第3575話 ジーナはローの酒屋にきました。(獣人向けの軽い酒は必要ですよね。)
ジーナはローの酒屋に来ていた。
「ほほほ、ジーナ殿、前はやや幼さがある中での綺麗さでしたが、この1年で美人に拍車がかかったようです。」
ローがジーナを褒めていた。
「ありがとうございます。
少しは成長したようです。」
「佇む姿は美人としか形容出来ない美しさですね。
これはキタミザト家の評判の一角になるでしょうね、ほほほ。」
「それは嬉しい事です。
ロー様の方は、何やらご主人様関連で大忙しとの話を各所から聞いております。」
「ほほほ、ありがたい事です。
この歳で数件の新種の酒の話を出来るのですからね。
息子達に良く言い聞かせるとともに良い教訓となる仕事を与えております。」
ローがにこやかに言う。
「増々、お店が繁盛しそうですね。」
「ほほほ、ありがたい事です。
ですが、まだまだ先の話でしょうね。
キタミザト様も試作を始めた段階だという話ですからね。
お教えいただいたビールも試作の段階でしかありません。」
「売り上げには、まだ反映されないのですね。」
「ええ、残念ながら。
ですが、キタミザト様の提案している酒は長期的観点で捉えれば、かなりの収益は見込めるでしょう。
なので、しないという手はありません。
それまではウォルトウィスキーの増産と増販で対処していくしかありませんよ、ほほほ。」
ローが言う。
「うーん・・・ですが、試作は費用がかかるものと思います。
変な話、ウォルトウィスキーの売り上げが、そのまま新種の試作資金に回されるという事になるのでしょうか。」
「まぁ・・・そうでしょうが、ですが、キタミザト様にお教えいただいているビールの製造方法は既存のウォルトウィスキーの装置を使って出来ますので、そこまで難解な物ではないと考えておりますよ。
むしろ、味を決める詳細な原材料の配合決めに年数がかかるかもしれません。」
ローが言う。
「作るのは難しくない、製品化が難しいという事ですね?」
ジーナが聞く。
「ほほほ、そうです。
ちなみにジーナ殿は、どんなお酒を好まれますかな?」
「私達獣人は基本的にお酒に弱いのです。
なので、ウォルトウィスキーをジュースで割って初めて飲めるので・・・ビールというのが、どういう味になるかはわかりませんが、弱い人も飲める物だとありがたいです。」
「ふむふむ・・・獣人系の方々はお酒が弱いと・・・ちなみにですが、日常的に獣人の方は飲むのですかな?
上位の方に買っていただける事もあるのでしょうか。」
ローがメモを取り始める。
「・・・少なくともここに来るまでの記憶ではありますが、獣人系が治める街中では酒場はありましたが、上位陣になればなるほど、お酒は飲みません。
酔うと良い判断が出来なくなりますし、注意不足にもなりますし、余計な事を言ってしまいますから。
なので、口にする物に酒が入っているとわかれば、すぐ止め、魔法師等に頼んで酔いを覚まして貰っていました。
ですが、それはワイン等の酒に弱いとわかっているからで、そこまで酔わない酒が出てくれば、買うかもしれません。」
ジーナが言う。
隣のアスセナは「貴族家って大変なんですね~」と思っていたりする。
「ふむ・・・私達飲める者からすると『酔わないお酒』という感じなのでしょうね。」
「うーん、なんとも・・・ですが、獣人系の話を聞くという事は輸出をお考えで?」
「いえ、違います。
あ、違ってはいないでしょうが、それはゆくゆくですね。
前に伯爵・・侯爵様が異種族の方の移住もしくは定住してくれる方法はないかとこぼしていたと聞いた事がございましてね。
もしかしたら、お酒を用意すれば定住してくれる方が増えるのではないかと。
まぁ、それとハワース商会に居る従業員が獣人の方でしてね。
一緒に飲めたらと思うのですよ、ほほほ。」
ローが言う。
「はぁ・・ハワース商会で獣人系ですか。」
ジーナが首を傾げる。
「ジーナ様、前にゴドウィン伯爵領からキタミザト様の紹介でハワース商会に就職されたご家族がいるのです。」
アスセナが言う。
「そうなのですね。
報告されていたかもしれませんが、記憶から抜けておりました。
ロー様は、その獣人の方と飲みたいと?」
ジーナが聞く。
「ほほほ、職人の方なのですがね。
ハワース商会で新意匠をしていると聞いておりますよ。
なので、どんなものが出来るのか、お酒を入れながら話したいのです。」
ローが言う。
「えーっと・・真面目な話ならお酒がなくてもよろしいのでは?」
ジーナが首を傾げる。
「ほほほ、それも必要ですが、お酒で思考を柔らかくしながら話すのも発想には必要な時がありますよ。
適度な量でですが、その適度が飲めない方は少ないとなると話が盛り上がる前に酔われてしまうのです。
なので、弱い方向けの酒というのは必要だと思っておりますよ。」
「ふむ・・ウォルトウィスキーが高評価で品薄となっている現状では、新しいお酒が必要なのかもしれませんね。」
「とはいえ、先ほども言いましたが、試作段階なので、ハワース商会の職人と飲むのは、随分と先になりそうです。」
ローが苦笑しながら言うのだった。
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