第3476話 丸型焼きの試食をしよう。(キタミザト家と第3皇子一家でメイドの取り合いだ。)
王都守備隊 第八兵舎内 武雄とエリカに割り振られた貴賓室。
武雄とエリカ、ジーナとビエラが居り、パナ、ペイトー、パラスらの精霊達も人間大になって丸型焼きを食べていた。
「ふむ・・・冷めてしまっていますが、十分に美味しいですね。」
「ふわふわな生地の中に、甘い餡子なんて・・・よく考えつきましたね。
これなら、殆ど手を汚さずに食べられます。
皆が美味しいそうに食べているのを見ると、これが凄い物だと実感します。」
エリカがジーナ達を見ながら言う。
「美味しいですぅ♪」
「ねー♪」
ジーナとビエラが満面の笑みで食べている。
「ふむ、餡子を使ったお菓子という事は、エルヴィス伯爵邸のみで提供されるのですね。」
パナが言う。
「ほんと・・なんで日本人はこうも美味しい物を次々と・・・」
ペイトーが呆れながら食べている。
「コノハじゃないけど、美味しいの探求は楽しいね。」
パラスが言う。
「ふむ、これは商品化出来ますかね?
エリカ、ジーナ、意見は?」
「「絶対売れます!」」
2人が言う。
「では、決定っと。
とはいえ、中身を餡子以外で商品化する必要がありますが・・・
カスタードクリームを作るには、バニラエッセンスが無いしなぁ。
何か具材を考えないといけませんね。」
「うーん、餡子と同じような甘い物ですよね?」
エリカが聞いて来る。
「甘い物に限らず、塩辛い物も合うかもしれませんよ。」
「塩辛い物・・・ベーコンとか?」
「ベーコンをどう調理するかの検討は必要ですが、それもありでしょうね。」
武雄が言う。
「エルヴィス伯爵邸に帰ってから、皆の考えを聞くはどうでしょうか?」
エリカが言う。
「ジーナ、何か思い付く?」
ビエラがジーナに聞く。
「うーん・・・私ではなんとも・・・
でも、この生地と甘い物の相性が良いのは既に分かっていますから、ジャムとかは良いかもしれませんね?」
「ジャムかぁ・・・食べてみたいね!」
ジーナの提案にビエラが頷く。
「それも帰ってから試してみましょう。」
武雄が言うのだった。
「ところでタケオさん、さっきのメイド方との歓談ですけど。」
エリカが聞いてくる。
「何ですか?」
「結婚退職した王城メイド達の再就職について。
彼女達、第3皇子一家領の端の町に作る宿で雇用出来ないでしょうかね?」
エリカが聞いてくる。
「うーん・・・王都の生活基盤を捨てて地方に移住するというのは、相当に負荷がかかるものです。
金銭面、将来性、治安、住み心地・・・何かしら魅力がないとね。
『働く場所を用意しましたから後をお願いします』では採用出来ませんよ。
私の場合は、王城メイドさんの転職先としてキタミザト家直営の宿、賄い料理も最上級でエルヴィス家に準拠、東町という小規模でも長年維持されてきた町で、観光開発によって今後は人間種以外の来訪も増えそうな将来性のある土地です。」
「そうでしたね。
第3皇子一家が用意する宿の場所は、エルヴィス伯爵領とゴドウィン伯爵領との街道に繋がる町であり、必然的に物流と人流が絶えない土地になると思います。
そんな場所で、異国情緒ある高級な宿を経営する事になっています。
建前としては、物流の要衝として領主が目を光らせるので町の治安も問題ないかと。まぁ、裏の事情として、駐在する魔王国兵の監視もありますしね。
街道に出没する魔物の討伐等は、冒険者やタケオさんに紹介して貰う魔王国の方達に依頼を出します。
基本的には物流が盛んな土地になるので、物が不足するといった事にはならないかと。
宿の料理人は・・・第3皇子一家から派遣とします。」
エリカが考えながら言う。
「ふむ・・・エルヴィス伯爵領の東町より条件が良さそうですね。」
武雄が腕を組んで考えながら言う。
「とはいえ、どちらも王都から離れていて領都ではない。夫婦で移住なら旦那の転職先も用意する必要があるというのが不安材料ですよね。旦那さんも一緒に宿で働いてくれるなら簡単かもしれませんけど。
確かに、夫婦での地方移住が前提では、王城のメイドから転職してくれる人が居るかどうか・・・」
エリカも腕を組んで考える。
「ご主人様、エリカ様、とりあえず総監局のメイド控室に今の条件を書いて、募集をしてみるのはいかがでしょう?もしかしたら、独身のメイドで地方移住に抵抗が無い方がいるかもしれません。
エルヴィス家の方は、まだ計画段階だから、計画を一から考える人材の募集とし、第3皇子一家の方は、建物が出来ているので、従業員の募集とします。
第3皇子一家の方は、王城メイドの転職なら、ある程度の役職に就けると言えば良いのではないでしょうか?」
ジーナが言う。
「そうですね。
第3皇子一家の宿で募集要項をまとめ、求人を出します。」
エリカが言う。
「えーっと・・・ジーナ。」
「はい、エルヴィス伯爵領で東町の観光開発計画に携わる人材という求人書類を私が作ります。
ご主人様、今の所、あくまでキタミザト家が雇用して、観光開発の計画が進んだら、将来的にはキタミザト家が経営する宿に勤務するという事ですね?」
ジーナが確認してくる。
「ええ、ですが、計画段階なので、まずは宿の出店計画を一緒に考えてくれる1、2名が欲しいと。
そして、もし宿の計画がダメになっても、キタミザト家が雇用を守る代わりに『何らかの仕事をして貰う』という事も。」
「畏まりました。
という事は、キタミザト家の新規部署立ち上げですね。
・・・ビエラ、明日で良いので一旦、エルヴィス伯爵邸に書類を提出しに行ってくれますか?」
「良いよー。
何かあるの?」
「はい、ご主人様と各局長との会談内容、今日のメイド方との歓談内容の報告書を送ります。
アリス様に確認頂き、伯爵様とお父さまに伝達して頂ければと。」
ジーナが言う。
「あー、それとジーナ、ヴィクターに『ブリアーニ王国のクロスボウを先行して10張輸入して欲しい』という一文を入れて置いてください。」
武雄が言う。
「はい、わかりました。
なので、明日の早朝に出発して、届けたら直ぐに戻ってきてください。
明日はご主人様の授与式ですので、朝の9時半までに戻ってきてください。」
「はーい、わかった。」
ビエラが頷くのだった。
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