第3507話 どことどこが繋がっているのかな?(ウィリプ連合国とは手を組めません。)
「ええ、ですが、それだけではありません。
確かに、兵士は精兵で数が多い事もありますが、
陛下が『穏便に』と言っている1番の理由は、あの国は、まともなんですよ。」
武雄がボールドに言う。
「まとも・・・ですか?」
「ええ、凄くまともな国なんです。
魔王国建国の経緯は我が国との紛争が原因だったんですけどね・・・それよりも、先の戦争で魔王国がデムーロ国と開戦して侵攻する際、兵士達を鼓舞した魔王国陛下の演説が、まぁ、凄かったんですよ。
では、少し声を張って、その時の演説を再現してみましょうかね。
『建国の父達は外からの脅威から民を守る為に性別を超え、種族を超え、様々な因縁を越えて、団結し、国という物を作り上げた。
これは偏に『子供達を守る為』に行った。
今!再び!子供達が脅かされている!
我々は建国の精神に則り!我らの家族!我らの子供に危害を加える者を許してはならない!
我々は侵略者と言われるだろう!
だが、我々は領土を欲しているのではない!我々は一種族を滅ぼそうとしているのではない!
我々は、我々の家族に手を出した報いを、相手と相手の子孫達の脳裏に刻み込み!
二度と!子供達が脅かされないようにしたいのだ!
我々は、舐められるような存在ではない事を、示さねばならない!』
とね。
この演説で、一気に全軍の兵士達の士気が上がり、進軍が開始されました。」
武雄が言葉を区切って生徒達を見回すと、皆の顔が引きつっている。
その脇でジーナは目を煌めかせているし、ビエラは「ふーん」と思っていた。
「それは・・・また・・・」
ボールドが呟く。
「まぁ、今の演説でわかるとおり、魔王国は国民をとても大事にしています。
そして・・・これは、以前から我々が聞かされていた内容と違うのですが、魔王国の方々は人間種を食べたりしません。」
「そうなのですか?
昔、何かの本に魔王国は食人をすると書いてあったのですが。」
ボールドが聞く。
「食人などしませんね。
小麦を主食とした、我が国と同じような食生活でしたね。
ですが、魔王国の東に食人国家が隣接しており、食料をデムーロ国から仕入れているそうです。」
「・・・ふむ、ここでまたデムーロ国ですか。」
ボールドが考えながら呟く。
「食材の仕入先は、ウィリプ連合国でしょうね。
建前として、あの国は人間至上主義を謳っています。
そんな国が、何処から人間を調達しているのか・・・どの層が 間引かれているのでしょうかね?」
武雄の言葉に、皆が暗い顔をする。
「陛下は何と?」
ボールドが聞く。
「我が国とウィリプ連合国は、連携も協力も『無い』そうです。
何しろ、自国民であっても人間と見做さない貧困層を、食材として売り飛ばしている可能性が高いのですよ!
他国の民などそれ以下だと見下され、もっと酷い扱いをされても不思議ではないでしょう。
そもそも、今の我が国は、種族に拘らずに有能な人材を採用して、今後の国家運営をしていこうといるんですよ!
そんな国家と手を取って歩けるとは思いません。」
武雄が、語気を強める。
「そうですね。」
ボールドが頷く。
「なので、陛下は、ウィリプ連合国に不穏な動きが見られる事の確証を掴んで来いと、外交局等に急がせています。
それまでは、まともな国家である魔王国とブリアーニ王国とは事を荒立てずに、友好を培っておけとね。
言葉は悪いですが、魔王国との戦争で負けても我が国の民は厳しくても何とか生きていけるでしょうが、ウィリプ連合国に負ければ国民達に明日はないと陛下は考えているのでしょう。
皆が皆、必死です。
これが、私が知っている周辺諸国とアズパール王国の関係性の最新情報でしたが・・・あら?ちょっと刺激が強すぎましたかね?」
武雄が言う。
「王立学院の生徒に対して、少々刺激的過ぎる内容でしたね。
キタミザト殿、未来を担う若者達に、他に教えておきたい話はありますか?」
「これ以上話したら、もっと刺激が強い事を言いそうですけど?
それでも良いなら・・・」
「止めておきましょう。
それでは・・・質疑応答も止めておきます。
話がもっと面倒になりそうですからね。
各々、今、キタミザト殿が話した事を正しく理解して、これからの学びと生活に、将来の仕事に活かしていきなさい。
では、キタミザト殿に拍手を。」
ボールドが生徒皆に言い、講義を終えるのだった。
「はぁ・・・終わった。」
武雄がエイミー達が座っている席にやってくる。
「タケオさん、少々話し過ぎでは?
それに、私も聞かされていない内容が多かったんですけど?」
エイミーがジト目で聞いてくる。
「まぁ、仕事で知りえた最初の情報が、こういったものでしたのでね。
陛下や宰相殿ぐらいにしか話せないって意味、わかったでしょう?」
武雄が苦笑しながら言う。
「ええ、十分に。
それにしても・・・ウィリプ連合国は扱いが難しい国家なのですね。」
「面倒臭い国家ですよ。
近隣の外交問題は、大抵あの国が関与しています。
そして、密かに他国と何かしらのやり取りをしています。
もしかしたら、我が国ともね。
そういえば、アドラム子爵領はウィリプ連合国に面していましたか。
今回の、お付き控室での騒動の裏にもその影響が・・・なんて、考えちゃいますね。」
「・・・本当に困った国家ですね。
ウィリプ連合国側の貴族領に就職する生徒が、どう受け止めたか気になりますが・・・」
エイミーが考えながら言う。
「横の繋がりは大事ですよ?エイミー殿下。」
「・・・わかっています、今のような精神的に不安を抱えている時に声をかけるのが一番効果的なのも知っています。」
「・・・同期の繋がりは貴重な情報源ですから、大事にする必要がありますよね。」
「はい、この後、すぐに取りかかります。」
エイミーの目が本気になるのだった。
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