第3494話 アズパール王達の悪巧み。(監視が上手く行く事を願います。)
スミス達が去ったアズパール王の執務室。
アズパール王、オルコット宰相、王都守備隊総長が居た。
「エイミー達に小言を言われたよ。」
「キタミザト殿の報告を受けて、早々に陞爵を決めましたからね。
急であったのは確かです。」
オルコットが言う。
「まぁ、エイミー殿下方への説明はキタミザト殿にお任せしましょう。」
総長が言う。
「あぁ。」
「そうですね、報告した当人が説明した方が良いでしょう。
私達は功績を評価して、褒賞を与えただけですのでね。」
アズパール王とオルコットが言う。
「さて、今回の授与式では、西側貴族に陞爵という餌が撒けたと思われます。」
総長が言う。
「ふむ・・・エルヴィスの陞爵は予定外だったが、結果的に煽れたな。」
「戦争で著しい戦果をあげるか、領土拡大を成す等の王城が認める功績をあげれば陞爵・・・という事ですが。
まぁ、事実、交渉で領土拡大を成し遂げたのですから、戦争の費用も兵士の人的被害も発生していません。それなら侯爵位もしくは伯爵位は妥当でしょう。」
アズパール王とオルコットが言う。
「キタミザト殿とエルヴィス殿には、皆の羨望の的になってしまいますが・・・それ以上に、自分も陞爵したいという欲が刺激されるでしょう。」
総長が言う。
「カトランダ帝国との『慣例の戦争』で、どの様な動きを見せるのか・・・
東側貴族達の例を見れば、慣例の戦争で総指揮をしたゴドウィン殿ではなく、研究所の試験小隊を率いて目覚ましい戦功をあげたキタミザト殿が陞爵した。
同じく総指揮をしておらぬエルヴィス殿も、慣例の戦争での戦功に加え、外交交渉で領土を拡大させた功績で陞爵した。」
オルコットが言う。
「まぁ・・・カトランダ帝国との慣例の戦争で、目立った戦果をあげようと好き勝手に動く輩が出そうだな。
・・・荒れそうだな。」
アズパール王が言う。
「それを承知でニール殿下は貴族達を御せるのか、アルダーソン殿はそういう輩に戦術を理解させ狙い通りに作戦を実行させられるのか、の試験ですからね。
ニール殿下とアルダーソン殿には、精一杯頑張って貰いましょう。
良し悪しは別として、何かしらの結果が出ます。」
オルコットが言う。
「そうだな。
それで・・・情報漏洩の方はどうなった?」
「そうですね・・・報告では、想定通りに軍務局から書類が持ち出されたようです。
まぁ、王都守備隊等の分析を元に、敢えてこちらの警備を手薄にしているんですから、引っかかって貰わないといけません。」
「手薄な警備の代償が、ゴドウィンの所のお付きへの暴言か・・・いや、ジーナ達も居たとなると・・・想定より大事になってしまったか。
あとで内々に謝っておくとしよう。
で、監視の方の首尾は?」
アズパール王が聞く。
「ええ、相手の狙い通り、授与式をしている時に広間にも控室にも居ない者が発生しましたがね。
まぁ、この者ではなく、別の人間が侵入したようですね。
王都守備隊、第1騎士団、警備局が、授与式後に王城から出て行った者達を追跡しています。」
オルコットが言う。
「ふむ・・・で?総長、どうだ?」
「報告は随時上がって来ていますが・・・向こうも監視の目が付くことを想定して動いているようですね。
王城を出てから、直ぐに王都を離れた者は居ません。
敢えて、監視の目を引き付けている可能性も否定できません。
また、軍務局から持ち出された書類ですが、王城内のトイレで受け渡しをした可能性があります。
我々としては、書類は王城内にあり、高位の方が持っているのではと考えます。
授与式の際に部屋に居た方でしょうか?」
総長が言う。
「ふむ・・・さて、どうするか・・・
オルコット、総長の予想を信じたいが、どう思う?」
「間抜けを装うには、第3計画に移行でしょうか。」
オルコットが言う。
「そうだよな・・・第1計画では、脅威にもならんし間抜けも装えんしな。
・・・・・・よし、第3計画に移行する。
今夜、王城外の監視対象を一斉捜索する!
オルコット、王都守備隊、第1騎士団、警備局宛の命令書を用意してくれ。
終課の鐘・・・21時に、第3皇子一家と王都守備隊総長、第1騎士団長と警備局長を、執務室に集合させてくれ。」
「承知しました。」
オルコットが頷く。
「まぁ・・・このぐらいは騒いで見せんと、欺瞞作戦に真実味を与えられないだろうからな。」
アズパール王が言う。
「掴ませている軍務局の書類も、偽情報ですからね。」
総長が言う。
「・・・タケオが、デムーロ国で接触したウィリプ連合国の諜報員に教えた欺瞞情報を加味しての、偽の報告書だ。
さて・・・ウィリプ連合国は、どう動くかな?」
アズパール王が、思案顔の口元に笑みを浮かべる。
「陛下、悪い顔になっておりますよ。
まぁ、私の予想が当たれば、堂々と書類を持ち出し、予想が外れれば一斉捜索で発見されるのですけどね。
あ、そういえば、今夜はキタミザト殿と同期の貴族方で飲み会でしたね。
飲み会も一斉捜索させますか?」
総長が確認する。
「我らが仕事をしているのに、飲み歩いていて楽しんでいるのは、けしからんが。
まぁ、久々に会った同期会だし、一斉捜索から外しておいてやろう。」
アズパール王が頷くのだった。
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