第3500話 同期会。4(お開きにしますとその後のお疲れさん会。)
酒と話が進み、武雄の同期達は皆が楽しんでいる。
「キタミザト様、お酒が進んでおりませんが?」
「新しいのを作りますか?」
ブルックとフォレットが声を掛けてくる。
「・・・ええ・・・お願いします。」
「何か、気になる事でもあるんですか?」
フォレットが聞いてくる。
「皆、楽しそうで良かったなぁと。
家の事とか、仕事の事とか、色々話せたなぁと。」
「まぁ、同じ立場や近い立場で気安く話せる相手は少ないですし、皆も気を許しているのでしょう。」
ブルックが言ってくる。
「・・・口が滑らかになっていると良いですけどね。」
武雄が言う。
「今は何を話しているんでしょうかね?」
ブルックが聞く。
「皆・・・日頃の鬱憤を晴らせていれば良いんですけどね。」
「キタミザト様は、鬱憤を晴らせましたか?」
「・・・私は、ここに鬱憤を持ち込んではいませんのでね。
吐き出す物なんて、ありませんよ。」
「え?そうなんですか?」
「はい、先日、陛下の所で吐き出してきました。」
「「あぁ・・・」」
ブルックとフォレットが察する。
その時、店の玄関が開いて、入ってきた者達が武雄達の元にやってくる。
「ご主人様、お迎えに上がりました。」
ジーナを先頭に、お付き達が揃って迎えに来たのだった。
「はい、お迎えご苦労様です。
皆さん、楽しい時間は終わりの様です。」
武雄が皆に言う。
「そのようですね。」
「たまにはこういうのも良いですね。」
「また、折を見て集まりましょう。」
皆が名残りを惜しみながら、帰り支度を始めるのだった。
・・
・
武雄を残し、同期達が居なくなった店内。
武雄は会費を徴収すると、残りは自分が払っておくと言って皆を見送った後、ラックと店の女性隊員達とのお疲れさん会に、ジーナと共に参加していた。
「はい、今日はありがとうございました。」
武雄は、ワインが入ったグラスを軽く掲げながら、労いの声を掛ける。
「「「「お疲れ様です。」」」」
「頂きます。」
皆の前には、今日中に処分が必要なつまみが並べられていた。
「なーんか、今日のような飲み会を、皆が王都に集まる度に開きそうですね。」
「それも良いんじゃないですか?
私達としても貴族の接客訓練になりますし、キタミザト殿達なら変な事にならないとわかっていますから。
次の機会には、新人の娘も連れてきますよ。」
女性が言う。
「まぁ、今の所、私達は浮き名を流してはいないですからね。
多少の粗相はしても、笑って流せる人達のようですし、
それに、私とアルダーソン殿とバビントン殿は、普段は地方に居るから、同期達と交流出来る飲み会は歓迎ですけど。
貴族会議の人達は、日頃からこういった店には足を運ばないんですかね?」
武雄が誰ともなしに聞く。
「他の店を利用していますね。
派閥毎に贔屓の店があるんですが、そういった店には中々新規の従業員が入れないんですよ。
この娘達を訓練して、潜入のような事も試みていますが・・・」
ラックが言う。
「繋がりのありそうな店には接触出来るんですけど、そこから先に入り込むのが難しい感じですね。
紹介状が必要という感じでもないんです。」
「酒等の卸業者の方からもアプローチしてみたんですけど、店主が直接納品していて、他人が代行したり他者が同行したりは出来ないんです。」
女性達が言ってくる。
「なるほどね。
まぁ、今回の会話以上に、自由に話をしているのかもしれませんね。」
武雄が言う。
「そこを調べるのが私達の役割なんですが・・・まぁ、それはこっちの仕事です。」
ラックが言う。
「そうですね。
まぁ、仲間や派閥の人間以外には知られたくない事も多いでしょうしね。」
武雄が頷く。
「キタミザト殿も、他人に知られたくない事はありますか?」
「プライベートな事はちょっと・・・」
「それは当たり前ですけど、政治関係の事は?」
「うーん・・・知られたくないというか、まだ報告できない事が多いですかね?
政策関係については、私の部下達にも『私に内緒で上に報告しても構わない』と、以前から伝えてますよ?
なのに、部下達は探ろうとしてくれないんですよね。
ラックさん、元お宅の部下達なんですけど、あまり政策関係に首ツッコんできませんよ。
大丈夫なんですか?」
武雄がラックに問いかける。
「それは、キタミザト殿が秘密にしようとしないから探る気にならないのでは?
秘密にされるから、知りたくなるのです。
コソコソと秘密にされるから、陛下や王城も『暴いてこい』という命令を出すんですよ。」
ラックが言う。
「・・・うーん・・・ブルックさん、そうなんですか?」
武雄が、ブルックに尋ねる。
「まぁ、そうでしょうね。
私は、割と所長に付いている機会も多く、要職の方々との会談の議事録も作りますが・・・あんなの、私の口から報告したくないです。
それも、所長に内緒でですよね?・・・あり得ません。
それに、所長はそういった事は陛下に直接報告するのを知っていますから、私からは報告書でさらりと触れるだけです。
所長、今後も陛下に直接してくださいね!」
ブルックが言う。
「うーん・・・ああいった話は、陛下や王城に投げないと私達が忙しくなりますからね。
外交的な対応は、さっさと王城に投げるのが一番と思っています。
私が、自分からしたいと思うのは領内関係の事なので、エルヴィスさんと話せば良いだけですからね。
陛下や王城に説明していない事は、現在進行形でこっちの利になるように動いている案件で、今王城の介入があると頓挫しかねないものばかりなのでね・・・
ま、ラックさん、私の隠している事を暴いても良いですけど、その分、国内が色々と大変になる覚悟を持って探ってください。」
武雄がにこやかに言う。
「大丈夫です、陛下も私達もキタミザト殿を信用して、報告出来る時に報告頂ければ良いとおもっていますから。」
ラックが言うのだった。
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