第3579話 ブリアーニ王国に行っていた商隊が戻ってきます。(ジーナはローチ工房の売り上げが気になります。)
研究所の3階 所長室。
ヴィクターとマイヤーと打ち合わせを終えた武雄が1人書類処理をしていた。
「・・・決裁文書が溜まっていましたか・・・
うん、これも問題ないっと。」
武雄が書類にサインをして、書類を横に積み、新たな書類を逆側に積まれた山から取り出す。
「失礼します。
ブリアーニ王国に輸送していた商隊から先ぶれがあり、15時くらいに帰還するとのことです。
ヴィクター様が先にエルヴィス家の文官方と最終打ち合わせに出かけるとの事です。
キタミザト様はジーナ様とアスセナ様と一緒に14時半頃、経済局に来ていただきたいとの事です。」
マリスが所長室の扉の所から話す。
「わかりました。
ジーナとアスセナさんが戻ったら一緒に行きましょう。
まぁ、ジーナの挨拶も午前中に終わるでしょうからね。
マリスさん、ありがとうございます。」
「はい、失礼します。」
マリスが所長室を退出する。
「・・・ブリアーニ王国から帰還という事はヴィクターとジーナの物が届くのか。
うーん、ジーナには言っていないのですけど、連れて行って良いのでしょうかね。
まぁ、ダニエラさんからのお金で買ったような物ですから少なくともヴィクターとジーナに渡して、あとは本人がいらないなら処分して貰えれば良いか。」
武雄が考えながら言う。
「・・・外は寒いのかな・・・倉庫に保管でしょうけど、倉庫も寒そうですよね。
確かキタミザト家として何着かあった気がします。
マリスさんにダウンコート余ってないか聞いてみますか。」
武雄が席を立つのだった。
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ジーナはローチ工房に来ていた。
「これがコンテナ搭載馬車、こっちがベアリング搭載幌馬車。」
ジーナが組み立ての様子を見ている。
「コンテナ搭載馬車は王家が、ベアリング搭載荷馬車はエルヴィス家の注文になります。」
アスセナが言う。
「・・・その両方を兼ね備えているのが、キタミザト家とエルヴィス家の特殊コンテナ搭載馬車ですね。」
ジーナが言う。
「はい、コンテナ搭載馬車はベアリング機構が入っておりません。
なので、2頭立ての馬車になります。
対して、ベアリング搭載幌馬車は幌がラルフ殿の仕立て屋にて作成したSL-05液を塗布した防刃布で作成されており、強靭性が増していると聞いております。」
「SL-05液ですか・・・鉄と同等の硬さでしたよね?」
「はい、防刃布はSL-05 液を染み込ませた布に熱を加え、固めた状態で鉄と同強度をもった物になります。
比較的に軽く、今後とも衣服や他の部材への用途は広い物と考えています。」
アスセナが言う。
「そうですか・・・ステノ技研で私用にSL-05液を染み込ませた木刀・・・木剣を作って貰いました。」
「木なのに鉄の強度があるとは・・・お相手が可哀そうですね。」
ジーナの言葉にアスセナが言う。
「基本的に非殺傷用です。」
「鉄で殴っているような物ですから非殺傷というのは疑問が残りますね。」
「御前仕合では死者は出ていません。」
「・・・お相手も猛者だったからなのでは?」
「そうかもしれません。
まぁ、相手を見て戦わないといけないという事ですね。
一般の方には小太刀や木刀は禁止して、伸縮式警棒で対応します。」
ジーナが言う。
「それでも・・・いえ、そうしましょう。
相手が生きていれば、何とかなりますし。」
アスセナが言う。
「で、あそこにあるのが試作中の輸送船ですか。」
ジーナが目線を送る。
「はい、キタミザト様が戻ってからの試験との事で、今は試験準備中ですね。
これが終わればキタミザト様に同席頂いて、最終試験に臨むと思われます。」
アスセナが言う。
「上手く行けば良いのですが・・・
研究室のスズネ様の研究次第で、この次の段階に進むのでしょうが、すぐの実用段階にはないとの事なので、しばらくは人工湖で船の試験をしながらやっていくのでしょうね。」
ジーナが言う。
「まぁ、浮くのは確認出来ているようなのですが、人工湖では帆を張ってや漕いでの試験を開始するのでしょう。」
アスセナが言う。
と、ローチがやってくる。
「どうでしょうか。」
ローチが言う。
「各王家やエルヴィス家の馬車を作っていると言われていましたし、報告を受けていますが、台数が少々少ないようなのですが・・・採算は取れているのでしょうか?」
ジーナが聞く。
「はは、大丈夫です。
もともと新規は、ほぼなく。
既存の幌馬車等の保守をして生活しておりました。
なので、定期的な収入は見込んでいます。
今が一番、私の工房では盛況です。」
ローチが言う。
「とりあえず、収入が安定しているというのでしたら安心です。」
ジーナが言うのだった。
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