサンドラが私をのけ者にして浸かるんですもの。

 私も浸かりました。」

「そうですか。皆もおかえり。」

「「「「はい。」」」」

「と、そうだ。エリカさん、カサンドラさん。

 ステノ工房のフリップさんと鈴音さんです。2人も私の街に来て起業します。

 ですので一緒に旅をしますからよろしく。」

「あ、そうなの?

 私はエリカ・キロスです。

 こっちはカサンドラ・ラバルです。

 私達の事は名前で結構ですよ。」

とエリカがフリップと鈴音に言う。

「エリカでん」

「エリカで結構ですよ。

 私もカサンドラもアズパール王国に移住しますからね。」

フリップが殿下と呼ぼうとするとエリカが止める。

「移住ですか?

 その・・・平気なのですか?」

「ええ、実家も了承してくれています。

 手切れ金も大量にくれているんですよ。」

エリカが楽しそうに言う。

「ん?エリカさんはお金持ちなのですか?」

武雄が聞く。

「ええ、私はこう見えてもお金持ちなんですよ?

 他の国に移住すると実家に言ったら『じゃあ、戻って来るな』と多額の手切れ金をくれたのです。」

「そうですか・・・犯罪に巻き込まれないようにしてくださいね?」

「あれ?タケオさんが守ってはくれないのですか?」

エリカは苦笑しながら聞いてくる。

「ずっとエリカさんと行動を共には出来ないでしょう。

 犯罪への対策は基本的に自己責任ですよ。

 それに何か犯罪が起きれば私でなくて治安を管轄している兵士が動くでしょうからね。」

「それはそうですけど・・・タケオさん、私に対して男っ振りを見せていませんよ?」

エリカは不満そうに言う。

「そうですか?

 まぁ私は武勇やら根性とは縁遠いですからね。

 それに捜査が得意な者が集まっている兵士達に任せた方が物事は進みやすいでしょう。

 素人が下手に手を出すと混乱するだけでしょうしね。」

武雄はクスクス笑う。

「それはそうですが・・・

 財産があるとわかるとよからぬ事を考えて言い寄ってくる者がいると思うのですけど?」

「でしょうね。

 なので、注意してくださいね。」

「むぅ・・・タケオさんはお金では動かないのですか?」

「動きますよ?

 ですが、お給金は十分に頂いています。

 あとは街の人達が笑顔で過ごしてくれたら私は満足ですから。」

「欲がないのですか?」

「いえいえ、欲だらけですね。

 私の場合、やりたいことが多過ぎて・・・」

「なら実施に向けて資金が必要ですよね?」

「ですね。」

「ここにお金持ちが居ますけど?」

エリカが自分を指す。

「・・・まぁ、大丈夫ですよ。」

武雄は火を見ながら答える。

「あぁ!なんで私を頼らないんです!?」

「ん?なぜ頼らないといけないのですか?」

エリカが「ウキーッ」と怒るが武雄は気にしない。

「むぅ・・・私だけタケオさんが意図的に避けているので。」

「別に避けてるつもりはありませんが・・・」

「いや、絶対に避けています!」

エリカがジト目で抗議してくる。

「はぁ・・・

 あ、ジーナ、鈴音、ミア、タマ。

 お風呂に入って来なさい。」

「「「はい。」」」

「ニャ。」

4人が湯あみに向かう。

・・

「で?エリカさん、何が言いたいのですか?」

武雄が「わからないよ?」という顔をエリカに向ける。

「今までこんなに言い寄ってこない男性は初めてです!」

「エリカさんはいつも男性に言い寄られて居たのですか?」

「ええ!

 自分で言うのも何ですが見た目もそこら辺よりかは上ですし、財力もあります。

 私の周りには誰かしら家の財力や権力を欲している人達ばかりでした!

 なのにタケオさんは私に何も要求してこない!どういう事ですか!?」

武雄からすればエリカが訳も分からない事で憤慨している。

「確かにエリカさんはお綺麗ですよ。」

「なぜ言い寄ってこないのですか?」

「私は最近婚約したばかりでしてね。

 結婚を前にして他の女性を口説くわけには・・・・婚約者に殺されちゃいますよ。」

武雄は右手の指輪を見せて苦笑する。

マイヤー達5名は「その時は王都壊滅も一緒ですか?」と心の中で思う。

「むぅ・・・なら私のお金を頼らないのは?」

「別にエリカさんを頼らなくても頼る先はいくつか知っていますし。」

武雄は腕を組んで言ってくる。

マイヤー達5名は「借り先は王家と王都ですか?」と心の中で思う。

「むぅ・・・こんなにこっちからアピールしても何もしてこないのが信じられません!」

エリカは怒りが収まらないのかさっきから「むぅむぅ」言っている。

武雄はそんなエリカを苦笑しながら見ている。

武雄的には「そりゃ皇族だったなら言い寄って来るのが当たり前だよね?」と思うと同時に「皇族が手を貸すと言えば皆に拒否権はなかったのだろうなぁ。結果自分が何か言い出せば皆が動いてくれるという超が付くほど甘い関係の中に居たのだろう」とも、さらには「常に何かを請われるのが当たり前だったのがいきなり私みたいに『別に協力は必要ない』と言われると自己の価値がなくなってしまって戸惑っているのかな?」と思うのだった。

「・・・会ってまだ2日しか経っていないのにお金を借りる訳ないでしょう?

 それにそのお金はエリカさんが国を変える為にご実家が用意した支度金なのでしょう?

 ならエリカさんがしたいことに使うのが本来の使い方です。

 エリカさんはやりたい事がないのですか?」

「え?・・・私?」

エリカは急に自分の事に振られて困る。

「エリカさん、私に貸しを作りたいのでしょうが、私は婚約者もいるし、やりたいことについても金銭の目途はそれなりについています。

 ですからエリカさんに私から何か助力を頼むことはしませんよ。

 それよりもエリカさんがアズパール王国に来て何がしたいか考えた方が良いですよ?」

武雄は微笑しながらエリカを諭す。

「別に貸しを作りたい訳では・・・

 ・・・私のやりたい事・・・やりたい事・・・んー・・・」

エリカは武雄の質問に悩み始める。

カサンドラはそんなエリカを見ながら「第2の人生も大変そうだなぁ」と一人思うのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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