第3504話 王立学院に挨拶に行く。(キティは元気そうだ。)
王立学院、ボールドの学院長室。
武雄達が遊びに来ていた。
「キタミザト殿、そういえば、キティ・エメットと面談なさるのですか?」
ボールドが聞いてくる。
「・・・したいなぁ、と思って来てみた感じなのですが。」
「いえ、『ここ数日、本人が緊張している様だ』と教師から報告が上がっていまして。」
「それは可哀想な事をしてしまいましたね。
とは言え、特別何か問い質したい訳ではなく、現状を確認しておきたかっただけなんですよね。
無事、卒業出来そうですか?」
「まぁ、この時期の3年生は、論文作成と卒業試験に向けての勉強ですから。
授業はなく、自由学習になっています。」
「それなら、学院に来なくても良いのでは?」
「一応、出席は取っていますね。
その後は退出も有りです。
調べ物とかありますから。」
ボールドが言う。
「ちなみに、卒業論文のテーマは学院側が指定するですか?」
「生徒の自由ですよ。
各人が課題を見つけ、集めた資料を元に考察し、結論を出す。
それが、王立学院の卒業論文なんだそうです。」
「ふーん・・・少々危険なテーマに取り組む生徒が居たりしませんか?」
「うーん・・・私は、今年から赴任したので、どういった指導がされているのかはわかりませんが・・・
教師陣で検討して評価をするという感じでしょうかね。」
ボールドが言う。
「そうなんですね。
そっかぁ、キティさん緊張してるのかぁ・・・では、教室行ってきますね。」
「いきなり会うんですか?」
「ええ、特に部屋を用意して話す程の内容でもないですから。
ふらっと行って、ふらっと帰ります。」
「・・・一緒に行きます。」
少し考えてから、ボールドが武雄に言うのだった。
・・
・
王立学院の3年生の教室。
3年生の大半が雑談をしていた。
まぁ、卒業論文の話をしていたり、趣味の話をしていたりと、まったりとしている。
「エイミー殿下、キタミザト様が面談について何も言ってきません・・・」
キティが机に突っ伏しながら言う。
「まぁ、タケオさんだしね。
私もジーナから『キティと面談をする予定だ』としか聞いて・・・え?今?」
話の途中でエイミーが、アルから伝言を受けて教室の入り口を見ると。
「失礼しまーす。」
「皆さん、失礼しますね。」
武雄とボールド、ジーナが入って来る。
学院長のボールドが同行してきたので、教室内が一気に緊張する。
「キタミザト様!?」
キティが立ち上がる。
「いやぁ、来ちゃった♪」
武雄がエイミーとキティに近寄り、にこやかに言う。
「こ、こ、侯爵様!!」
キティが緊張しながら言う。
「・・・また、事前の連絡も寄越さないで・・・」
エイミーは武雄にジト目を向けるが、武雄は気にもしない。
「うん、少し面談をと思っていたのですが、特段、伝えないといけない事もないので、挨拶に来ました。」
武雄が言う。
「はぁ・・・それでも、別室を取った方が良かったのではないですか?」
エイミーが呆れながら言う。
「えー?そういう周囲に聞かせられない内容は、今は話す気がないので、それはエルヴィス領に来てからですね。
で、キティさん、卒業論文は大丈夫ですか?」
「は、はい!目下、精一杯努力しています!」
キティが言う。
「・・・まぁ、無理しないようにね。
課題についての考察を、自分なりに結論づければ良いみたいなので。
王立学院で学んだ事を、総動員して書いてください。」
「はい!頑張ります!」
キティが言う。
「はぁ・・・そこまで気負わなくても良いと思いますが・・・
まぁ、内容を見る立場の私からすれば、力作が出てくるのはありがたいですね。」
ボールドが言う。
「ええ、そうですね。
どんな内容が出てくるのか楽しみでしょうね。」
武雄が言う。
「楽しみでもあり、これだけの人数の卒論を読まねばならないと思えば、恐怖を感じますね。」
ボールドが言う。
「さ、キティさん、座ってください。」
「はい!失礼します!」
キティが座る。
「さて、元気そうなキティさんの顔も見られた事ですし、帰りましょうか。」
武雄が言う。
「え?タケオさん、キティの顔を見に来ただけですか?」
「ええ、元気にやっているかなぁと。
目的は達成しました。
ボールド殿とも話せましたしね。」
武雄が言う。
「ふーん・・・タケオさん、講義してくれませんか?」
エイミーが考える。
「え?抗議?」
「講義です。」
エイミーが言う。
「教材も無いですし、許可が下りるとは思いませんが。」
「30分くらいなら大丈夫です。
自由に話してくれて構いませんよ。」
ボールドが言ってくる。
「学院長の許可は出ましたね。
タケオさんの講義を聞いてみたいのよね。
ね?キティ、聞いてみたいわよね?」
「是非!」
エイミーとキティが口を揃える。
「あー・・・」
武雄が周囲を見渡すと、周りの生徒達も興味があるのか、此方の様子を見ている。
「内容は、何でも良いのですか?」
「はい!なんでも!」
エイミーが言う。
「うーん・・・なら、若人たちに何か言いますか。
ボールド殿、問題があると思ったら止めてくださいね。」
「問題があれば割り込みますよ。」
ボールドが苦笑しながら言う。
「何を話そうかな?」
武雄は考えながら教壇に向かうのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




