第3576話 魔王国とどういう交渉方法があるのか。(有効なのは1つのようです。)
研究所の3階 所長室。
武雄とマイヤー、ヴィクターの話し合いは続いていて。
「・・・なんで、最有力がウォルトウィスキーとウスターソースの輸出拡大なのですか?」
武雄が眼鏡をかけながらヴィクターが持って来て書いた黒板を見ながら言う。
「効果だけを見れば、これが最有力でしょう。」
ヴィクターが言う。
「物で外交交渉をして良いのですかね?」
「似たようなことをしていると思いますが?」
武雄の問いにヴィクターが言う。
「・・・・・・記憶にありませんね。」
「そうでしたか。
ちなみに主の懸念は何でしょうか。」
「例えば、ウォルトウィスキー100個で今回のウィリプ連合国のふざけた宣誓を聞き流してくれるとするでしょう?
この時の印象が、どうなのか・・・というのが懸念です。
今回は良くても次があった時に魔王国は次回はより多く要求をしてくる可能性が高いと思われます。
『前回は100個で我慢したのだが、今回もとなると部下を抑えられない可能性がある。
ただし、110個貰えるのであれば、部下を納得させましょう』とか?」
武雄が言う。
「要求が吊り上がるという事ですね?
ですが、それは物に限らないのではないですか?
今回のウィリプ連合国の話は、アズパール王国が両国の戦争の間に挟まるのを回避したいが為です。
この交渉を持ち掛けた時点でアズパール王国は弱い立場となります。
次は要求が高くなるのは当然となります。
主は向こうの弱い所がわかっている状態で同じ要請を同じ要求で受諾するのですか?」
ヴィクターが言う。
「・・・親密度によって対応が分かれると思います。
エルヴィスさんに過大な要求はする気はありません。」
「ご親族という所とエルヴィス家がしたい事と主がしたい事が同じなので、発展優先であるからです。
まぁ、エルヴィス家とキタミザト家の関係は次代辺りまで、今のままでしょう。
そこは特例として、そうですね・・・ゴドウィン伯爵殿は、ご親戚なので、特例にしましょう。
テンプル伯爵殿はどうでしょう?」
ヴィクターが聞く。
「・・・・・・利子は欲しいかな・・・」
武雄が腕を組んで考えながら言う。
「そういう事です。」
「はぁ・・・物も金も最初に提示した額が次からは増額になるという事ですか。」
「そうなる確率は高いかと。
残念ながら減額はありません。」
「ふむ・・・で、ヴィクターの案を見ると・・・輸出拡大・・・ですか。
なるほどね。
売る量を高めるから金銭収入は増えると。」
「はい、これなら一方的な不利益はありません。
まぁ、国内流通量が減る程度ですね。
これが最上位の交渉方法かと。
次回同じ事があるのなら、要求は増えるでしょう。」
「そうならないようにしないといけないと・・・向こうは遅かれ早かれ知れる内容なんですよね。
口だけで引いて貰えるのは、無理でしょうね。」
武雄が言う。
「ですね。
魔王国はウィリプ連合国に兵士を送り込んでいます。
そこから知れますからね。
もしかしたら所長が知ると同時ぐらいに魔王国に報告が上がっているかもしれません。」
マイヤーが言う。
「これって難しくないですか?
何も言わなかったらアズパール王国を無視して戦争する可能性があり、その際は国土が大変な事になる。
この話を魔王国としたら足元を見られて何かしらの要求が来る。
最上案はエルヴィス侯爵領とキタミザト家の加工品の輸出枠増。
・・・要は『今の結び付きを強化させていきましょう』という話ですが、一領主と国家がやり取りしているんですよね。
短期的に見れば、一地方領の物産の輸出量増で済みますけど、儲けはエルヴィス侯爵領にのみ入ります。
王都が他の物でと言った所で魔王国には、ほぼ全てがあり、唯一無い物がエルヴィス侯爵領にある。
かといって、王都でそれが作れるかというと・・・私がしている事が売れているんですよね。
まぁ、王都で出来ないわけではないのですけど、私は基本的に参画する気がないので、出来ないとしましょうか。
そこで王都が何を言っても魔王国はエルヴィス侯爵領の物を欲しがる。
となると、王都はエルヴィスさんの意見を伺う事になり、ゆくゆくは王都とエルヴィスさんとで溝が出来そうですよね。」
武雄が言う。
「所長とエルヴィス侯爵様は、王都から委任されていますよね?」
マイヤーが言う。
「あくまで従順である事が前提条件の委任ですよ。
とはいえ、欲しい物が提供出来るから交渉が出来るというわけで・・・どうしましょうかね。」
「・・・ちなみにお聞きしますが。
主、他の交渉方法はありますか?」
「残念ながらないんですよね。
ふむ・・・輸出増で交渉をしますかね。
あとは王城にこまめに報告を送って、追認か指示を貰うか・・・ですかね。」
武雄が考えながら言うのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




