第3497話 同期会。1(同期間だと緊張せずに話せますよね。)
王都のラックのお店。
武雄と同期の貴族達が到着し、同期会が始まった。
「では!キタミザト殿!ボールド殿!アルダーソン殿!バビントン殿!
陞爵を祝って!乾杯!」
「「「「「乾杯!」」」」」
バッセルの音頭で、飲み会が始まる。
「侯爵ですって。
キタミザト殿、どうです?」
バッセルが聞いてくる。
「え?欲しいですか?
差し上げますよ?
王都に到着した日の深夜に呼び出されて、陛下の小言を聞いたり、報告をさせられて。
次の日からは、各局長と連日意見を交わす大役を担えますよ。」
「え?そんな役回りは全然羨ましくないので、辞退します。
違いますよ、貴族の最高位になったんですから、
何か感想は?」
バッセルが聞く。
「すっごくいらない。
爵位報酬は欲しいけど、それに伴って陛下の相手をするのが面倒です。
なんで、毎年呼ばれるの?
来年は、爵位の入れ替えがない事を祈ります。」
武雄が真顔で言う。
「キタミザト殿らしい感想ですね。」
「この感想を他の者から聞かされたら訝しがりますが、キタミザト殿ですからね。」
「まったくです。
寧ろ、だからこそ侯爵になったと言うべきでしょうか。」
他の同期達が言う。
「ま、今回は私達同期4人が揃って陞爵。
私達同期は、近年まれにみる豊作の年だったという事ですね。」
他の者が言う。
「まぁ、地方貴族は良いとして、王都の御歴々は表面はにこやかでしたが、内心毒づいている事でしょう。
キタミザト殿を、成り上がり者と思っているような輩も多いですし。」
「私が成り上がりなのは、自分でも思っている事ですから、そこは怒りませんけど。」
武雄が言う。
「まぁ、ここにいる全員が成り上がり者ですしね。
それと、カトランダ帝国側のアシュトン殿もあまり良い顔をしておりませんでしたね。」
バンクスが言う。
「あー、去年の話ですが、子爵になりたての時にアシュトン殿のご子息から、見下した発言をされましたね。
『この成り上がり者がー』ってな感じで。
クリフ殿下も一緒だったので声はかけられませんでしたが、彼は私の事を物凄く目が見下しているんですよ。」
武雄が言う。
「そんな事があったのですか。」
「今年はお付の控室で事件があったそうですね。
キタミザト殿とアルダーソン殿も巻き込まれたようですが。」
「ゴドウィン殿と3人で現場に向かったまま、音沙汰がありませんでしたが、事を荒立てずに済んだのですね。」
同期達が、武雄とアルダーソンに問いかける。
「まぁ・・・そうだな。」
アルダーソンがチラリと目線を送り、武雄がにこやかなのを確認して頷く。
「ま、話し合って示談に合意しましたから、蒸し返す事はありませんよ。
皆さんも、種族関係なく優秀な人材が居たら採用、もしくはご一報を。
キタミザト家は優秀な人材を常に求めています。」
武雄が言う。
「うん、アルダーソン家も常に探しているから、王都で良い人材が居たら、キタミザト殿と同じく教えて下さい。」
アルダーソンが言う。
「バビントン家は、もっと人が居ないので、地方に行っても良いという人がいれば教えて下さい。」
バビントンが言う。
「バビントン殿、そこまで?」
王都の同期が聞く。
「ええ、ほぼ全ての部署で人材が不足しています。
商業は良いとしても、農業に従事してくれる人と、工房で働いてくれる人が足らないですね。
かといって、不足している物を他領から輸入するにしても、値段が高くなってしまいますから、本当に必要な物以外は皆買わない感じですね。
となると、自領で作ろうという人材が出てこなく、寧ろ他領に仕事場を求める動きもあると聞いています。
農業も昨日の今日で成果が出ない物ですし、食料を作り始めている段階なので上手く行く所もあれば、失敗する所もあって、生産量も不安定ですし。
一応、同じ様な気候の領地を参考にして作物を生産しているんですけど、直ぐに成果は出ません。」
バビントンが言う。
「ふむ・・・店長、机に載るくらいの我が国の地図ありますか?」
武雄がラックに聞く。
「今、お持ちします。」
ラックが答える。
「「「失礼します。」」」
「地図が来る前に新しいお酒をお持ちしました。」
女性陣がやってきて、男性陣達の間に座り始める。
武雄の両隣りにはブルックとフォレットが陣取る。
「乾杯も終わったので、新しいお酒を頼みましょうか。」
ボールドが言う。
「ええ、そうですね・・・で、それは炭酸ワインですか?」
王都の同期達が、ワインがグラスに注がれるのを見ながら質問する。
「はい、
キタミザト様との直接契約で、王都では、この店でしか飲めない炭酸ワインです。
『白き妖精』という銘柄で、ブリアーニ王国産、月々20本程度しか入荷しません。」
ブルックが言う。
「キタミザト様のご厚意で、王都ではこの店以外には卸さない事になっています。
これは、王城も含めて例外はありません。」
フォレットが言う。
「え?本当ですか?キタミザト殿?」
ボールドが聞く。
「ええ、王城にも他の貴族にも卸しませんよ。
陛下の圧力にも屈しません。
それに、陛下に卸しても話題作りにはなりませんし。」
武雄が言う。
「いや、なりますから。」
王都の同期が苦笑する。
「なりませんよ。
少なくとも、一般の人に陛下も飲んでいるお酒だと言った所で大した効果があるとは・・・
それに、陛下に飲ませないとこのワインの名が広まらない訳ではないですしね。
エルフが主体のブリアーニ王国で代々作り続けられている、毎年の生産量が数百本限定のワインですよ?
寧ろ陛下が介入してくると、希少なエルフのワインというイメージが崩れるので、絶対に売らないようにしましょうか。」
武雄が言う。
「「「ははは・・・」」」
皆が苦笑するのだった。
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