第3479話 各控室はというと。(あ、珍しい2人が来たようです。)
アズパール王国 王城内の貴族達の控室。
武雄とエリカは扉の前に到着するも、室内には入らず窓から外を眺めている。
「・・・あの、キタミザト殿・・・そこに立ち止まっておられると、こちらが緊張するのですが。」
扉前に控えて居た執事が、張り詰めた雰囲気に耐えかねて、武雄に声を掛けて来る。
「んー・・・ここから見る景色も良い物ですね。」
「この景色を見るのも、最後になるかもしれませんねぇ。」
武雄の言葉に続けて、エリカが物騒な言葉を紡ぐ。
「エリカ殿、恐ろしい事を言わないで頂きたいのですが・・・大丈夫です。
室内には、キタミザト殿と同期の貴族の方々も居られますし、東側貴族の方々も席に着いて歓談されておいでです。
貴族の入室はキタミザト殿が最後です。」
執事が言う。
「え?それって、皆の注目を浴びろという事ですか?」
「はい、そのぐらいは、お願いします。
とはいえ、入室したら直ぐに、懇意にされている方々に合流して頂いても構いません。」
「クラーク伯爵殿は?」
「一番最初に入られて、皆を出迎える役をして頂いております。」
「はぁ・・・なら、前回同様、クラーク伯爵と一緒に挨拶回りをする流れでしょうね。
エリカ、笑顔でお願いします。」
「はい、その辺りは問題ありません。
あ、そうだ、王族の方々は?
ウィリアム殿下達も用意はしていましたが。」
「陛下は来られませんが、クリフ殿下とアン殿下、ニール殿下とエイミー殿下、ウィリアム殿下とアルマ殿下、レイラ殿下は後程、此方に参られます。
予定では・・・後30分程でしょうか。」
執事が言う。
「30分以内で、皆に挨拶ですか。」
「はい、お願いします。
クラーク殿が段取りをしているでしょう。
お覚悟を!」
執事が言う。
「仕方ない・・・入りますか。」
「ですね。」
乗り気にならない武雄とエリカが、控室に入るのだった。
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王城内、貴族当主のお付き達の控室。
見知らぬ者同士が挨拶するでもなく、顔見知りが集まって話をしていた。
ジーナの近くにはドネリー、コンティーニ、ヴィートが居る。
ちなみにテンプル家、バビントン家、バッセル家のお付きは、ジーナに挨拶をした後、離れて話している。
「へぇ、キタミザト殿の会議は1日に3つですか。
思ったより少ないですね。」
ドネリーがジーナに言う。
「内容の濃い会議が連続しますから、書記をしていると気が抜けません。
アルダーソン殿の会議は如何でした?」
ジーナが言い、コンティーニに聞く。
「昨日が大変でした。
陛下の執務室でずっと会議をしていたんですが、途中から会議室に場所を移して、また会議です。
・・・こんなにも会議が続くのかと思いました。」
コンティーニが言う。
「ご苦労様です。
成果はあったのですか?」
「あるような、ないような・・・持ち帰る内容も多かったですが。
どちらかというと、王城の各局が大変ではないかと。
所長の方は、後で回って来る報告書を読んで判断する事になるだろうと思います。」
コンティーニが言う。
「なるほど・・・議論をして、王城で対応している最中という事ですね。
ドネリー様、エイミー殿下方はどうされていますか?」
「王立学院で勉学に励んでおります。」
ドネリーが言う。
ちなみに、メイド達が目配せをしながら、魔王国側貴族以外のお付きがジーナ達に近づかないように、あちらで席を立ちそうになれば声をかけ、こちらで飲み物がなくなれば声をかけ、常に意識を逸らし続けている。
おかげで、今の所ジーナ達に近づいて何かをする者は居ない。
その時、扉が開いて後ろに2人の子供を連れたメイド長が入室してくると、
ジーナ達を見つけて近寄ってくる。
ジーナ、ヴィート、ドネリー、コンティーニが立ち上がり出迎える。
「ジーナ殿、歓談中申し訳ありません。」
ジーナのもとに、メイド長がやってくる。
「はい、メイド長様。
何事でしょうか。」
ジーナが答える。
「はい、実は迷子の従者を見つけまして。
皆様に縁の者の様でしたので、こちらにお連れしました。」
メイドが連れている2人に目をやる。
「・・・・・・うん?」
ジーナはメイド長が連れている2人を知らないのだが、ふと見れば、ヴィートが驚いた顔をしているのに気が付く。
「まずは・・・そうですね。
お二人とも名乗りを、自分の所属とお名前をお願いします。」
メイド長が促す。
「は、はい!
ゴドウィン家所属 ラウレッタと申します。」
「同じく、マヌエルと申します。」
ラウレッタとマヌエルが緊張しながら言う。
「ゴドウィン家の。
ヴィート、知り合いですか?」
ジーナが問う。
「はい、ジーナ様。
私と一緒に、キタミザト様に助けられた者達です。」
ヴィートが答える。
「あぁ、なるほど。
メイド長様、この2人は私共で預かりますのでご安心ください。
それと、迷っているところにお声掛け下さり、ありがとうございました。」
「良いのですよ、ジーナ殿。
では、私はこれにて。」
メイド長が礼をして退出していく。
「「お席をご用意いたしました。」」
室内に居た王城のメイド達が、2人に椅子を持ってくる。
「流石、早いですね。」
ドネリーが言う。
「はい、流石です。
まずは座りましょうか。
座ってから、自己紹介をしましょう。」
ジーナが、ラウレッタとマヌエルに声を掛けるのだった。
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