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第417話 フリップと鈴音の思い出。

私は滝野タキノ 鈴音スズネ

この世界に来たのは約5年前。


高校の部活の帰りに電車でふと寝たら・・・街角の路地に立っていた。

通学のカバンは寝る前の物をちゃんと持っている。

・・・不思議に思う。「なぜここに?なぜ私が?」

とりあえずどうすれば良いのか・・・交番を探そうと路地から出て大通りに出るとそこは全く日本を感じない街並みだった。

テレビ番組で見るようなヨーロッパ系の街並み。

私は唖然とした。

まず初めに思った事は言葉は通じるのか?どうすれば日本に帰れるのか・・・

出てきた路地にまた引き返し壁に背を付けたままズルズルと座り込んでしまう。

私が何かしたのだろうか?


一つずつ自分を確認し始めようと決意する。

私の父は普通の会社員だった。

中学生になったばかりの弟が最近銃に興味を持ち「姉ちゃん、次の祝日に自衛隊の基地祭に連れてって!」とせがまれ弟の将来が少し心配だが弟に頼まれると嫌とは言えない自分がそこには居た。

弟を連れて行くといろいろ質問をされるだろうと姉の威厳の為に少し勉強することに。とりあえず地域の図書館に行って調べるが・・・弾丸?薬莢?よくわからない。

「んー・・・わからないなぁ・・・」まったくと言って良いほど興味がわかない。

それよりも今はちょっと古いが幕末の漫画にハマっていた。

「こっちの方が面白いよね。」と調べる事を放棄してしまう。

ついつい読み込んでしまい、今日はさっさと帰ることにした。

で、次の日に学校に行って部活をして帰宅途中にここに居る。

・・・んー・・・思い返しても何もここに移動させるられる前兆はなかった。

次に自分の持ち物を見るが・・・財布、手帳、携帯、教科書と筆記具等々、部活で借りているヴァイオリン。

うん、帰る時に確認した通りだ。

ちなみに携帯は・・・通じないか・・・とりあえず電源を切っておこうと思う。

と、ぽつぽつと雨が降り出してきた。

「あぁ・・・マズいなぁ。」

鈴音は空を見ながら身の振り方を考えるのだった。


------------------------

俺の名はベイカー・フリップ。

カトランダ帝国の東町で200年続くステノ工房の現主人をしている。

弟子たちも10人を超えその日も納品を済ませてのんびりと帰宅途中だった。


「はぁ・・・とりあえず今月の納品は全て終わったな。」

今月の仕事も終わり気分も少しは晴れながら歩いていると空模様が怪しくなってくる。

「まぁ・・・大丈夫だろう。」

馴染みの店先をめぐりながらのんびりと歩いて行く。

・・

「ちくしょう・・・どしゃ降りか!」

ついついビセンテ工房で話過ぎてしまった。

工房までの道を小走りに行くといつもは気にもならない路地が気になる。

「なぜ?」

無視をしようと思うがどうしても気になってしょうがない。

俺はその路地に向かう事にする。

そこにはどしゃ降りの中、スカートが短い幼さが残っている女の子が荷物を抱えてガタガタ震えて座っていた。

「お嬢ちゃん?どうした?早く家に帰りな。」

俺はいつもは他人に干渉はしないが何故かこの時は声をかけてしまう。

女の子は俺の声に驚愕の表情を向ける。

「・・・あの・・・ここはどこなのでしょう?」

女の子は恐る恐る聞いてくる。

俺はこの子は何を言っているのかわからなかった?

ここはカトランダ帝国だ。この国で生まれた者は町の役場に登録が義務付けられている。

町や街に異動するする際には登録を移動させないといけないのは10歳程度の子供でも知っている事だ。

「・・・訳ありか?」

「・・・何が訳ありかがわからないんです。

 私も良くわからなくて・・・すみません、見ず知らずの方にこんなことを言って・・・」

女の子が頭を下げ謝って来る。

「ふむ・・・とりあえずうちの工房に来い。

 雨も降ってきた。そこで話を聞こう。

 なぁに、なにか問題があれば役所に連れて行ってやる。」

「ありがとうございます。」

女の子は思いっきり頭を下げ感謝を述べる。

まったく捨てられた子犬のような顔をこちらに向けてくるなよ。

俺はなぜかわからないが「この女の子は突き放してはいけない」という考えが頭の中をちらつくのだった。


------------------------

鈴音はこの世界に来た時の出来事や今までの事を涙ながらに語っていた。

目の前にいる武雄は「なるほど。」と頷いたり「それで?」と相づちを入れてくれていたりして話しやすかった。

鈴音も何故かはわからないが今まで思っていたことを思いっきり話していた。


「・・・なので、私のせいでうちの工房は東町を立ち退いたんです。

 それに工房の皆も行く先々で・・・独立させていって・・・

 ステノ工房は私のせいで潰れてしまったんです。」

「なるほどね。

 で、現在に至ると。」

「はい。」

鈴音は目を腫らしながら答える。

「鈴音はどうしたい思っていますか?」

「どう?・・・とは?」

「今までの事はわかりました。

 いろいろ苦しかったでしょう?大変だったのでしょう?

 同情はしてあげます。でも・・・それだけです。

 鈴音は今後どうしたいですか?」

「どうしたい・・・親方が安心して物作りができる環境を用意したいです。

 武雄さん、何卒、私達にチャンスをくれないでしょうか?」

鈴音は武雄にお願いをするのだった。


ちなみに武雄は鈴音の事を「鈴音」、鈴音は武雄の事を「武雄さん」と呼ぶことで決まった

武雄は最初「滝野さん」と言ったが鈴音が「武雄さんの方が年上なんですから名前で呼んでください」と言ったので「鈴音さん」と呼んだら「呼び捨てで構わない」と言われ「鈴音」と言ってるのだが・・・この子は男性から呼び捨てでも構わないのか・・・そして初対面の男性の名を「さん」を付けで呼ぶ・・・

武雄は「これがジェネレーションギャップなの?」と軽く悩むのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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