第3493話 リーザ、王城に立ち寄り。(スミス達はアズパール王と話し合い。)
第八兵舎の王都守備隊総長の執務室。
雑談をしていたら窓からリーザが飛んでくるのが見えたので、ジーナが城門に迎えに行き、連れ帰って来ていた。
「失礼します。
リーザを回収してきました。」
「ぎゅー♪」
ジーナが両手で抱えた大きな木箱の上に、チビリーザが座って手を挙げていた。
「はい、リーザはこっちね。」
ビエラが席を立ってリーザを抱き上げると、元の席に戻る。
「はい、おかえりなさい。
リーザ、どうしたのですか?」
武雄がリーザに聞く。
「ぎゅー。」
リーザは、ビエラに抱き抱えられたまま答える。
「へぇ、主、リーザがアリス様の手紙をブリアーニ様とヴァレーリ様に届けてきたそうです。
ブリアーニ王国で、お二人にお会いしてきたそうです。」
ミアが胸ポケットから顔を出して、リーザの通訳をし始める。
「それはご苦労様でした。
木箱の中身はクロスボウですか?」
「ぎゅ。」
武雄の問いにリーザが頷く。
「木箱の中はクロスボウと、ご主人様とアリス様それぞれへの手紙が入っていますね。
ちなみに、クロスボウは軍務局に依頼された数が入っています。」
ジーナは、武雄の前に手紙を置く。
「わかりました。
クロスボウは、後で軍務局に納品に行きましょう。」
武雄が言う。
「はい、了解です。」
ジーナが頷く。
「リーザ、ダニエラさんとカールラさんは元気そうでしたか?」
「ぎゅ?ぎゅー。」
「・・・お二人とも、主の思惑通りに進んでると言っていたそうですよ?」
「まぁ、そうでしょうね。
金銭的な報奨になるか、叙勲の様な名誉褒章になるのか、何れにせよ何らかの褒美が下賜されるだろうと思っていましが、陞爵になりましたね。
エルヴィスさんにとっては、何が良かったんだか。」
「ぎゅー?」
「主、伯爵様・・・あー、侯爵様が、あまり嬉しそうではなかったようですよ?」
ミアが言う。
「ふむ・・・そうですか。
戻ったら、感想を聞いてみましょう。
リーザは戻るまで、ゆっくりしていきなさい。」
「ぎゅ。」
リーザが頷くのだった。
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アズパール王の執務室。
アズパール王とエイミー、アン、スミスがお茶をしていた。
「驚いたか?」
アズパール王が3人に言う。
「ええ、とても!」
「なぜ、事前に教えて頂けなかったのですか?」
「私、以前に頂いた通知に書いてあったのか考え込んでしまいました。」
スミス、エイミー、アンがアズパール王に言う。
「ははは、すまんな。
タケオが来て、エルヴィスが外交で上げた成果の報告を受けたのでな。
後日改めて陞爵するのも大変なので、前倒しで一緒に陞爵させたんだ。」
アズパール王が言う。
「いや、お爺様、『させたんだ』と言うほど侯爵位は軽い爵位だと思えませんが・・・」
「うん?我と局長達で話し合った結果だ。
まぁ・・・貴族会議には・・・ギリギリで通した感じだが。」
「一応、王城では各方面の了承を得ているのですか。」
「あぁ、出来ている。
それにタケオが侯爵でエルヴィスが伯爵だと、ちと面倒だろう?
家の主の身分が、同居人より格下だとな。」
アズパール王が言う。
「・・・うーん・・・一緒に住んでいるというのが、そもそも異例なんでしょうけども・・・
まぁ、お爺さまの言う事もわかりますが。」
エイミーが頷く。
「でも、スミス、タケオさんとエルヴィスお義爺さまは、爵位の差を気にされるでしょうか?」
アンがスミスに聞く。
「まったく気にしないでしょうね。
爵位を気にしたらアリスお姉様は嫁いでいませんよ。
あの時、タケオ様は平民ですからね?」
スミスが言う。
「ふむ・・・まぁ、それでも世間体は大事だぞ。」
アズパール王が言う。
「それで、お爺さま、エルヴィス殿の陞爵理由が明らかにされていませんが?」
エイミーが、知らない体で問う。
実は、精霊通信で武雄一派の精霊達には概容は伝達されており、契約者達も当然知っている内容である。
「ふむ・・・エイミーとアン、スミスには言っておいた方が良いか。
エルヴィスとタケオは、ブリアーニ王国と交渉した結果、エルヴィス伯爵領に面していた空白地帯について、条件付きではあるが我が国の領有とする合意に至った。
つまり、領土拡大を成し遂げたのだ。
魔王国との慣例の戦争での功労に加え、領土拡大を成し遂げた事を理由に侯爵に陞爵させた。」
「・・・んー・・・陛下、それはいつから現実化するのですか?
『交渉して、合意しました、はい、今日から空白地帯は我が国の物です』とはならないと思うのですが?」
スミスが聞いてくる。
「2月1日からになるな。
我が国からドワーフ王国に通達するし、ブリアーニ王国からもドワーフ王国に通達する予定になっている。
具体的な事は、エルヴィス達が交渉や手続きを進めていくだろう。
国としてはドワーフ王国に通達して終わりだ。」
アズパール王が言う。
「・・・お爺さま達、そんなに簡単に事が済みますか?」
「さてな・・・だが、ドワーフ王国から抗議が来ても『そう決めた』と言って終わりだ。
その後は・・・まぁ、『今まで領有権を主張せず黙って居座っていただけなのに、他国が領有を主張したからといって、今更領有権を主張するんですか?』と言っておけば良い事だ。」
「ドワーフ王国から輸入している鉄鋼材関係がどうなるか・・・」
「そこは経済局等が対応していくし、外交局長も経済局長も了承している。
なんとかなる。」
アズパール王が言うのだった。
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