第3489話 王城内の一角で局長達が会議をしています。(エルヴィス家の評価は上々ですね。)
王城内 財政局の会議室。
財政局長、総監局長、経済局長、外交局長が会議をしている。
「これが、アドラム殿と交わした借入契約と返済計画です。
こっちが、キタミザト殿とゴドウィン殿とアルダーソン殿に、金貨2400枚ずつ支払う送金指示書です。
支払先は、当主3人の冒険者カードの口座になります。」
財政局長が3人に見せる。
「ふむ・・・金貨2400枚ずつ、計金貨7200枚・・・アドラム殿は即決したのですよね?
うーん・・・即決するには、些か高額過ぎる気がしますが・・・」
総監局長が、アドラムの借入契約書を見ながら言う。
「はい、陛下にもお伝えしましたが、財務担当者に確認もせず即決していますので、王城に報告されている収入以外に、隠し資産か副業があるのではないかと私は思います。」
「・・・だが、ある程度大きなお金が動けば、財政局長や私の耳に何かしらの情報が入ってきそうですが・・・
特段、何もないですよね?」
経済局長がが考える。
「はい、ありません。
なので、長年コツコツ貯め込んでいたのか、副業でガッツリ稼げば数年で返済出来ると考えているのか・・・そこがわかりません。」
財政局長が言う。
「アドラム殿の領地は、ウィリプ連合国のファルケ国と隣接しています。
ファルケ国は、ウィリプ連合国内では穏健派だったかと。
まぁ、穏健といっても奴隷の待遇が少々良いだけなんですけどね。
奴隷制度を採用している時点で、我が国とは相容れませんが。
確かな事は、奴隷を使えば生産費用が安い事ですよね。」
外交局長が言う。
「安く仕入れて、高く売る・・・商売の基本ではありますが、それを当主自らが輸出入業をした場合、目先の利益はあっても地元産業へ悪影響が出そうです。」
総監局長が言う。
「確実に影響が出るでしょうね。」
財政局長が頷く。
「普通であれば領内生産に注力し、付加価値を付けて領外に販売しますね。
人気が出れば、増産と拡販で税収を増やして行くでしょう。」
経済局長が言う。
「正しくそれを実践しているのが、エルヴィス殿だな。
土地柄から、元々穀物の生育が悪いせいで他領から買い付ける必要があり、経済収支はギリギリでマイナスにはなっていない現状ではあるが、常に自領を発展させようとしてきた。
そこにキタミザト殿が加入した事で、勢いがついている。
キタミザト殿の着想で商品を開発し、商品の製造や原料生産にエルヴィス殿が積極的に融資している感じだな。」
財政局長が言う。
「先だってエルヴィス殿が来られた際に、少し話をさせて貰いましたが、領地発展の政策について話している時は楽しそうでしたね。」
経済局長が言う。
「それは楽しいだろう。
今までは、商品開発のアイデアも無く、土地開発に回せる予算も少なかったんだ。
そこにキタミザト殿が来て、結果がある程度見える商品を開発してくれただけでなく、販路まで構築してくれた。
ここを勝負所と考えての土地開発であり融資拡大だろう。
それに・・・ここだけの話、キタミザト殿は貴族報酬と爵位報酬に加えて臨時で得た収入を、領地開発資金としてエルヴィス家に融資しているそうだ。」
財政局長が言う。
「たしかに・・・一気にまとまった金額が入れば使いたくなるというものでしょう。
キタミザト殿は、領地発展を最優先に考えた資産運用をしているのですね。」
外交局長が言う。
「なんともまぁ・・・エルヴィス殿にしたら良い孫婿が来たという事でしょうか。
今回、陞爵したエルヴィス殿にも爵位報酬が増える分だけ少し余裕が出来るでしょうかね。
エルヴィス侯爵領が発展すると良いのですが。」
総監局長が言う。
「そうですね。
はぁ・・・アドラム殿とエルヴィス殿、王城が過度の肩入れをしてはいけないとはいえ、応援したくなるのはエルヴィス殿の方なのは・・・致し方ないですかね?」
「はは、どちらが将来にわたって国の為になるかと考えれば自ずと・・・ですね。」
外交局長と経済局長が、苦笑しながら言う。
「我々は、エルヴィス殿の手腕に期待して、良い報告を待ちましょう。
さて、アドラム殿の方の問題に戻ります。
先も話しましたが、現在、アドラム殿は王城に借金をしている状態です。
返済期間は4年。
ただし、過去の収支報告および納税関係の書類から予想するに、やり繰りすれば何とか返済可能と思われます。
ですが・・・ウィリプ連合国との戦争の話をまだ知らない現段階で、急いで返済しないといけない訳でもないのに、4年という比較的短期間での返済を申し出てきました。
尚且つ、アドラム殿は財務担当の文官を連れて来て居ないのに、返済期間を即決しました。」
財政局長が言う。
「ふむ・・・外交局としては、ウィリプ連合国のファルケ国にある3か所の潜入拠点の内、 軍務局と王都守備隊が潜入している拠点を使い、物流の監視を始めるように依頼しようと思います。」
外交局長が言う。
「経済局としては、アドラム子爵領および周辺への物流監視を・・・といっても市場価格調査の頻度を高めて、物の流れを把握しておきます。」
経済局長が言う。
「ふむ、外交局、経済局、共に動いてください。
魔王国側の情勢が安定し始めましたが、カトランダ帝国とウィリプ連合国の動きを見逃さないように引き続き注意していきましょう。
それと財政局長、例の金貨移動案ですが、内々の処理事項という事になりそうです。
貴族会議にも局長会議にもかけない形で実施です。
準備を始めてください。」
総監局長が財政局長に言う。
「前にキタミザト殿に指摘された案件ですね。
とうとう許可がおりますか。」
財政局長が言う。
「ええ、大々的には実行しませんが、現在、王都守備隊員がウィリプ連合国に潜入していますので、少しずつ彼方の冒険者組合で金貨を下ろし、我が国に持ってくる・・・ウィリプ連合国の保有金貨量を下げる試みを始めます。」
「わかりました。
準備を始めます。」
総監局長の言葉に財政局長が頷くのだった。
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