第3532話 リツの住処に到着。(さて、皆は野営の準備をしましょう。)
リツが住処にしている王都の西にある廃村。
武雄達が到着していた。
「グルゥ。」
レッドドラゴンのリツが、成獣状態で出迎えていた。
「来たよー。」
ビエラが手を振っている。
「リツ、大人数で来て、すみません。
1泊お願いします。」
「グルゥ。」
武雄が言うとリツが頷く。
「主、大丈夫って言ってますよ。」
ミアが言う。
「わかりました。
アンダーセンさん、野営の準備をお願いします。」
「はい。」
アンダーセンが返事をして試験小隊の皆に指示を出しに向かう。
「さて、はぁ・・・ジーナ、模擬戦をしましょうか。」
「はい!お願いします!」
ジーナがやる気を見せる。
いつのまにか、2本の木刀を用意している。
「マイヤーさん、審判を。」
「了解しました。」
「・・・彼方に移動しましょうか。」
武雄、ジーナ、マイヤーは、野営の準備を邪魔しないように広場の端の方に移動する。
とアンダーセン達もやってくる。
「あれ?・・・野営の準備は?」
「所長の戦闘も勉強になりますから。
ちゃんと、後で準備させます。」
アンダーセンが言う。
「はぁ・・・そんなに見学されても・・・
まぁ、仕方ないか。
ジーナ、木刀を貸してください。」
「はい、黒と木目があります。
どちらになさいますか?」
「あー・・黒で良いです。」
「はい、わかりました。」
ジーナがそう言い、黒の木刀を武雄に渡す。
「じゃ、始めましょうか。」
「お願いします!」
ジーナはそう言って、武雄から少し離れて、木刀を両手で握ると顔の右に持っていき、タイ捨流の独特の構えをとる。
武雄はというと。
構えるでもなく、腕をだらんとして、右手で軽く木刀を持ち、一見やる気のないような佇まいをしている。
「・・・」
ジーナは、この時、明らかにいつもと違う構えに困惑する。
「始め!」
「!?」
マイヤーの号令と共に武雄がジーナに向かって木刀を軽く投げた。
それと同時に武雄がジーナに突進。
ジーナは「避ける」か「払うか」の選択を迫られる。
それは「どちらも危うい」とジーナの直感が警鐘を鳴らす。
ジーナは払うのを選択し、軽く投げられた木刀を狙って、木刀を振り下ろす。
目の端には武雄が迫ってくる事も見えていながらも、振り下ろしからの燕飛へ移行すると決める。
木刀を打ち落とし、燕飛の為に一瞬、左足の付け根部分に木刀を寄せ始めると武雄が減速しない事をジーナが認識する。
異常に近いと思った時には武雄の右腕が木刀の外側から伸びてきて、ジーナの首の横辺りで戦闘ベストを掴まれ、武雄が右足を踏み込み、同時に全体重をかけられたかのような荷重が左半身にかかる。
燕飛の為に両手が左足付け根にあり、突き上げの為に力を込めており、尚且つ、左足に自身の荷重をかけて、こちらも溜めていた事もあり、武雄の更なる加重に耐えられなくなり、ジーナが体勢を左に崩してしまう。
更に武雄が左手腕をジーナの胸に当てる形で押し込んでくる事で、わずかだが体が浮いてしまい、強引に投げるというよりも引きずり倒す形になる。
また、構えている外側に引っ張られているので、重心がズレており、踏ん張りが効かずにジーナが武雄のなすがままに引きずり倒される。
そして、引きずり倒した武雄は透かさず、戦闘ベストの左の胸上のナイフを抜き、ジーナの首に刃ではない方を当てる。
「・・・参りました。」
ジーナが倒れながら言う。
「はい!止め!」
マイヤーが号令をかける。
「はぁ・・・疲れた。」
武雄が立ち上がる。
「ご主人様、今のは?」
ジーナが立ち上がりながら聞いてくる。
「引きずり倒しただけですよ。
衣服を着ているからこそ出来る荒技です。」
武雄が言う。
「まずは1勝ですね。」
武雄が言うのだった。
武雄達の模擬戦を見守る試験小隊とビエラはというと。
「アンダーセン、あれ、簡単?」
ビエラが武雄を指差しながら聞く。
「木刀を振られている間合いに飛び込むのですから、簡単ではないですね。
それにしても強引でしたね。
木剣を投げて、注意を反らして、投げ技を・・・いや、引きずり倒すとは。
ジーナ殿が木刀で払わなかったら、どうしていたのか・・・」
アンダーセンが考えながら言う。
「アンダーセンなら、どうするの?」
ビエラが聞く。
「そうですね・・・所長の事ですから、躊躇させるというか、自分に向いている意識を少しでも逸らす為の行動として行ったと思うので・・・所長の意を外すとしたら、無視して当たる・・・ですかね?」
アンダーセンが考えながら言う。
「木刀だから大丈夫だけど、本当の剣だったら怪我しているよ?」
「ですよね・・・んー・・・でも、動じない事も所長に対しては、使えると思いますね。
所長以外では、出来ない事でしょうけどね。」
「そうなんだね。
うん、なら、次はアンダーセンが模擬戦だね!」
「はは、ビエラ殿も冗談を言うようになりましたか。
ははは。」
アンダーセンが笑うのだった。
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