第3498話 同期会。2(狙うはアドラム子爵領。)
「「「「金貨1枚!????」」」」
白き妖精を飲んだ後、ラックから販売価格を聞いて、皆が驚いていた。
「ま、まぁ・・・王都で取り扱うのがこの店だけで、毎月限定された本数しか入荷しないとなれば・・・」
「ワインの販売はボトルですが・・・5人で飲んだとして、1人頭が銀貨2枚、うーん・・・」
「皆さん、店と私の売り上げに関わるので、積極的に上客が来るように宣伝してくださいね。」
武雄が言う。
「上客の紹介なんて無理ですよ。
雑談の話題にするぐらいですね。」
「まぁ、話をするとしたら、相手は貴族会議の方達ですかね?
『高価で希少なワインを飲んだ』という話はしておきます。」
「気前の良い方でも誘って、奢らせますかね。」
皆が苦笑しながら頷く。
「ふふっ、よろしくお願いします。
さて・・・地図が来ましたね。」
武雄が、皆の前に地図を広げると、皆が地図に注目する。
「先に言っておきます。
これから発言する内容は、基本的に知らない人に言う事を禁止します。
この場に居る時点で拒否はさせませんが・・・まぁ、情報が漏れたとしても・・・困るのは数年後の国家や国民で、下手したら治める領土が少なくなる程度です。」
武雄がさらりと言うが、皆の顔に若干の緊張が走る。
それは同期以外もだったりする。
「さて、バビントン殿とアルダーソン殿の人材不足ですが・・・私が知る限りの情報を元に勘案すると、今後、治安や政情に不安が出そうな領地は・・・ここですね。」
武雄は、地図のある地域を指す。
「そこは・・・ウィリプ連合国との国境付近・・・アドラム子爵領・・・」
王都の同期が言う。
皆が、息を呑んで地図を見つめる。
「今日の騒動も・・・、多少関係があるかもしれませんが、その件を除いてもを此処だと思っています。
既に知っている方も多いでしょうが、現在ウィリプ連合国との雲行きがあまりよろしくありません。」
武雄が言う。
「キタミザト殿、それは・・・小耳に挟んだのですが、ウィリプ連合国との間で紛争が起きるという事ですか?」
王都の同期が聞いてくる。
「現状は、現在外交局と軍務局が情報収集に躍起になっているという所ですね。
ですが・・・報告を聞いた限りでは、残念ながら笑い話で終わりそうな状況ではありません。」
武雄が言う。
「そうですか・・・戦争になるのですか?」
「現時点では、実施の判断が出来る態勢が整っていません。
それに、その判断は適切な時期に陛下がされるでしょう。
・・・今の段階では、どちらにも転びますよ。」
武雄が言う。
皆が考える。
「さて、アドラム子爵領ですが・・・今回、私達に対する賠償金の支払いで、王城からかなり高額な借金をしました。
何年で返済するかは聞いていませんが・・・毎年、国に納める税金以上の支払いが発生します。
領主が何らかの副業をしていたとしても、足りなければ増税が実施されるでしょう。最悪は、借金返済の大半が税金で賄われる可能性すら有ります。
しわ寄せが領民にいく・・・というのが私の予想です。
領主のバビントン殿、如何思われますか?」
「王城に借金をですか・・・アドラム殿の副業がわからないが、増税で賄うでしょうね。」
バビントンが言う。
「となると、今より税が重くなる訳で、
当然、領民の不満が高まります。
この機を逃す手はありません。
不満や不安を抱えた領民は、本能的に、安心で安全な他所の領地への移住に前向きになります。
まぁ、当然の心理です。
ですが、領民達は、他領の政策や税率を見聞き出来る術を持ちません。
なので、普通なら税率を上げられたとしても甘んじて受け入れてしまうでしょう。
他領の状況を知る事が出来るのは、領外取引のある大きな商店や、文官といった一部の人達です。
そういう人達は、農家や工房にはそういう情報を渡さないでしょう。
自分達の食い扶持である領民に、悪影響を与える行為ですからね。」
武雄が言う。
「それは・・・まぁ・・・わかります。」
王都の同期が頷く。
「ふむ・・・キタミザト殿は、おそらくは増税が実施されるアドラム子爵領で、引き抜きを行えと?」
バッセルが聞く。
「・・・今より待遇が良い土地の情報を渡すだけですよ。
『新興貴族の領地は、税率がこの程度なんだってさ。』という噂を流すだけですよ。
引き抜きだの、斡旋だのといわれるのは心外ですね。
『来てください』とは一言も言いませんよ。
来るかどうかの判断は領民自身がする事ですし、私が勧誘した訳ではありません。
これなら引き抜きではないですよね?」
武雄がにこやかに言う。
「はぁ・・・ですが、キタミザト殿、それでどのくらい移住すると思いますか?」
バビントンが聞いてくる。
「・・・うーん・・・わかりません。
ダメで元々、試すだけの価値があると思いますし、情報は一度ばら撒かれれば、相手の領地で拡散しますよね。
バビントン殿が、自分の領地に重税を課したりせず、普通の税率で統治を行っていれば・・・最初は10名も来れば良い方かと。
その後、先に移住した人達の口伝えに噂が確証になり、もしかしたら移住してくる領民が後から増えるかもしれません。」
武雄が言う。
「なるほど・・・すぐに成果が出なくても良いのか・・・」
バビントンが考えながら呟くのだった。
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