第3518話 空白地帯の事を話そう。(名声の費用と見れますね。)
「さて、魔王国との戦争の話をしました。
領内の農業系の話もしました。
次は・・・エルヴィス家が侯爵になった話をしましょうか。」
武雄が皆に言う。
「タケオさん、陛下より『慣例の戦争での功績に加え、空白地帯をブリアーニ王国と交渉し、アズパール王国の領土と認めさせた』事による陞爵と聞いています。」
エイミーが言う。
「タケオさん、アズパール王国では113年ぶりの領土拡大だそうですね。」
アンが言ってくる。
「へぇ、113年ぶりなんですね。」
武雄が感心する。
「「うん?」」
エイミーとアンが首を傾げる。
「うん?」
武雄も首を傾げる。
「いえ、タケオさん、113年前って初代エルヴィス卿が、あの地に任じられる時の話ですよ?
つまりは、エルヴィス家が今までの最終の領土拡大地を守っていて、さらに広げたって話なんです。」
エイミーが言う。
「「へぇ。」」
武雄とスミスが感心する。
「うん?スミスも?」
エイミーがスミスに顔を向ける。
「あはは♪」
スミスが良い笑顔で対応する。
「・・・まぁ、その辺は後で学べば良いでしょう。
で、タケオさん、陛下から言われている事に追加はありますか?」
「特にはありませんね。
ブリアーニ王国からの相談に少し嚙ませて貰った話です。
それに国家間では、その話で終えられましたけど、山に居座る不届き者達の排除はこれから対処するのでね。
実効支配は、これからです。
その辺の打ち合わせも、これからですから。
まぁ、言ってはみたものの面倒だなぁという感じです。」
武雄が言う。
「タケオ様、実効支配というと・・・あの空白地帯は鉱山ですよね?
そこの対処をするという事ですね?」
スミスが聞いてくる。
「ええ、交渉という事で陛下は、ぼかしていますけどね。
交渉結果は簡単、アズパール王国は土地の所有権を有し、ブリアーニ王国は鉱山内の採掘権を有するという合意をしたんです。」
「タケオさん!鉱山利権を売ったのですか!?」
エイミーが立ち上がって言う。
「・・・所有権が曖昧な所の線引きを提案し、了承して頂いたのですよ。
もっと言うのなら、エルヴィス領北東の空白地帯の併合を実施する通達をしに来たブリアーニ王国を交渉で土地の所有権だけは、こっちにくださいと、お願いしたという話です。」
武雄が言う。
「・・・タケオさん、何を言ったのですか?
『お願いします』と言うだけでブリアーニ王国が土地を譲渡するとは思えませんが・・・」
アンが聞いてくる。
「ふむ・・・アンさん、前に西側で行われる戦争準備の情報を魔王国にも、それとなく教えるという話をしたと思いますが、覚えていますか?」
武雄がアンに聞く。
「え?えーっと・・・あ!去年、タケオさんが貴族になった際の研修で話していましたね。
となると・・・うーんっと・・・あ、魔王国からドワーフ王国、カトランダ帝国に向けての街道があるという事ですね。」
「そうですね。
で、そのドワーフ王国と魔王国の間に空白地帯があるのですよ。」
「ほぉ、そうなのですね。」
アンが頷く。
「どうも、そこが陸路で魔王国からウィリプ連合国に抜ける、奴隷の密輸経路ではないかと目されています。
そして、そんな空白地帯の隣にブリアーニ王国が領地異動してきたという事です。
奴隷関係で、拉致被害が出ていたブリアーニ王国がね。
そして、空白地帯の併合をすると言ってきた。」
「・・・」
アンが、真剣な顔で武雄を見る。
「私とエルヴィス侯爵は、『空白地帯の領有が目的ではなく、そこを抜ける街道で奴隷の密輸を監視するのが目的だろう』という考えに至りました。
なので、『この経路上の街道にアズパール王国が2カ所、鉱山の坑道の出入り口にブリアーニ王国が2カ所、入国と出国を監視する関を合計4カ所用意し、奴隷の密輸を阻止しませんか?』と持ちかけたのです。
『もちろん、鉱山内で採掘した鉱石はブリアーニ王国産で構わない』、『採掘量の1割分の収入を頂ければ、ブリアーニ王国から輸入する鋼材は、通常価格の1割増しで購入します』とも言いました。
で、この提案をブリアーニ王国が了承します。
ついでに魔王国の陛下も追認されましたので、正式に合意がなされました。」
武雄が言う。
「・・・なるほど・・・うーん・・・エルヴィス家には鉱山の採掘の1割分の税収入があるのですね?」
アンが聞いてくる。
「はい、そうなっています。
エイミーさん、採掘量の1割分の収入があるというのは良い事ではありますよね?」
武雄がエイミーに言う。
「今まで何もなかった所から収入があるとは大きな事ではありますが・・・関を2つ作らないといけないとなると人件費や駐留経費もあるし・・・うーん・・・鉱石の産出量がどのくらいになるかで微妙ではありますが、2割くらいは欲しかったかもなぁ・・・
あー・・・そっかぁ、だから1割で良いと言ったのかぁ。」
エイミーが難しい顔をしながら言う。
「うん?エイミーお姉様、どういう事ですか?」
アンが聞く。
「うん・・・たぶん、エルヴィス家の収支としては、産出量の1割だと、その地の関の経費が賄えない。
つまりは持ち出しが少なからず発生するかもしれないのよ。
ブリアーニ王国もそれがわかっているだろうなぁ。
土地の所有権を渡せば、ブリアーニ王国としては割安で街道の監視が強化出来ると思わされたんだろうね。
だからこそ、ブリアーニ王国は土地の所有権に拘らなかったのかもしれないわ。」
エイミーが言う。
「・・・タケオさん、エルヴィス家の経費負担については、どう考えるのですか?」
アンが聞く。
「・・・エルヴィス家が陞爵する為の費用としては安いのでは?」
「あ、なるほど、名声の対価として見るのなら安かったと。
爵位報酬が増額されるから、実質費用は賄えているかもしれませんね。」
アンが頷くのだった。
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