第3470話 丸型焼きが出来たよ。(メイド達との歓談始まる。)
エルヴィス伯爵邸の客間。
仕事を終えたエルヴィス爺さんは、客間でアリス達と本日の新作スイーツである丸型焼きを試食していた。
「ふむ、不思議な食感じゃの。
ふわふわの生地の中に、餡子がギュッと詰まっておる。
少し、餡子が甘いかのぅ?」
エルヴィス爺さんが、新作の第一印象を口にする。
「焼き立てで熱々なのも良いですね。
私はこのぐらい甘くても良いと思います。
お茶にも合いますし。」
アリスも食べながら感想を言う。
「これ、良いねー♪」
「ぎゅー♪」
「きゅー♪」
ビエラ達も好評のようだ。
「ふむ、この出来ならお客様にも出せそうだね」
チビコノハが満足気に言う。
「うむ、この面子が揃って美味しいと言うなら、お客様に出しても問題無さそうじゃの。
今回も、屋敷の皆に食べて貰っておるから、皆の感想も後ほど聞けるじゃろう。」
「そうですね。先程、カーティアちゃんも『凄く美味しそうな匂いです!』とこの後の試食が待ち切れずに目を煌めかせていましたから、大丈夫かと。」
アリスが笑いながら言う。
「アリス、タケオ達の分が出来上がったって。
厨房に居るハルちゃんから連絡あったよ。」
チビコノハが言う。
「はい、わかりました。
ビエラちゃん、王城までお使いをお願いします。」
「はーい、任せて。」
ビエラが頷く。
「ルフィナちゃんを呼びましょうか。」
アリスがベルを鳴らすのだった。
・・
・
------------------------
王城内の総監局 メイド達の控室前。一人のメイドが扉の脇に立って招待客の到着を待っていた。
そこに武雄とエリカ、ジーナが到着する。
「タケオさん、私、ここに来るの初めてなんですよね。」
エリカが言う。
「まぁ、用があれば向こうから来ますからね。
こちらから訪ねる事が基本的に無い場所ですし、何かお願いするにしてもメイドさんが来た時に話をすれば良いでしょうからね
エリカが、来た事なくても仕方ないでしょうね。
ジーナは?」
「私も初めてです。
総監局内の小会議室とかで話した事はあるのですが・・・控室は初めてです。」
「ジーナ殿も初めてなんですね。」
エリカが言う。
「はい、お部屋の予約も総監局の受付で終わるので、メイド方の控室まで来る事はありません。
王城のメイド方は、気が付くと側に居てくれるのです。
あの手際は、見習うべきだと思っています。」
ジーナが言う。
「確かに、メイドさん方は来て欲しい時に来てくれますよね。
あれは、どうやって察知しているのか、いつも不思議なんです。」
エリカが言う。
「呼ばれてから来るのではなく、来て欲しいと思った時に来てくれるというのは、只者じゃないですよね。
となると・・・この扉の先には、そんな猛者がいっぱい居ると。」
武雄が扉を見上げながら言う。
「キタミザト様、敵や魔物が待ち伏せして居るわけでありませんよ?」
扉の横で待っていたメイドが、苦笑しながら言う。
「それはわかりますが・・・うーん、メイドや執事は、仕える相手の深い所まで知っているし、どんな場所にでも控えて居てくれるとなると・・・雇い主からの信頼が厚くないと出来ない職業ですね。」
「はい、そうあるようにと、皆が心がけております。
同僚達も待っておりますので、中で歓談いたしましょう。
キタミザト様、入りますよ?」
メイドが武雄に言う。
「・・・はい。」
武雄が小さい声で返事をする。
「はい、では、行きましょう。
失礼します。
キタミザト子爵様、同夫人エリカ様、お付きジーナ様がお着きになりました。」
メイドが扉をノックし、中に伝え、扉を開ける。
「「「「「いらっしゃいませ、キタミザト様。」」」」」
室内には十数名のメイドが整列し、礼をしながら武雄達を出迎えた。
「では、こちらへ。」
メイドが武雄達を席に案内する。
「はい、失礼します。」
武雄を先頭に席に向かうのだった。
・・
・
武雄達が席に着き、お茶とお菓子が配膳され、メイド達も座ると歓談が始まった。
テーブルの配置はロの字になっており、武雄達の対面に少し歳を重ねたメイド長が座っている。
「キタミザト様、エリカ様、ジーナ様、この度はお時間を頂きありがとうございます。
本日は、歓談をさせて頂きたくお招きいたしました。」
メイド長が立って、挨拶をする。
「いえいえ、お招きくださりありがとうございます。
今回もそうですが、私が王城に来た際に毎回丁寧に対応して頂いたり、先には私の義祖父であるエルヴィス伯爵が来城した際や、義弟のスミスと婚約した殿下方とエルヴィス伯爵の顔合わせの際にもご尽力頂きありがとうございます。
こうして何不自由なく王城で過ごせるのは、メイドさん方の尽力なくしてありません。
あと数日滞在しますし、何かとお願いする事もあると思いますが、よろしくお願いします。」
武雄が深々と頭を下げる。
「はい、こちらとしてキタミザト様に不自由なく過ごして頂けるよう努めさせて頂きます。
それに、キタミザト様のお願いは、ささやかな事ばかりですので、何も問題はございません。
もう少し私どもを使ってくれても良いくらいです。」
メイド長の言葉に、周りのメイド達も声を出さずに和かに笑う。
武雄はその瞬間「どう捉えたら良いの?怖いよ~」と思うのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




