第3533話 ジーナも色々考えていますが、結果に結びつきません。(パメラは剣技は上手いのです。)
「・・・」
ジーナがタイ捨流の独特の構えをしながら、攻めあぐねていた。
模擬戦は現在4戦目、ジーナは1回目は引きずり倒され、2回目は振ろうとしたら木刀が一瞬動かなくなる感覚があり、初動が遅れ、見事に投げられ、3回目は初動も完璧で左肩を捉えられたと思ったら軌道がズレていき、武雄の右側を振り抜き、がら空きの右脇を武雄に打ち込まれた。
で、今の4回目。
武雄もジーナも正面に構え、切先で互いの木刀を小突きながら、互いに攻撃の機会を窺っていたりしていたのだが、ジーナが攻め込もうと力強く一歩踏み出そうとすると武雄が1歩下がるという事をされており、ジーナが仕掛ける為に力を込める度に武雄が引いてを繰り返しており、幾度となく仕切り直しをさせられ、ジーナの精神状態は焦りに似た心理的ストレスを感じていた。
そこでジーナは基本のタイ捨流の構えに戻し、必殺の一撃で終わらせる事を選んだのだった。
「・・・」
ジーナは武雄の行動をジッと見ながらじりじりと近づいて来る。
武雄は正面に構えていたのを、左腰の小太刀を収めている鞘の上に重ね、居合の形をとる。
そこでジーナがピタリと止まる。
この形から始まり、先ほどの3回目が終わったのだ。
「・・・」
ジーナは、明らかに思考を回転させているのがわかる表情をしている。
だが、武雄はまったく動じずにジーナが動くのを待つのだった。
観戦している者達はというと。
「うーん・・・さっきもしていたけど、あれって居合だよね?
マリに教えて貰った。」
ビエラが武雄を見ながら言う。
「マリ殿にですか?」
ケイが聞いてくる。
「うん、そう。
スミスとエイミーと一緒にニール達の所に行った時に、少し習ったよー。
相手が振り始めた時に、相手の右わき腹に打ち込むんだって。」
「危険そうな剣技ですね。」
「私、硬くて、小さいから有利になるって言われたよ。
タケオは、どうして使っているのかわからないけど。
でも、ジーナに使えるのなら十分に役立つんだろうね。」
ビエラが言う。
「そうですね。
それにしても聞いてはいましたが、ジーナ殿は御前仕合の優勝者なんですよね。」
「みたいだね。」
「所長に対しては良い所がないでしょうが、どう見ても攻めに特化した剣技ですよね。
ああいう剣技もあるのですね。」
「ケード達は、剣の訓練はしないの?」
「魔法師専門学院では、基本を習うだけですね。
上段からの振り下ろし、下段からの振り上げと片手突きですね。」
「へぇ、3つも習うんだね。」
「正確には3つしか学べる時間がないという事ではないでしょうか。
他にも座学や魔法の訓練、集団戦闘等の訓練等があって、剣技をずっとは出来ないですから。」
「あ、そっか、他の勉強もしてるんだね。
・・・3つ覚えるの大変だった?」
ビエラが聞く。
「自主練で身に着けていくしかない感じでしたね。
授業を受けているだけでは、剣を振るだけで終わってしまうと思います。」
ケイが言う。
「ケイちゃん、自主練頑張っていたよね。」
パメラもケイに言う。
「ええ、純粋な剣技はパメラの方が上ですから、見て貰っていたわね。」
「へぇ、コーエン、上手いんだ!」
ビエラがパメラに言う。
「非魔法系の授業の成績は良かったもので。」
パメラが苦笑する。
「そなんだね。
なら、コーエンに教えて貰おかな?」
ビエラが言う。
「えあ・私ですか?」
「そ、屋敷の時はブルックが子供達に教えていたけど、今は違う事してるでしょ?
屋敷に戻るまで誰に習うか迷ってたから。
上から振るの教えて。」
「はぁ・・まぁ、上段からのは基本なので私でもわかる事は多いでしょうけども。
良いのですか?」
「良いんじゃない?
心配なら、アンダーセン達に聞いてみようか。」
「そうですね。
アンダーセン隊長が良いと言えば、旅の最中はお教えします。」
パメラが言う。
「なら、あとで聞いてみるねー。」
ビエラが言う。
「あ、ジーナ殿が動きそうですね。」
パメラがジーナを見る。
「うん?そなの?」
「はい、ああいう顔は授業の時良く見ましたから。」
「・・・パメラの相手をする時、ああいう顔をする事多かったよね。」
ケイが苦笑する。
「はは・・魔法系では私がああいう顔をしていたんでしょうね。」
パメラも苦笑するのだった。
ジーナが覚悟を決めたのか、ジリジリと武雄に近づいていく。
「・・・」
ゆっくりと確実に。
「・・・」
だが、武雄は動かない。
「・・・はっ!」
ジーナが右足を踏み出しながら思いっきり振り始める。
とすぐに見えない何かに当たる。
ジーナは心の中で「またか!」と思うと同時に今の体勢が左足一本で立っているのに等しい状況で、とりあえず、元の位置に戻ろうとするが、時すでに遅く、武雄の木刀が自身の右わき腹に向かってくるのだった。
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