第3566話 夕食中に政策の話になる。(先を見据えて行かないとね。)
エルヴィス侯爵邸の食堂。
皆が集まって夕食を取っていた。
今日はトリカツカレーが出ていた。
「カレー美味しいね!」
「ぎゅ!」
「きゅ!」
ビエラ、リーザ、クゥがバクバク食べている。
「相変わらずの食べっぷりじゃの。」
「食べれないより食べれた方が良いですよ。
食べれるのは健康な証です。」
武雄が言う。
「お米は食べ応えがあるはずなのですけど、3人は関係なく食べていますね。
まぁ、タケオ様の言う通り、食べれるのは健康な事なのでしょうね。」
アリスが言う。
「侯爵様、養鶏場は上手く行っていますか?」
エリカが聞いてくる。
「うむ、計画をやや下回っておるが、大きく見れば増産傾向であるの。
鶏肉の販路拡大は順調と聞いておる。
卵の販売価格は下落傾向にあるが、それでも販売個数は伸びているそうじゃよ。」
エルヴィス爺さんが言う。
「・・・となると飼料が不安ですね。」
「価格もじゃが量がの・・・今はフレッドの所から輸入はしておるが・・・
この計画のまま行くと足らなくなる。
どこかで養鶏の増産を止めるか、新たな飼料作物を作るか・・・悩ましいの。」
エルヴィス爺さんが言う。
「飼料の売買価格は安いですからね。
私も王城で資料を見ましたけど、穀物生産の傍らで片手間でやるような物みたいです。」
「うむ、飼料も大事だが、今は小麦の生産が一番大事じゃ。
我が領では、買取価格が低い飼料の生産を始めて欲しいとは言えぬよ。」
エルヴィス爺さんが言う。
「・・・確かに。
となると、どこからか入手しないと養鶏場の拡大は難しいですね。」
エリカが言う。
「それか、飼料栽培に乗り出せるだけの余裕が農家にあれば・・・ですね。」
武雄が言う。
「ふむ・・・どちらも難しいの。
他から入手しようにも他の領地でもしているからのぉ。
増やすにしても今すぐに出来る事は、あまりにも少ない。
となると今は棚上げ、そして時期が来るまで現状を維持するしかない。」
エルヴィス爺さんが言う。
「今の飼料で出来得る限りの養鶏をして、農家が飼料に手を出せるようになるまで待つか、他領が飼料を輸出出来るようになるまで待つか。
そのどちらかでしょう。
ですが、増産出来ないだけで、安定化という面では上出来ではないでしょうか。
この段階での養鶏場の開発は目的を達したのでしょう。
次は維持ですね。」
武雄が言う。
「うむ、そうじゃ。
養鶏場は今を維持。
次は酪農じゃの。
タケオが王城でゼラチンの製造方法を手に入れておるからの。
その製品開発をしなくてはの。」
エルヴィス爺さんが言う。
「そういえば、アン殿下が、この地で料理を開発するのでしたよね?」
エリカが言う。
「うむ、わしからアンに言ったの。
こっちに来るまでに、ある程度のゼラチンを製造出来るようにしておかないとアンが悲しむの。
やれと言っておいて、来たら材料がないとなってはいけないからの。」
エルヴィス爺さんが言う。
「となると、精製する工房か商店が必要ですね。
文官で担当者は?」
「現状2名が居て、事前準備をしている。
工房の目途は付いているのじゃが・・・いかんせん、新しい食材じゃからの。
販路をどうするかは、これから考えねばならぬの。」
武雄の問いにエルヴィス爺さんが言う。
「お爺さま、それはチーズや卵のようになると?」
アリスが聞く。
「物が物じゃ、あそこまでの爆発的な広まりはするまい。
じゃが・・・ある程度は売れるの。
少なくともスイーツ店は飛びつくじゃろう。
じゃが、スイーツ店への公表はアンが来てからじゃ。」
エルヴィス爺さんが言う。
「アン殿下の実績にすると?」
「スミスには用意している。
アンにも用意してやらねばの。」
エリカの言葉にエルヴィス爺さんが言う。
「お爺さま、エイミー殿下にはないので?」
「ないの。
エイミーは質実剛健を望む。
というより、エイミーはそんな物を用意しなくても十分に領民からの受けが良いと思うがの。」
「スミスとアン殿下が実績を積む横で、エイミー殿下だけ目立った実績がないのは・・・良いのでしょうか。」
アリスが首を傾げる。
「ま、エイミー殿下は文官と仲良くして貰って、新しい事よりも今を大事にする姿勢を見せれば、変化に付いていけない人達からの評判になりますね。」
「うむ、加減が難しいがの。
全てが新しくしていく事が良い政策という訳ではない。
変化を好み、常に新しい事をしていく事に重点を置く者も居るし、今を変えない事に重点を置く者も居る。
対立をさせる訳ではないが、どちらも施政者に理解者が居るというのは安心するじゃろう。」
エルヴィス爺さんが言う。
「難しい政策ですね。」
エリカが言う。
「変化というのは成長において必要な事ですが、伝統を重んじるのも大事な事ですね。
スミス坊ちゃんとエイミーさん、アンさんなら役割分担をしながら上手くやっていくでしょうね。」
武雄が言うのだった。
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