第3511話 魔法師専門学院からの帰り道にて。(この考えは誰でしょう?)
魔法師専門学院から王城への帰り道。
「タケオ、ジッロの部屋、何もなかったねー。
何か見つけたかったのに、何もなかった。」
ビエラが言う。
「そうですね。
ジッロさんの部屋、何もありませんでしたね。
学業は心配していませんが、学生生活を楽しんでいるのかな?
異性の気配がない事の方が心配になります。」
武雄が考えながら言う。
「いや、タケオさん、異性に感けていないのは安堵する所では?」
エリカが聞いてくる。
「うーん・・・親元を離れてですよね?
んー・・・スミス坊ちゃんもですが、もう少し部屋が乱雑になるかと思っていたのですが」
武雄が考えながら言う。
「タケオさんは、王立学院の生徒や魔法師専門学院の学生に、どういうイメージを持っているのでしょう?」
エリカが呆れながら聞いてくる。
「部屋は汚れ、夜更かしし放題、遅刻はしなくても授業中はうたた寝、彼女が出来たら貢いで生活が破綻する・・とか?」
「うん、それはダメ人間ですね。
さすがに、周囲の学生や教師陣が注意するのでは?
そもそも、魔法師専門学院は兵士を育成する学校なのですから、生活は規律を重んじると思いますよ?」
「・・・確かに、そうですね。
となると、一縷の望みは王立学院の宿舎の方ですかね。」
「ダメ人間探しですか・・・」
エリカが呆れる。
「ちなみに、カトランダ帝国を知るエリカの目には、魔法師専門学院はどう見えますか?」
「あまり厳しくなさそうかと。
あ!いえ!実際に私がやるとなると厳しいでしょうけど!
魔法師育成機関として見比べると、カトランダ帝国の方が厳しそうに見えます。」
エリカが言う。
「ふむ・・・まぁ、単純に比べても意味が無いのかも知れませんが・・・そうですか。
国民の気質や、運営する国の思惑が影響するでしょうからね。
単純に『厳しい方が良い』と断じる訳にもいかないですね。」
「そうですね。
事実として、然程厳しいとは言えない今の魔法師専門学院の指導で育った卒業生達でも、魔法士の基礎教育として十分だと受け入れられていますからね。」
エリカが頷く。
「ふむ・・・」
「タケオさん、魔王国はどうでしたか?」
エリカが聞いてくる。
「部下も一緒に魔王国の方々から色々話を聞いていて、報告書は出しているので、詳細はそっちで確認を・・という事を聞きたいわけではないのですよね。」
「はい、タケオさんの感じたままを知りたいです。」
「うーん・・・そもそも魔王国内での人口に対しての魔法師の割合はアズパール王国より低いかもしれません。」
「え?そうなのですか?」
「魔法適性者というだけならアズパール王国より魔王国の方が多いでしょうけどね。
うちのジーナの体質もそうですが、魔法適性があっても、自分の身体以外に対して魔法を発動出来ない、外部に魔法で干渉出来ない者が多い国家だと思います。
軍に所属する者の
あ、でも・・・アズパール王国の魔法適性者は、約半分て言われていたか。
エリカ、カトランダ帝国での魔法適性者の割合は?」
「たぶん、アズパール王国と変わりないかと思います。」
「うーん・・・まぁ、良いか。
大した問題でもないでしょうしね。
私の所感としては、魔法師の集中運用は実施しています。
魔法師が王軍・・魔王国の中央軍で3000名以上在籍していますしね。
それの領主としては、リッチと言った不死者の領主が指揮官に居たりします。
人口に対する魔法士の割合は少なくても、魔法の研究は盛んだと思わされましたね。」
「なるほど。
訓練は、どうなのでしょうか?」
「魔法師の訓練は見ていませんが、普通の兵士の訓練は少し見させて貰いましたよ。
走って、剣で打ち合っての繰り返しのようです。」
「体力が要という事ですね。」
「ええ、訓練に参加した部下が驚いていましたが。
フルプレートを着込んで走り込み、直後に剣で打ち合っていました。」
「・・・フルプレートを着用して走り込み?・・・それは凄いですね。
フルプレートは、どんなに薄く作られていてもそれなりに重いですから、走るだけでも大変ですのに。」
エリカが驚きながら言う。
「私も感心しましたが。
『戦場ではそれぐらい出来なければ、1日中動く事など出来はしない』と笑われましたよ。
それに、魔王国軍の幹部自ら兵士達と打ち合いも行っているようでしたね。
なんでも『私が衰えたのなら私個人の問題だが、兵士達が衰えたら国力の問題だ』との事です。」
「はぁ、凄いですね。
魔王国の幹部になるのには己の武力も必要なのですね。」
エリカが感心する。
「ねえ、ジーナ、魔王国は、そういう考えなのですよね?」
武雄が、ジーナに確認する。
「はい、『力こそ全て』と習います。
とはいえ、言葉の通りに力=武力というわけではありませんが。
力=統率力とも習うはずです・・・ですが、幹部自ら個々の兵士を調練するというのは、少々行き過ぎな行動かと。
よほど力自慢の方なのでしょうが、もう少し、広い視野で上に立つ必要があるかもしれません。」
「うん、今度、ダニエラさんが来たら言っておきます。」
「確かに、ダニエラならやっていそー。」
ビエラが頷く。
「・・・ご主人様、ダニエラ様とは?」
ジーナが聞き返す。
「うん?魔王国の現国王陛下です。
ヴァレーリ陛下ね。」
「はぁ・・・失言でした、おやめください。」
ジーナが、ガックリ項垂れるのだった。
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