第3499話 同期会。3(バビントンを盛り上げよう。)
「やる事はわかったが・・・キタミザト殿、噂を広めるにも準備が必要だと思うが、何をすれば?」
アルダーソンが聞いてくる。
皆も、同期の窮状を何とかしたいと真剣に聞いている。
「そうですね・・・噂を流す前に、先ずアドラム子爵領の税率を調べないといけないですね。
バビントン殿の領地が、アドラム子爵領を下回る税率になっているか確認して、必要なら税率を引き下げないといけません。
そもそも、移住先の税率が高ければ誰も移住する気になりません。」
武雄が言う。
「それは、確かに相手の税率を調査しないと・・・ですが、自領の税率を他家に漏洩してはいけないルールが・・・聞き出すのは難しいかと・・・」
バビントンが難しい顔をする。
「はい、そこで同期の皆さんの協力が必要です。」
武雄は、王都の同期貴族達を見回す。
「「「「手伝いますよ。」」」」
皆が声を揃える。
「頼もしい同期です。
財政局、経済局、専売局の資料を漁ってください。
貴族会議のメンバーなのですから、政策の為に勉強をしたいと言えば、局の資料は見れるはずです。
直近の資料の閲覧には制限があるかもしれませんが・・・情勢は大きく変わっていないでしょうから、10年くらい前の物で構いませんから5年分程度を閲覧してください。
小麦の生産量と消費量、備蓄量と流通量・・・ありとあらゆる小麦関連の情報を集め、アドラム子爵領の税率を割り出してください。
農業人口と小麦の総生産力、その年の小麦の流通価格、財政局への小麦の納入量、周辺領の小麦の生産高もわかれば良いでしょう。」
「「「「わかりました。」」」」
王都の同期達が頷く。
「アルダーソン殿、バビントン殿に融資しませんか?」
「え?」
「融資ですか?」
バビントンが驚くが、アルダーソンは真面目顔で聞き返す。
「はい、私の場合、嫁の実家であるエルヴィス家が領主です。
バビントン殿とアルダーソン殿の状況と、似てますよね。
同じ街、領内に2貴族が居る場合、それぞれの貴族からの融資を受けた業者がいると、領主の意向に背いたり、いがみ合う可能性があるので個々が融資をするのを控えるべきだと私は思っています。
なので、私は・・・街や領地の開発に関しては、エルヴィス家に融資して、間接的に領地の発展に関与する様にしています。」
「口は出さずに、金を出す・・・ふーむ・・・」
武雄の言葉を、アルダーソンが考える。
「口は出さないというよりも、領地開発用の資金を貸し付けている関係上、エルヴィス家は私に領地開発の進捗報告や、開発についての相談をしてきます。
そこで、こちらの要望を伝えて、政策に反映して貰っています。
アルダーソン家もしくは研究所で欲しい施設や資材があれば、領地開発に反映をしてくれるでしょうし、必要な工房や商店があれば、バビントン家も力を入れて拡大させてくれるでしょう。
ですよね?バビントン殿?」
「ええ、アルダーソン殿が必要なら優先的に対処していきます。」
武雄の言葉に、バビントンが頷く。
「資金を貸し付けて、欲しい物に便宜を図って貰うですか・・・ふむ・・・
バビントン殿、後で詳しく打ち合わせしましょう。」
「ええ。」
アルダーソンとバビントンが頷く。
「あ、ボールド殿、キタミザト家とエルヴィス家の取扱商品を一手に担って卸業をして貰う話ですが、あの話は忘れてください。」
「えっ?無しですか?」
ボールドが聞き返してくる。
「ええ、王都で新規に開業するのは色々難しそうなので、顔見知りの店に、お抱えの卸業者になる気はないかと打診したんですが、断られました。
『うちは、特定貴族家の傘下には入りませんよ』と言われました。
ですが、逆に『特定貴族の紐付きにならないという事は、何処かの貴族から圧力を受けても阿る必要がないですから、誰とでも適正価格で取引させて頂きます』という心強い言葉を貰えたので、学院の購買活動では普段からその店に見積を依頼してください。
あ、ちなみに、お抱えにはなりませんでしたけど、その店にキタミザト家とエルヴィス家の商品を一手に担って貰うかもしれません。」
武雄が言う。
「なるほど・・・素人の私が卸業を経営するよりも、既存店に任せる方が良いという判断になったのですね。
それならば、何処かの貴族家から嫌がらせや圧力があった場合でも、学院として購入先が確保出来るのですから、私は構いません。」
ボールドが言う。
「ええ、普段からの購買活動において見積依頼を出し、安ければ買うという実績を積み重ねておいてください。
店の名前と場所は、後でお教えしますね。」
武雄が言う。
「ええ、お願いします。」
ボールドが言う。
「そういえば、皆さんが王都に来る少し前から警備局の人間が随分と街中を増えているように感じましたね。」
「うん?それは感じていたが、全貴族が召集されるのだから当然なのでは?」
「それはそうですが・・・何と言うか・・・場所の警備というより、街中の調査をしていたように感じたんですよ。
通りを歩きながら、家や部屋の確認をしているような・・・」
「ふーん、でも警備局ならそういった事も常に把握していないといけないのでは?
何か事件があると踏み込む事もあるでしょうし。」
「そう言われると、そうなんですけどね。」
王都の同期達が話している。
「キタミザト殿、どう思いますか?」
バッセルが聞いてくる。
「・・・『普通の仕事中かな』と思う程度ですかね。
何かあれば言ってくるでしょうし、細かい事を気にし出したら切りがありませんからね。」
武雄が言うのだった。
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