第3501話 エリカ達と雑談。1(第3皇子一家も人手が欲しい。)
王城の城門を入った所。
通常よりも多くの兵士達が動員されていた。
「・・・」
「ご主人様を迎えに行く前から、こんな感じです。」
武雄とジーナは、歩きながら兵士達を観察している。
「まぁ・・・何らかの指示が出ているんでしょう。
気にしても仕方ないですね。
それよりも、私の留守中にエイミー殿下達が訪ねて来たそうですね。
精霊通信でパナに私の所在確認が来ていたそうですが、返事をしませんでしたからね。」
「はい、エルヴィス家の陞爵理由を知りたかった様ですが、ご主人様の不在と今後の予定ををお伝えしたところ、明日ご主人様が王立学院を訪問した際に尋ねると言われてお帰りになりました。」
「・・・うーん・・・うん、わかりました。
本来なら陛下が説明しないといけないのを、こっちに投げたのでしょう。」
「・・・エイミー殿下とは第3皇子一家の執務室でお会いしていますが、なんでその場では聞かずに第八兵舎に訪ねて来たのでしょうか?」
「エイミー殿下は何を勘ぐったのか、第3皇子一家の前で質問すべきではないと思ったのでしょうね。
まぁ、空白地帯の件は、陛下が説明するのが面倒だと思ったのかもしれませんが。」
武雄が言う。
「・・・うーん・・・それほど説明が難しい内容ではないですし、隠し立てする様な事ではないと思うのですが・・・」
ジーナが考える。
「まぁ、エルヴィス家の関係者のみであれば、国に齎した功績だけでなく、エルヴィス家の行動の意図も言葉を飾らずに説明出来ると、陛下が気を回したのかもしれません。
なので、陛下は、説明をするのは私が相応しいと思ったのでしょう。」
武雄が言う。
「はい、そう思う事にします。」
ジーナが答える。
「さてと・・・部屋に戻る前に、厨房に寄って何か頂いていきましょうか。」
武雄達が厨房に向かうのだった。
・・
・
王都守備隊の第八兵舎内、武雄とエリカに割り振られた貴賓室。
武雄とエリカ、ジーナとビエラとリーザが居た。
「バビントン子爵領の発展を後押しですか。」
エリカが武雄の話を聞いて言う。
「ええ、アルダーソン殿にも騒動の賠償金というまとまった手元資金が出来たので、それを領地開発資金としてバビントン子爵に貸し付けて領内の発展を促しつつ、アドラム子爵領からバビントン子爵領への移住者を少しでも増やせたらな・・・という話をしてきました。」
「ふむ・・・アドラム子爵領からの移住者ですか・・・
タケオさん、具体的にはどうやるんですか?」
「相手方の領民に直接『移住してください』と言えば、引き抜き行為になるので相手方領主に知られれば、抗議されるのは当然でしょう。
なので、今の領地より税率が安くて、あらゆる職種の人材を求めている貴族が居る。移住者を募集している領地があるという噂を流そうかと。
領地の予算に余裕があれば、引っ越しの費用を受け入れ側の領主が負担してみても良いですよね。
あとは、移住者が引っ越して来た際、新居を決めるまで3週間は無料で宿を提供するとか、宿は1家族に2部屋用意するとか?
あとは、新居もしくは農地の購入に際して、不利な契約を結ばされないように、文官を商談や契約に立ち合わせるとかですかね。
地元を離れ、引っ越すには、行政からある程度の補助があれば踏ん切りを付け易いでしょう。
エリカも、国を出る時には不安があったでしょう。」
武雄が言う。
「確かに・・・ふむ・・・なるほど。」
エリカがメモを取りながら頷く。
「でも・・・第3皇子一家では、しちゃダメですよ?」
「・・・」
エリカが「えー?」という顔を武雄に向ける。
「正確に言えば、今する事ではありません。
それに、バビントン殿に最初にやって貰わないとね。
やり方の良し悪しを検証しないといけないでしょうし、王家が配下の貴族領から領民を引き抜いていると糾弾される訳にはいかないでしょ?」
「・・・まぁ・・・そうですけど・・・人手は欲しいですし・・・」
「人手不足は、エルヴィス家も同じですよ。
でも、人手不足で移住者を募集しているなんて、他領にそんな噂が流れれば、相手側の領主の耳にも入り兼ねません。
この策は、バビントン殿が領主としては新人だから出来るのです。
領民引き抜きの噂が立ったとして、『出入りの商人達に人手不足だと愚痴を溢しただけだ』と言い張れば誤魔化せますし。
古参の子爵が、不満を持つ領民を新興貴族に引き抜かれ放題なんて醜聞は体裁が悪いので、表立って文句を言えないでしょうから、どうとでもなる事です。
ですが、引き抜き側が王家であれば、そういった言い訳は出来ませんよ。
今は、自重してください。」
「・・・はーい。」
エリカが渋々頷く。
「・・・ご主人様、『今は』なのですか?」
ジーナが聞いてくる。
「ええ、少なくとも経過を見なければいけませんね。
今回、アドラム子爵は、突発的に金貨7200枚という大きな借金が出来ました。
なのに、あの冷静さ・・・もっと取り乱しても良いのでしょうけど・・・普通に考えれば、領民に重税を課すでしょう。
若しくは、私のような輸入業で短期的な利益を得て、借金の返済にに充てるか。」
「輸入業で・・・相手は、ウィリプ連合国ですか?」
ジーナが聞いてくる。
「ええ、やり方は簡単です。ウィリプ連合国から奴隷に作らせた安い小麦を輸入し、アズパール王国内で国産の小麦よりも安く売るという手法です。
品質に不足が無ければ、大抵の消費者は少しでも安い方を選んで買いますから、良く売れるでしょうね。
領内産の小麦の流通による税収より、国外からの小麦輸入と廉価販売によって、低い利益率でも2倍から3倍の金額利益が稼げるとなれば、甘い誘惑に逆らえないかもしれませんね。」
武雄が言う。
「・・・タケオさん、それって危うくないですか?」
エリカが考えながら言う。
「ええ、とっても危うい政策です。」
武雄が言うのだった。
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