第3592話 研究室での雑談。(ノットよ、試練の時だね。)
研究所の2階 研究室。
「うん?ステンレス?」
鈴音が首を傾げる。
「?・・スズネさん、何かありましたか?」
トレーシーが聞きなれない言葉に反応して鈴音に声をかける。
「いえ、今、テトちゃんから武雄さんがステンレスの・・・新鋼材の納入の報告があったので。」
鈴音が言う。
「新素材?」
ノットも顔を向ける。
「ええ、ステンレスという板材です。
えーっと・・・普通の鉄よりも水に強い鉄です。
ですけど、硬くて、一定以上の力を加えると割れるんです。
バリっと縦線が入る・・そうです。」
鈴音がテトの力を借りて、大まかなステンレスの特性を言う。
「ふむ・・・硬いが強い力には弱いという事か。
だが、水に強いというのは良いな。」
ノットが言う。
「あ、銭湯にも使えそうですけど・・・ずっと水に浸かっていると流石にステンレスでも錆びたり腐ったりしますよ?
私としては薄めの陶器を並べるタイル貼りが一番だと思いますよ。」
「ううむ・・・金属なら叩けば曲がるのだろう?
そちらの方が細かい陶器を作るより安く上がると思うんだが・・・」
「叩くと割れるか、跳ね返されるだけだと思いますけど?」
「・・・そんな金属なのか?」
「そう思っています。
たぶん、武雄さんに言ってもそう言うと思いますよ?」
鈴音が言う。
「うぅむ・・2人が言うのならそうなのか・・・
だが!やってみない事にはわからないな!
キタミザト様に言って、板材を貰ってこよう!」
ノットが言う。
「まぁ・・試してみると良いかもしれませんね。
テトちゃん、武雄さんに許可を・・・え?研究室に納入なの?」
「うちに来るのか!
取りに行こう!」
ノットが立ち上がる。
「ノットさん!気持ちが逸っています!
えーっと・・・2m×1m×1.5?で18枚頼んだ・・との事ですね。
鉄って1m3で7850kgですよね。
簡単に考えるとして、鉄と同じとしても・・・430kgはありますよ?
もしかしたら似ている性能だけでとなると、もう少し重いかも。」
鈴音が考えながら言う。
「むむむ・・・さすがに430kgは重いな。
なら、1枚だけ・・・」
「受け取りに行って、1枚だけ持って帰ってきてどうするんですか。
行くなら全数持って来てください。」
トレーシーが呆れながら言う。
「エルヴィス家の事なので、明日にでも納入されると思いますよ?」
鈴音が言う。
「新素材が・・・」
ノットがガックリとする。
「明日か明後日にでも来ますよ。
で、ついでなので、今の進捗を聞きましょうか。
スズネさんは?」
「はい、駆動部は修正した物をサテラ製作所で製作中です。
今度の目標は6時間稼働です。
室長、試験の実施をお願いします。」
「その日は朝から晩まで訓練場だね。
わかりました、出来上がってきたら、強制供給経路遮断システムを入れてくださいね。」
「了解しました。
同時に作っている変速機については、以前、説明した通り、試作品は出来上がっています。
次の試験の駆動部に組み込めるようにサテラ製作所に依頼中です。」
「わかりました。
試験等の実施日は試験小隊と打ち合わせの上、決めてください。」
「はい。」
鈴音が頷く。
「次にノットさんの銭湯ですが・・・試験やります?」
トレーシーがノットに聞く。
「うぅむ・・・確かにいつまでも図面ばかり書いていても実現しない。
そろそろ試験をしないといけないだろうが・・・」
ノットが考えながら言う。
「トレーシーさん、難しいのですか?」
「難しいですね。
所長の考え方だと大規模になりすぎるのです。
なので、もう少し小さく出来るようにノットさんに指示をしているのですが・・・」
「うーん・・・大丈夫だと思うんだがなぁ・・・」
ノットが唸りながら考えている。
「・・・宝石を使って、温めるのですよね?
で、循環式と。」
「うむ・・・そうだ。
水を温め続ける・・・これ自体は簡単なんだ。
試験は一般家庭にある湯浴み場に入るサイズで行おうと思っているんだが、その大きさで作れるのか・・・」
「浴槽の横に取り付ければ良いのでは?
底に近い所に穴を開けて、浴槽内と加熱部を連結し、水が浸っている間は加熱し続けるとか。」
鈴音が言う。
「それも考えているし、事実、スズネが今言ったような事を図面におこしている。
まぁ、加熱部が大きいのだがな!」
ノットが言う。
「ふむ・・・出来そうですね。
トレーシーさん、武雄さんに言って試験をしてみましょう。」
「・・・そうですね。
いつまでも図面だけでは先に進めないですからね。
ノットさん、所長と総監に説明用の資料を作ってください。」
「・・・おぅ。」
ノットがさっきの勢いが嘘のように暗い表情で返事をする。
「大丈夫ですよ。
武雄さんなら改善点があるなら言ってくれますって。」
鈴音が言うのだった。
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