第3587話 王都にビエラが来たよ。(スミス、初の迎えに行く。)
寄宿舎のスミスの部屋。
「うん、ここは、こうやって解くんですよ。」
「あ、なるほど。」
スミスがヴィートの勉強を見ていた。
「うん?・・・スミス、ビエラが来ているぞ。」
チビマリが窓辺で外を見ながら言う。
「うん?ビエラが?
・・・ヴィート、出かける用意を。
ビエラを迎えに行きます。」
「はい!
すぐに用意します!」
ヴィートが立ち上がり自室に走って戻る。
「マリ、僕達も行きますよ。」
スミスがバッグを肩にかけチビマリに言う。
「うむ、いつでもいいぞ。
ジーナが居なくなって、スミスがこの役割をするとはな。
城門まで走るという鍛錬になるな。」
「今思えば、ジーナはこの人込みをどうやって避けて城門まで行っていたんだろうね?」
「屋根の上じゃないか?
そこなら邪魔はない。」
「・・・それが本当だとしても僕は出来ないね。
色々と問題になりそうだし、それに屋根の上は危ないよ。
ジーナくらい運動神経が良いなら行けるだろうけど、人並みの僕ではね・・・」
「そうだな。
上手く避ける訓練になるだろうな。
常に人々の予測をしながら走るのだ。」
「とっても高度な事を言われている気がするよ。」
「ふむ・・・走りながらというのが高度だろう。
だが、歩いている時もすれ違う人、横切る人、前を行く人等々を無意識に見ている。
そこを意識して見ると、次にどこに隙間が空くかわかるというものだな。」
「ふむ・・・遠い道のりのように感じるよ。」
「毎日していれば、おのずと身に着く物だろう。
人混みもスイスイと進めるだろうな。」
「はぁ・・・そうなるように努力するよ。」
スミスがため息をつく。
「スミス様、お待たせしました!」
ヴィートがやってくる。
「うん、行こうか。」
スミス達が部屋を出るのだった。
・・
・
城の城門横の兵士詰め所。
「失礼します!」
スミスとヴィートが入ってくる。
「あれ?スミスだ。」
ビエラが椅子に座って、お茶を飲みながら驚いている。
「僕ですよ。
ジーナは、実家に戻ったでしょう?」
「うん、そう。
ヴィートが来ると思ったよ。」
ビエラが言う。
「はは、ヴィート1人だけでは、まだ出来ないかな?」
「そっかぁ、まぁ、そのうち1人でやるかな?」
「うん、そうですね。
いつかはしなくてはならないですね。
で、王都には何しに?」
「アリスとエリカからレイラに手紙。」
ビエラが言う。
「マリ、エイミー殿下のアル殿に連絡。
今日は王立学院後に王城でエイミーとアンで話し合っているはずです。
第3皇子一家に確認出来る位置にいるかの確認。
まぁ、このまま王城に向かいますから、訪問はします。」
「ふむ・・・エイミーたちも第3皇子一家の執務室に向かうそうだ。」
チビマリが言う。
「わかりました。
ビエラ、行きましょう。」
「はい!ありがと!」
ビエラが席を立ち、コップを渡してスミスの下に行く。
「皆さま、ご迷惑をおかけしておりますが、今後ともよろしくお願いします。」
スミスが軽く皆に頭を下げる。
「いえいえ、大人しく待ってくれていました。
では、ビエラ殿、また。」
「はーい、またねー。」
スミスとビエラ、ヴィートが兵士詰め所を出るのだった。
・・
・
王城への道すがら。
「スミスはジーナみたいに屋根で行かないんだね。」
ビエラが言う。
「うん?ジーナは屋根の上を歩いていたのかな?」
「走っていたよ?
私抱えられてたもん。」
「・・・うん、マリの予想が大当たりですね。
僕は不得手なので、屋根の上を走らないですよ。
なので、僕の時は道を歩いて王城に行きましょう。」
「うん、わかった。
ヴィートはどうするの?」
「え?私ですか?・・・あー・・・道で。」
ヴィートが何とも言えない顔をさせてから答える。
「そっか。
急ぎでなければ道で良いものね。」
「うーん・・・人によるかなぁ?」
ビエラの言葉にスミスが苦笑しながら言う。
「で、アリスお姉様とエリカ殿からの手紙を持ってきたの?」
「うん、そう。
エリカ、子供出来たって。
仕事どうしよー?って悩んでるの。
その相談。」
ビエラが言う。
「・・・うん、ビエラは僕が抱っこするので、ヴィート、行くよ?」
「いえ、スミス様、ビエラ殿は私が抱っこします。
お気になさらずに王城まで走ってください。
こう見えても足はそれなりに速いのでついていけるでしょう。」
ヴィートが言う。
「うん、わかった。
・・・そうか、こう急かされてジーナは屋根を使ったんだね。」
スミスが言う。
「スミスもしたら?」
ビエラが言ってくる。
「・・・うん、したくなってますが・・・いや、道で行きましょう。
変な事するよりも確実な方で行った方が間違いがないでしょうからね。」
「よいっしょっと。
スミス様、大丈夫です。」
ヴィートがビエラを抱っこする。
「よし、行こうか。」
スミス達が王城に走るのだった。
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