第3473話 スミスの家令候補は、どうするか。(メイドさん方の再就職先は?)
王立学院から寄宿舎への帰り路。
スミスとエイミー、ヴィートとドネリーが歩いていた。
「・・・アンのお付き問題が懸案事項になっていて、王城のメイド長からタケオさんに問い合わせが行くとは・・・うーむ・・・」
エイミーが考えながら歩いている。
「パナ殿から問い合わせが来ましたけど、当事者のアンはどうするつもりなんでしょうか?」
スミスがエイミーに聞く。
「わからないわね。
パナ殿からの問い合わせはアウクソー殿も聞いているから、アン本人にも伝わっているでしょうけど・・・アル、何か言ってきた?」
「エイミー、アウクソーからは何も返答はないですね。
検討中としか言われていないです。」
チビアルがエイミーに言う。
「ふむ・・・今日、明日で決めなければならない事ではないし、わざわざ外野の多い時期に選定する必要もないわね。
授与式が終わって、参列した貴族達が領地に戻ってからゆっくり考えようか。」
エイミーが頷く。
「そうですね。
それに、アンのお付きも大事ですけど、僕の代の家令候補も探さないといけないですよね。」
「スミスの場合は、それこそ今すぐではないけれど代替わり迄には決めたいわね。それに、不都合があれば更迭するんだから、代わりの家令候補は常に探し続けなければならないからね。
最初は良くても、増長して私利私欲に走るかもしれないし、逆に今は能力不足かもしれないけど、将来的に凄く成長するかもしれない。
同年代の家令だからこその良い部分もあるし、悪い部分もある。
その時々で適切な評価をしながら、家令を続けさせるか、辞めさせるか判断するしかないわ。
もちろん、ずっと同じ人が家令を務めてくれるなら楽ではあるけどね。」
エイミーが言う。
「ですね。
でも一度、家令にしたら入れ替えるのは、苦労しそうです。」
「家令は、当主からの信頼がないと任せられないけど、大きな権限を与えられるからこそ、不正を働き易いからね。
何か不正を見つけたら、迷わず更迭しないといけないわ。
長年仕えているからとか、不正による被害が小さいからとかの情は不要よ。
小さくても大きくても、不正は不正。
最低でも家令を罷免し、2つくらいは降格させないと。」
「うーん・・・難しいですね。
ちなみにタケオ様の所は、大丈夫なんですかね?」
「あー、タケオさんの所は、多分問題ないわ。
奴隷の首輪があるから、ジーナも家令のヴィクターも大丈夫よ。
もし奴隷の首輪が無くても、元伯爵ならばその辺の意識はしっかりしているだろうしね。
うーん・・・エルヴィス家の、スミスの代の家令候補かぁ・・・今のエルヴィス家の家令は地元の人?」
「いえ、確か、元は王城の総監局勤めだそうですよ。
オルコット宰相と友人関係だった彼をお爺さまが、王城から引き抜いたそうです。」
「え?・・・そうなの?」
「はい。
今も、オルコット宰相と手紙のやり取りをしているようです。」
「ふむ・・・とりあえず、同級生からかなぁ。
スミスが後輩とどう絡むかわからないからなぁ。
というか基本的に寄宿舎は寄宿舎、宿舎は宿舎でしか上級生と下級生は交わらないのよね。
スミスは、どうすれば後輩との接点を作れるか・・・うーん、スミス、どうする?」
「わかりません。」
スミスが言う。
「うーん、どうやったらスミスの交友関係を広げられるかなぁ・・・」
エイミーが首を傾げながら言うのだった。
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王城内の総監局 メイド達の控室。
メイド達と武雄とエリカが、引き続き歓談していた。
「王城のメイドさん達の再就職先?」
「ええ、少ないのですよね。
結婚すると王城を辞するメイドが多いのですが、結婚してからも働きたい者もいるのですが、メイドとしての経験を活かせる就職先がなかなかないのです。」
メイド長が言う。
「ふむ・・・皆さん、基本的に王都にお住まいの方達なのですか?」
「まぁ、そうですね。
多くは、王城の文官や武官と結婚した者達ですね。」
「うーん・・・エルヴィス家に来れないかぁ。」
「え?エルヴィス伯爵領にですか?」
「ええ、とはいえ、何も具体化していない話なんですけど・・・メイド経験があるなら、高級宿で接客が出来ないかと思いましてね。」
「高級宿ですか。」
「はい、エルヴィス伯爵領の東町、ブリアーニ王国に近い町を観光業で発展させる構想があります。
東町自体が、まだそういった開発を始めたばかりなので、宿が足らないのですよね。
そして、外貨獲得を狙って領外から長期滞在の観光客の誘致します。それには、少し高級な宿が必要になると考えます。」
「高級宿・・・。
それに、外貨獲得ですか。」
メイド長が、目を見開く!
「国外からという意味でも、領外からという意味でもあります。
最初は、王都の富裕層が1週間くらい滞在できるようにしようと思っています。
特に、夏場の暑い時期に、暑さを凌ぐ為の避暑地として知名度を上げたいのですよね。」
「避暑地・・・ふむ、富裕層という事は、料理等も提供するというのはわかるのですが・・・
『涼むだけの目的で人が来るのか?』というのが・・・」
「まぁ、領内の名物料理を食べ、湖とかの景勝地を見てのんびりして貰う事が、最初ですかね。
旅をした事が無い人達に、観光旅行という旅をして貰い、王都以外でのんびり余暇を過ごすという新しい体験をして貰う事が必要でしょうね。
それに、他の人が知らない新しい体験をしたという事は、身近な方々に自慢出来ますよ。」
「ふむ・・・なるほど。
高級宿・・・高級宿ですか・・・少し考えてみます。」
メイド長が考えながら言う。
「ええ、やる気のある方が居たら御一報ください。
とはいえ、エルヴィス伯爵領の東町ですから、夫婦で田舎に引っ越すのが前提になります。当然、旦那様とも話し合わないといけない事でしょう。
その上で、エルヴィス領で働いてみたいという人なら、我々もお手伝いしますので。」
「はい、わかりました。」
メイド長が頷くと他のメイド達も頷くのだった。
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