第3563話 ジーナはエルヴィス爺さんに挨拶に行っています。(武雄達は土産話をしています。)
湯浴みを終えたジーナはヴィクターと一緒にエルヴィス爺さんの執務室に来ていた。
「うむ、ジーナ、良く戻って来てくれたの。
随分と前に会って以来という感覚じゃよ。」
エルヴィス爺さんが言う。
「数か月前にお会いしておりますが・・・はい、無事に戻ってきました。」
ジーナが言う。
「うむ、約1年に渡るスミスのお付きの仕事、ご苦労じゃった。
その任を解く。」
「はい、微力ながらもスミス様の成長される一助になれた事、嬉しく思います。」
「うむ、それにジーナのおかげもあり、スミスに婚約者も出来たのは良かったの。
最大の成果かもしれんの。」
「私は何もしていないようなものですが。」
ジーナが困った顔をさせながら言う。
「うむ、まぁ・・・端から見たらエイミーとアンに押し切られたと捉えられておるのじゃろうの。
実際は3人だけで認識しておれば良い事じゃ。
それに、傍にジーナが居たからエイミーとアンは行動出来たとも考えられる。
これが違う者がスミスのお付きであったなら、また違った結果になったかもしれぬ。」
「そこは何とも言えません。」
「うむ、たらればは言い出したら切りがないし、結論は出ないものだ。
少なくとも、わしはジーナが居たからこそと思っている事だけはわかってくれるかの?」
「はい、過分な評価を頂き、ありがとうございます。」
ジーナが軽く礼をする。
「うむ、それと色々とエルヴィス家の用事を頼んですまなかったの。
余計な仕事になってしまったのは、わかっておる。
じゃが、それもあって対魔王国、対ブリアーニ王国と友好的な関係を築けておるのも事実じゃ。
ジーナ、色々と動いてくれて感謝しておる。」
エルヴィス爺さんが軽く頭を下げる。
「ありがとうございます。」
ジーナが頷く。
「ジーナが王都に行っている間にキタミザト家の方の人事面では大きく変わっておる。
ヴィクター、増えたの。」
「はい、メイドや従業員に研究員です。
ジーナには報告を入れておりますので、認識はしているでしょう。」
ヴィクターが言う。
「先ほど、ヤリスと話を少しいたしました。」
ジーナが言う。
「まぁ、ジーナは割と短期間に出来てしまったが、他の者が少し遅れて成長しても根気強く見守ってくれるかの?」
「はい、心得ております。」
「うむ、頼む。
もう少し仕事をしたら客間に行く。
ジーナはそれまでアリス達と話をしておいてくれ。」
「はっ!侯爵様、失礼します。」
「今後とも頼む。」
エルヴィス爺さんが頷くとヴィクターとジーナが退出する。
「・・・本当に、ジーナは優秀じゃからの・・・他の者と壁を作らないようにしてやらないとの。」
エルヴィス爺さんが扉を見ながら言うのだった。
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エルヴィス侯爵邸の客間。
湯浴みと着替えを終えた武雄とエリカがアリスと雑談をしていた。
「へぇ、報告は来ていましたが、会議ばかりというのも大変ですね。」
アリスがエリカから武雄の滞在中の話を聞いて感想を言う。
「あっちこっちと連日会議ですよ。
研究所の所長としての会議は最初に終わっているのに。」
「はは、タケオ様らしいですね。
で、内容はどうでしたか?」
「そうですね・・・詳細はタケオさんから報告書が出る・・・はずなので、そちらで。
結果としては、タケオさんの意見が全部通っています。」
「あー、いつも通りですね。」
アリスが頷く。
「少々の注意事項はあったように思いますが、基本的には、やりたい事をして良いという判断になっています。
まぁ、王都にも実利があるようですが。」
「タケオ様が『したい事をする為』に王城が研究所を用意したのですから、そうなりますね。
エリカさん的にはどうですか?」
「うーん・・・専売局と財政局の話は王城にかなりの利益を出させるので、そこが起点になって他の部署でも甘くなっている印象ですね。
専売局と財政局が他の局に声をかけている可能性はあります。」
エリカが言う。
「王城の収入と支出を管理する部署2つが手を取り合って、タケオ様と画策しているとなれば、他の部署は気が気じゃないでしょうね。
お爺さまがスミスの件で王城に行った際にも色々な部局と話したようですが、お爺さまの現方針は認められて、問題ないと言われていると報告が回っています。」
アリスが言う。
「経済局長殿がエルヴィス殿と歓談した際に楽しそうにされていたとか。」
「まぁ、『農業も酪農もなんでもやりたい事が多くて、嬉しい悲鳴だ』と言っています。
お爺さまにとっては今は面白いのでしょうね。」
エリカの言葉にアリスが言う。
「あ、そうだ。
タケオさん、経済局長殿がチーズを輸入出来ると言っていましたよね?」
エリカが武雄に聞く。
「うん?タケオ様、チーズですか?」
アリスも顔を向ける。
「ええ、今、何か欲しい物はないかと聞かれたので、レシピ公表で高騰が続いているチーズが欲しいなぁと言ったら、カトランダ帝国から輸入出来るようなことは言っていましたよ。」
「へぇ、カトランダ帝国産ですか。
エリカさん、違いますか?」
「まぁ、極端に言うと食べている物とかでもチーズの味が変わると言われているので、食べ比べればわかると思います。
些細な違いだったと思います。」
エリカが言う。
「カトランダ帝国産かぁ、食べてみたいですね。」
「ふむ・・・なら、次のスミス坊ちゃん向けの手紙に経済局長に言って、少量を輸入して貰いましょうか。」
武雄が言うのだった。
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