第3520話 エイミー達は帰宅中。(アン、重大な事に気が付く。)
武雄達と話を終えた、エイミー達は寄宿舎に向かって歩いていた。
「スミス、これって・・・どうなんだろうね?」
エイミーが呟く。
「どうとは?」
スミスが聞き返す。
「うん、ウスターソースだけでなく、その『味噌』と『醤油』という調味料をエルヴィス家が生産する事が。
もちろん、エルヴィス侯爵殿もタケオさんも真面目に領内発展の為にしている事ではあるのよ。
それは国にとっても多大な功績でもあるわ。
でも・・・他領から見ると出来すぎている気がするわ。
交渉で領土を拡大させ、国防で最良の結果を出し、領内の発展もさせて、国内の調味料を独占的に大量生産する・・・うーん・・・目立ち過ぎな気がします。」
エイミーが言う。
「しょうがありません。
領内発展は、タケオ様がしたい事をした結果で、僕達が見落としていた事をしているのですから。
交渉事や国防はお爺さまとタケオ様が、出来得る最善策の結果です。
そこは才覚と経験の問題ではないですかね?
お爺さまもタケオ様も『やるだけやった』と言うでしょうから、他から何か言われても気にしないと思いますよ?」
スミスが言う。
「スミス、大丈夫?
この後を継ぐのよ?」
「はは・・今更ですよ。
もうやってしまったのです。
どうにもならないことですし、僕は、この後の発展を後押しするしかないと思っています。
まぁ、エイミーとアンにも手伝って貰わないといけないでしょうけど。」
「むぅ・・・しっかりと支えてあげるから安心して!
でも、私やアンも支えて貰わないといけないけど?」
エイミーがスミスの顔を覗き込みながら言う。
「なんとかします!
僕が出来る範囲で!」
「ん?なんだか、タケオさんみたいな言葉ね?」
「そうですか?」
スミスがエイミーに言う。
「仲がよろしいのですね。」
「ええ、私達は見守る事が仕事です。」
ヴィートとドネリーが2人の後を歩きながら寄宿舎を目指すのだった。
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王城のアンの部屋に戻るアンと護衛のジーナは。
「うーん・・・ジーナ、思ったのですけど?」
アンが隣を歩くジーナに聞く。
「はい、なんでしょうか。
随分と悩んでおられたようですが?」
ジーナが聞く。
「うん、空白地帯の話ですけど・・・それって、本当にブリアーニ王国から持ち込まれた話なんですかね?」
アンが考えながら言う。
「本当は違うと?」
「ええ、多分エルヴィスお義爺さまとタケオさんからブリアーニ王国に持ちかけて抱き込んだ気がします。」
「その根拠は?」
「根拠ではないですが・・・先ほどのタケオさんの説明で『私とエルヴィス侯爵は、『空白地帯の所有権が目的ではなく、街道の管理が目的だろう』という考えに至った』と言ったのです。
あり得ませんよね?」
アンが言う。
「ふむ・・・続きをどうぞ。」
「うん、この話ってタケオさんが言うにはブリアーニ王国から持ち込まれた話で、その場の交渉で条件を捻じ込んだ・・・そういう話でした。
ですが、エルヴィスお義爺さまは精霊魔法師ではありません。
となると、精霊通信が使えない2人が、相手と交渉している最中に意思疎通が出来る筈がありません。なのに、2人の考えが同じ考えに至ったのですか?
私はあり得ないと思います。」
アンが言う。
「ふむ・・・ですが、ご主人様から陛下への報告は、先ほどの内容通りでされています。
そして、陛下は、お二人の外交交渉を追認されました。」
ジーナが言う。
「はい、わかります。
この件は詮索をしても良い事はありません。
むしろ通ったのなら、その先の事に注力しないといけないのもわかります。
ですが、気になったのも確かです。」
「でしたら・・・夏にエルヴィス家に行った際に真相をお聞きするしかないでしょう。」
「・・・わかりました。
今は気にしない事にします。」
アンが言うのだった。
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王都守備隊 第八兵舎内 武雄とエリカに割り振られた貴賓室。
武雄とエリカ、ビエラがお茶をしていた。
「アン殿下が不審に思っているようですね?」
エリカが武雄に言う。
「ふむ・・・パナ、ペイトー、これから話す事は他の精霊に言ってはなりませんよ。」
「「はい。」」
チビパナとチビペイトーが頷く。
「お、その反応は?
正解という事ですね?」
エリカがいたずらっ子の顔をさせながら聞いてくる。
「ええ、アン殿下には嘘は通じないかもしれませんね。」
武雄が苦笑する。
「とはいえ、この話は私、エルヴィスさん、ブリアーニ女王陛下、魔王国王陛下の4人で画策しているので、私達だけで・・・というわけでもありませんが。
まぁ、話をふったのは私達ですね。
さて、エリカ、私とエルヴィスさんの真意は?」
武雄が言う。
「街道警備も嘘ではないでしょうが、何故『こちらが土地の所有権で向こうが鉱山の利権を』と提案したかですよね・・・・・・多分・・・水かな?」
エリカが考えながら言う。
「ほぉ。」
武雄が、感心した顔をエリカに向ける。
「カトランダ帝国も山が多いですから、川の上流は山なのは常識としてあります。
タケオさんとエルヴィス侯爵殿は農地拡大を推し進めるという話をしています。
農地には水が必要です。
その水の確保の為に山の所有権を欲した・・・という事ですかね?
でも、土地を所有しただけでは水は増えませんよね?」
「ええ、魔王国のドラゴン達に、野外演習場として利用して貰おうかと。
特に、ホワイトドラゴンとブルードラゴンを中心にね。」
「あー・・・なるほど。」
エリカが頷くのだった。
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