第3510話 ジッロと摸擬戦。(うん、成長しましたね。)
学院長と話を終えた武雄達は、ジッロが演習をしていると聞いて訓練場に来ていた。
で、やはりと言うか、教師と交渉をし、ジッロを含め4名と武雄達が模擬戦をする事になり、ジッロを除く3名対ジーナ、ジッロ対武雄で模擬戦が組まれた。
しかし、早々にジーナと3名との模擬戦は終了していた。
「勝者!ジーナ殿!」
審判役の教師が宣言する。
「「「・・・」」」
ジーナの前で蹲る学生3名。
「うん!ジーナ、強いですね!」
アンが笑顔で言う。
「ですね。
素質の差もありますが、努力の成果ですね。」
エリカが言う。
「ジーナ、体に木剣は当たっていませんでしたが、体に不調は?」
「ありません、ご主人様。
とりあえず、邪魔になりそうな者は排除しておきました。」
ジーナが言う。
「うん・・・うん、良くやりました。」
「えへへ♪」
武雄がジーナの頭を撫でる。
「さて・・・ジッロさんは、成長したかな?」
武雄がジーナが使っていた黒い木刀を借り、ジッロに向かうのだった。
・・
・
「さて・・・約8か月ぶりですが、少しは成長しましたか?」
武雄がジッロに言う。
「お見せできればと・・・」
ジッロが正面に木剣を構える。
「ふむ・・・では。」
武雄はそう言うと表情を消して右手に持った木剣を右肩に担ぐ。
前回と同じ構えをとる。
「始め!」
審判役の教師が開始を宣する。
ジッロは、合図を聞いても魔法を撃つでもなく木剣を構えたまま、じっと武雄の動きを見ている。
「・・・」
「ガトリング。」
武雄は左手をジッロに向け、無数のファイアを打ち出してくる。
「シールド。」
ジッロは身を低くして、顔の前面にシールドを展開してやり過ごそうとする。
ただ、武雄のシールドと違い、顔周辺のみを防御しているようで、足には少々着弾する。ジッロは身動ぎもせずに耐えながら武雄の動きに注意を向けている。
「・・・うん、良いでしょう。」
武雄が頷き、ガトリングを止め、無防備にもジッロに近寄っていく。
「!?」
ジッロがすぐさま立ち上がり、正面に木刀を構えて武雄からの攻撃に備える。
もうすぐジッロの間合いに入る寸前、後1歩のところで武雄が止まり、左足を軽く引きながら左腰の鞘の上に木刀を持っていき、居合のような型をする。
「・・・」
「・・・」
ジッロも武雄も動かない。
「ふぅ・・・」
ジッロがジリジリと武雄に近づき始める。
「ふっ!」
ジッロが大きく踏み込み、腕を上げ、振り下ろしてくる。
が、ジッロが腕を上げたと、ほぼ同時に武雄も左足を大きく踏み出し、体勢を低くしながら、ジッロの右脇腹を狙って打ち込んでくる。
「両者!止め!」
審判役の教師が試合を止める。
ジッロも武雄も、相手に当たる寸前で木剣を止めていた。
武雄は狙い通りにジッロの右脇腹、ジッロは武雄が沈み込みながら打ち込んできたので、武雄の右肩であった。
「キタミザト殿の攻撃の方が、相手に致命傷を与えるでしょう。
ですが、キタミザト殿自身も利き手の方に重傷を負いますから、戦闘の継続は困難と判断します。
よって、両者引き分け!」
審判役の教師が判断を下す。
「はぁ・・・キタミザト様、ありがとうございました。」
ジッロが頭を下げる。
「いえいえ、ジッロさんの成長が確認出来て何よりです。
ちゃんと相手を観察して、我慢できるようになりましたね。」
武雄が立ち上がりながら言う。
「ご主人様、お疲れ様です。」
ジーナが近寄って来て、武雄に声をかける。
「はい、ありがとう。
どうでしたか?」
「はい、ご主人様が本気ではないとはいえ、剣技で引き分けているので、現時点では及第点かと。
このまま成長されれば、魔法を使いながらの戦闘も出来る様になるでしょう。
期待大かと。」
ジーナが言う。
「うん、ジッロさんはどうでしたか?」
「今できる事をしたのみです。
次に模擬戦をする時は、キタミザト様が剣を振るう際に魔法を使わせるくらいにはなりたいと思います。」
ジッロが言う。
「次は負けるかもね。」
「それはあり得ませんね。」
武雄の呟きにジーナが即答する。
「えー?・・・まあ、ジッロさんがこのまま成長すればどうなるかわかりませんよ?」
「・・・王都守備隊のベテラン隊員でもご主人様に勝てないのに、ジッロ殿が1年訓練しただけで勝てるとは思えません。
その程度で勝てるというのなら、私がとっくにご主人様に勝っています。」
ジーナが呆れながら言う。
「うーん・・・ま、いいや。
訓練中、お邪魔しました。」
武雄は、少し思案したがジーナへの説得を諦め、教師に礼を言う。
「いえ、良い戦闘を見せて頂きました。
1年生達も励みになるかと思います。」
教師が頭を下げる。
「そうであれば嬉しいですね。
では、最初に言った通り、ジッロをお借りします。」
「はい、次の授業までに戻れば良いのでよろしくお願いします。」
教師が頷く。
「よし!じゃあ、ジッロさんの部屋を臨検しなくては!」
「はぁ・・・何もありませんよ。
前回も見たではないですか。」
ジッロが呆れながら言う。
「前回は前回、今回は今回。
今回もボーナお母さんに報告しないといけないのでね!」
武雄達が笑顔でジッロの部屋を目指すのだった。
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