第3528話 試食とプレゼン。(実はレシピを貰う際にもやっているのですけど、それは秘密です。)
王都西の街の高級宿屋の厨房。
武雄は、料理長や料理人と一緒に玄米を炊いていた。
「なるほど・・・火加減が・・このぐらいなのですね。」
「ふむふむ・・・火加減さえ気を付ければ良いというのは、ある意味で楽ですね。」
「少々、焦げても・・・あー、商売としてみると焦げはダメか。
うーん・・・まぁ、今回は試食なので、その辺は後日という事で。
こうしている間に、野菜を切ったりして、時間を使えます。」
武雄が2人に言う。
「なるほど、アズパールカレーを出しに王城へ伺った際に『懐中時計』という画期的な物を教えて頂きましたが、それを使うのですね。」
「ええ、注文されたんですか?」
「はい、一応、王城内の総務局で代わりに手配して頂けるとの事で、2個頼みました。
王城から注文だけして頂いて、此方へ直接送って頂けるとの事でした。
ただ、納期が長いという事で待っています。」
「ふむ・・・そうですか・・・わかりました。」
武雄が頷く。
「玄米の炊き方は、時間がシビアなんですね。」
料理長が言う。
「確かにアズパールカレーのようにじっくり煮込むのであれば、鐘の数を目安に出来るでしょうね。
慣れというのもあるでしょうが、他の物に比べると時間がきっちりとしているでしょうか。」
「懐中時計が届いてから、この玄米を扱う事になりそうですね。」
料理長が言う。
「ええ、あ、それとエルヴィス侯爵家で作っているアズパールカレーの味も試して貰いたいので、此方のカレーを別の鍋に一つ分けてください。
具材は同じで結構です。」
武雄が言う。
「はい、キタミザト様用に1つご用意しておりますが、何を?」
「ジャガイモのすり身を入れて、少しとろっとしたのを作りたいのです。」
「ほぉ・・・とろみですか・・」
「そういえば、アズパールカレーにはジャガイモ入れないですよね。
レシピを頂いた時から思っていましたが、それが基本なのですよね?」
「はい、ジャガイモは煮崩れが激しく、煮込み物には基本的には入れておりません。」
料理長が言う。
「なるほどね。
まぁ、どうなるか、お試しくださいね。」
武雄が言うのだった。
・・
・
一般の食堂とは違う、多目的部屋。
宿の支配人以下幹部達と武雄とジーナが集まり、玄米の試食会に臨んでいた。
「こ、これは・・・ふむ・・・」
「パンやパスタとも違う・・・はぁ、こういう食べ物があるのですか。」
「これは新食感です・・・アズパールカレーとも喧嘩していませんし、かといって主張がある訳でもないですね。」
「以前、豆を一緒にアズパールカレーを煮込みましたが、同じ穀物でもこうも食感が違うのですか・・・」
宿の面々は驚きながら食べている。
「ふむ、これは美味しいですね。
この宿が復活させたアズパールカレーと、玄米の相性も良さそうですね。
では、料理長、次を。」
「はい。」
料理長が皆に配膳する。
「なんでしょうか・・・違和感がありますが・・・」
支配人が違和感はあるが、何が違うのかわからずに首を傾げる。
「「「・・・・」」」
宿の幹部達もジッと見ている。
「行き渡りましたか。
こちらは私が居るエルヴィス家およびキタミザト家、そして直営の喫茶店でも出している、とろみを付けたカレーになります。
中に入っている具材は一緒です。」
武雄が言う。
「「「「失礼します。」」」」
宿の幹部達が食べだす。
「うん、美味しいですね。」
「・・・」
武雄は作りながら味見をしてわかっていたが、玄米と一緒に食べ、頷く。
ジーナは何も言わないが、いつもより早くスプーンを口に運んで食べている。
「これは・・・キタミザト様、具材は一緒なのですね?」
支配人が聞いてくる。
「もっと正確に言うと出来上がったアズパールカレーを1鍋頂いて、ちょっと手を入れただけです。」
武雄が言う。
「一手間で、ここまで味が変わるのですか・・・」
「これ、いつものアズパールカレーよりも玄米にあっている気がします。」
「これは不思議ですね。
味で言えば同じでも、感じている味が2つある気がします。」
幹部達が頷く。
「良かった、取り敢えず認めて頂けたようですね。」
武雄がホッとした顔をする。
「ええ・・キタミザト様、素晴らしいです。
こうも感じ方が違う物をお作りになられて、さらには玄米という物を見つけられて・・・はぁ、凄いです。」
支配人が言う。
「ありがとうございます。
では、それを踏まえて、玄米についてご説明をします。
書類の資料等は作っておりませんので、口頭で説明をさせて頂きます。」
「構いません、お願いします。」
支配人が言うと、幹部達やジーナが食器を横や奥に寄せてスペースを作り、ノートを取り出してメモの準備をし始める。
「はい、先ずはこの玄米について、食材にする為の加工と、調理前の事前準備の方法について説明します。
まず、この玄米というのはアズパール王国の東、エルヴィス侯爵領の隣のブリアーニ王国という国からの輸入がメインになっています。」
武雄がプレゼンを始めるのだった。
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