第3525話 王都西に到着だ。(玄米は準備中です。)
王都西の城壁が見える位置まで来ており、最後の休憩をしていた。
「意外と近かったですね。」
武雄がお茶を飲みながら言う。
「まぁ・・王都の壁の1つですからね。」
マイヤーが言う。
「ふむ・・・今まで、挨拶に伺っていませんが、別に構いませんよね?」
「所長が困らなければ、特に問題はないかと。」
マイヤーが言う。
「なら、行かなくて良いですね。
今まで訪ねなかったのに、特別な理由もないのに今回から突然訪ねるのも変ですし。
それに先日、王城で会って、挨拶していますしね。」
武雄が言う。
「ご主人様、アニータ様と準備が出来ました。
宿に先触れに行きます。」
ジーナとアニータが武雄の下にやって来て言う。
「はい、ご苦労様です。
2人とも気を付けてね。」
「「はい、失礼します。」」
2人が馬に乗って、先行する。
「そういえば、タケオさん、起きてから玄米を炊く準備していましたよね?」
エリカが言ってくる。
「ええ、宿の方々に食して貰おうと思いましてね。
下準備をしていました。
漬け置きは、最低4時間なので、向こうについて、大袋から出しておけば夕飯時に食べられます。」
「なるほど。
その玄米を振る舞うという事は、王都西の宿に卸すのですよね?」
「ええ、そうなれば、アズパールカレーの結びつきが深まると思います。
我が国で私達のみが扱っている食材ですからね。
月1回の振る舞いというだけで人が来るかもしれません。」
「ふむ・・・タケオさん、第3皇子一家に売れますか?」
「そこまでは、まだかなぁ?」
武雄がにこやかに言う。
「むぅ・・・玄米美味しいです。」
「頻繁にエルヴィス侯爵邸に戻ってきなさい。」
「はーい。」
エリカが不承不承で返事をする。
「さて・・・私達も行きますか。」
「よし、休憩は終わりだ!
総員、騎乗!」
マイヤーが皆に指示するのだった。
・・
・
王都西の街の高級宿屋。
ジーナとアニータが受付カウンターで受付をしていた。
「はい、こちらがキタミザト様と奥様の部屋、こちらが3人部屋に2人部屋、こちらが1人部屋です。」
支配人がジーナとアニータの前に鍵を並べながら説明する。
「ありがとうございます。
アニータ様、1人部屋の方の鍵を、私が複数人部屋の方を持ちます。」
「わかりました。」
アニータが頷く。
「では、受付は以上です。
あとの歓談については、キタミザト様がお着きになった際にお伺いさせて頂ければと思います。」
「はい、それで結構です。
では、一旦、待ち合わせスペースでご主人様方の到着を待ちます。」
「はい、よろしくお願いします。
あ!来られたようですね。」
支配人が玄関を見ながら言う。
武雄達が入って来るのがわかる。
「こうやって見ると、周囲と違いがはっきりして、異質な服装の集団ですね。」
ジーナも玄関を見ながらボソッと言う。
「はは、統一感があって良いのではないでしょうか。」
「機能に特化した服なので、重宝するのですが・・・制服の方が良かったかもしれません。」
「はい、こんにちは。
ジーナ、アニータ、受付は終わりましたか?」
「「はい。」」
ジーナとアニータが返事をする。
「支配人、すみません。
押しかけました。」
武雄が言う。
「いえいえ、お越しくださりありがとうございます。
それと陞爵の件、おめでとうございます。」
支配人が礼をする。
「ありがとうございます。
侯爵になってしまいました。
とはいえ、今後ともアズパールカレーの協議を続けていきましょうね。」
「はい、今後ともよろしくお願いします。
お打ち合わせは、どのくらいからになさいますか?」
支配人が聞いてくる。
「夕食後にしましょう。
実は、今回食べて頂きたい穀物を持ってきました。」
「穀物ですか。」
「はい、エルヴィス侯爵領で作付け試験を開始して、ブリアーニ王国から輸入し始めたのですが、アズパールカレーにも合うので、こちらの宿で購入して貰えるか検討頂こうと思いまして。」
武雄が言う。
「輸入した物なのですか?」
「はい、玄米という穀物で・・・輸送費用等々で単価は高いですが、アズパール王国ではエルヴィス侯爵邸のみで食べられている物です。
一般には、まだ流通していません。
それを、この宿で提供してみてはと持ってきました。」
「ほぉ・・・侯爵邸でしか食べられない物というのは、人の気を引く良い文言ですね。」
支配人が頷く、
「はい、但し、調理前の加工と準備に半日程度かかります。」
「それほどかかるのですか。」
「はい、籾という殻付きで輸送しますので、それを取り除く作業と、調理前に水に漬け置く時間が必要です。」
「ふむ・・・手間がかかるという事ですか。」
「残念ですが。
なので、利用客に提供出来るのは月に1回か2回ではないかと。
あー、それと、籾殻を取り除くのに少々大き目な装置を使います。
簡単に作業が出来るのですが・・・置き場と些かの購入費が・・・・もちろん、その装置がなくても殻を取り除く方法はありますが、そちらは、かなり時間がかかります。
なので、まずは食べて頂いてから検討頂きたいと思います。」
「わかりました。
試食に臨ませて頂こうと思います。」
支配人が頷くのだった。
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