第3478話 439日目 エルヴィス家の朝食。(ビエラが戻ってきたようですよ。)
エルヴィス伯爵邸の食堂。
エルヴィス爺さんやアリス達が朝食を取っていた。
「ふむ、今日のジャムも美味しいのぉ。
今日から、この街以外のジャムを日替わりで食べ比べるという話だったが、味の違いがあって良い物じゃの。」
「昨日聞いた予定では、今日のジャムは南町のでしたよね?
やはり南町の方が少し温暖なので、作物の生育が良いのでしょうか?
味が濃いというか・・・煮詰める果肉の量が多い気がします・・・」
アリスが、南町のジャムを味わいながら言う。
「うむ、アリスの考えが正しければ、果肉たっぷりのジャムに加工するだけの収穫量があるという事じゃの。
今後は、各町の特色を出したジャムの生産を増やしていきたいのぅ。
そういえば、北町の方に、生産量が少なく確保が難しいジャムがあると言っておったの。」
「あ、伯爵。
それ、タケオがローに買い付けを依頼したって言ってた。
手に入り辛いって言ってたやつで、キイチゴのジャムだよ。」
コノハが言う。
「ふむ・・・料理にかける予算じゃが、少しだけ余裕が出てきたしの。
浮いた費用で、他所のジャムを取り寄せてみたわけじゃが。
手に入り辛いジャムは、価格が高そうじゃの。
色々食べ比べてみたいが、あまり高いジャムは・・・のう。」
「お爺様・・・流石にジャム1個程度の費用は何とでもなるでしょう。」
アリスが呆れながら言う。
「そうなんじゃがのぅ。
輸送費も含めての購入価格になるじゃろ?
手に入り難いジャム1個の為に、輸送費を掛けて取り寄せるとなると・・・この街産のジャムの3倍以上の価格になるのは何とものぉ。」
「そこは、浮いた費用を上手くやりくりして買わないと。
少し前までは僅かな余裕すら無くて買えなかった物です、ここは少し奮発してでも買いましょう。」
エルヴィス爺さんにアリスが言う。
「ううむ・・・」
エルヴィス爺さんが悩む。
「はぁ・・・領地持ち伯爵家の食卓事情とは、とても思えないわね。」
コノハが難しい顔をしながら言う。
「そうはいってものぉ・・・毎年の予算は決まっておるからのぅ。
今は、タケオが留守だからこうじゃが、居たら居たでまた新しいメニューを作ると言い出すじゃろうから・・・浮かせた予算を少しは貯めておきたいと思うんじゃよ。」
「ん-・・・伯爵の言う事もわかるけど、むしろその希少なジャムを手に入れて、美味しかったら増産させる方法を考えても良いんじゃない?」
「うーむ・・・増産は、北町からの融資の要求が来ないと始まらんのじゃが・・・」
「元々が、タケオが食べたいから珍しい物を買って、エルヴィス家の食卓に並んだだけじゃないの?
そもそも、タケオがエルヴィス家に納入するように指示した訳ではないだろうし。」
「・・・・・・ううむ・・・あまりタケオの好意に甘えてばかりおられぬが・・・そこは頼らせて貰おうかの?」
「うんうん、それが良いよ。
美味しかったら、次の注文からエルヴィス家が購入すればいいんだよ。」
「うむ、そこは承知しておる。
何とかして、次年度予算を増やさねばの。」
エルヴィス爺さんが頷く。
「おや?・・・今、ホワイトドラゴンが飛んでいきましたね。」
アリスが窓の外を見ながら言う。
「ドラゴン便・・・昨日の今日だけど、
王都で何かあったのかな?」
コノハが言う。
「わかりませんが・・・」
アリスが首を傾げるのと同時に扉がノックされ、伯爵が許可を出すと。
ルフィナとカーティアが入ってくる。
「「失礼します。」」
「ビエラちゃんが戻ってきましたね。」
アリスが言う。
「はい、ホワイトドラゴンが屋敷上空を通過していきました。
時雨様より連絡があり次第、お迎えに上がろうと思い、アリス様の許可を貰いに来ました。」
ルフィナが言う。
「ええ、迎えに行ってあげてください。
行き帰りに注意してくださいね。
私達は、食事を済ませて客間でビエラちゃんを待ちます。」
「畏まりました。
失礼します。」
ルフィナとカーティアが退出していく。
「タケオが何かしたかの?」
「昨日の予定は、王城の各局と会議でしたが。」
「ふむ・・・・・・まぁ、昨日連絡せずに今朝の連絡に回したなら、緊急ではないが早目に連絡を取りたかったのじゃろう。」
「お爺さまは、そう思われるのですね。」
「仮に、昨日タケオがどこかと武力衝突したとかなら、ビエラ殿はタケオの警護に就くから戻ってこないじゃろう。
朝一で戻ったのは、何かしら早目の対応か報告が必要だったとわしは思うの。」
「なるほど。
そう言えばお爺様、昼前の封密命令開封時は客間ですよね?」
「うむ、そう思っておるよ。
あとでフレデリックとヴィクターに確認の連絡を入れておこうかの。
・・・ま、封密命令という時点で、あまり気乗りはしないがの。」
エルヴィス爺さんが、面倒臭そうに言う。
「前回は人事関係でしたが・・・今回もでしょうか?」
「それ以外にないじゃろう・・・はぁ・・・タケオ、王城で何を話したんだか・・・」
エルヴィス爺さんがため息をつく。
「お爺様、封密命令の中身を知っているのですか?」
「知るわけないの。
それはアリスが開けて確認する物だからの。
わしは予想をしておるだけじゃが・・・はぁ・・・面倒じゃ。」
エルヴィス爺さんが重いため息をつくのだった。
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