第3469話 人事局長と総監局長との会議。3(中途募集して良いですか?)
「そうだ。
人事局長、王城内で中途採用の募集かけて良いですか?」
「うんん!?それを私に聞きますか!?」
人事局長が驚きながら聞いてくる。
「はい、人が・・・エルヴィス家で働く文官が、足りません。
地方に行きたい人、居ませんかね?
出来れば・・・王都の生活に疲れたとか、そういう人が良いんですが。
地方でのんびり働けるなら、少しぐらい給料が下がっても構わないって考えてくれる人となると・・・現状に疲弊している人しか居ないのかなぁと。」
「・・・キタミザト殿、随分と変な条件を付けますね。
それと、どの部署でも現状に疲弊している方が一定数いるのは承知していますが、地方で働く事を望むかは判りません。その様な調査はしていないのでね。」
「ま、そうですよねぇ・・・。
大々的に募集するのも変ですか?」
「うーん・・・あまり、良いやり方とは言えませんね。
キタミザト殿やエルヴィス殿の募集に許可を出すと、他の貴族達が我も我もという話になりますし。
王城としても、局を預かる責任者としても、経験を積んだ文官の流出は避けたい所ですし・・・
今回は募集はかけないでください。
中途採用については、此方で少し検討します。
王城でさえ人手不足なのに・・・どうやって地方勤務が可能な人材を探すか・・・」
「でも、王城には、毎年王立学院の卒業生が入ってくるのでしょう?」
「まぁ・・・入っては来ますが、そこそこ使えるレベルに育てるだけでも数年掛かりになるのが現状です。多分、キタミザト殿やエルヴィス殿が求める人材は、即戦力となれるだけの職務経験を積んだ中堅以上となるでしょうからね。
指示待ちではなく、自ら考えて動ける人材なんですよね。
そういった人材が引き抜かれるのは、局としても痛いんですよね。」
人事局長が言う。
「ええ、それこそが、エルヴィス家の欲しがっている人材です。
あ、もちろん若手も欲しいんですよ。でも、一番貧乏な地方領と言われていたエルヴィス領に、わざわざ来てくれる若手は今まで居なかったので、募集すらしていなかったそうです。
来年来てくれる1人が初めての若手という事で、大事に育てようと思っているそうです。」
「はは、キティ・エメットですね。
私のところにも報告が来ていましたよ?
こういってはなんですが・・・優秀なようですね?
確か、エイミー殿下を除けば、今年の3年生女子はキティ・エメットだけですから、親からも相当の期待があったと思うのですが、
自ら望んで地方に行くのですね。」
「ええ、前に面接をしましたが、エルヴィス伯爵領が大きく発展し始めたので、今行けば面白いと思ったようです。」
「なるほど。
あ、ちなみに、来年の3年生への進路志望調査は6月を予定しています。」
人事局長が言う。
「ぼ、募集の貼り出しとか出来るんですか?
用紙の大きさとか、書いてはいけない事とか、何をいつまでに準備すれば良いですか?」
武雄が「エルヴィス伯爵領の為に、あらゆる人材募集の方法を確認しておかないといけない」とメモを取り出す。
「はは、凄い熱ですね。」
人事局長が苦笑する。
「今まで若手の採用がなかったので、募集要項を提示する方法を知りません。
ちゃんと聞いて、エルヴィス家に報告して、対処しなくては。」
武雄が言う。
「募集要項の書き方等の資料は、人事局もしくは王立学院の受付にありますよ。
そちらを見ながら書類を作成し、送ってください。」
「後で、貰いに行ってきます!
皆で、戦略を立てないと。」
武雄が言う。
「はは、来年の王立学院の就職先が、キタミザト殿にとっての懸案事項になるでしょうね。」
総監局長が言う。
「えっ?魔法師専門学院にも募集出しますよ?」
「今年も、エルヴィス家より募集されていましたが・・・結果は振るわなかったと聞いています。」
「ええ、その結果は皆が肩を落としていましたが。
まぁ、皆が皆、私が王都守備隊から人材を引き抜いたからと思っているようですね。」
「ええ、事実ですね。
上の者達が抜けたので、繰り上がりで下の枠が空いて、新卒の募集人数が増えたという事でしたね。」
総監局長が頷く。
「なので、その話題が出ると、私は苦笑いするしかありません。
とはいえ、今年のエルヴィス伯爵家は軍の編成に手を入れるので、募集方法を変えると思います。」
「変える・・・ふむ、軍務に就いていないので、詳しく聞いても理解が及ぶかわかりませんが・・・
どういった募集をされるつもりなんですか?」
「そうですね・・・簡単に言うと、魔法を主体とした攻撃部隊と、救護を目的とした支援部隊の、2つを募集します。この救護隊員は積極的な戦闘参加をしません。」
「魔法師が戦闘に参加しない・・・救護専門の部隊ですか?」
「はい、平時は備品管理や人事給与関係等々をまとめる部署で、戦時は戦地後方で救護所の維持管理をする部隊です。
実際に、今回の魔王国との慣例の戦争において、エルヴィス家で臨時編成をして試験運用済みです。それを踏まえて正式に部隊立ち上げをしたいという意向です。
なので、魔法師専門学院の募集には、2つの募集を出させて貰う事になるでしょう。」
武雄が言う。
「ふむ・・・ま、魔法師専門学院の学院長に、その旨をお話しください。
私としては、今の話を聞いた範囲では問題ないと思いますが、最終的には学院長の判断になると思います。」
総監局長が言う。
「わかりました。
あと、第1騎士団とかに話を持って行って、中途採用は出来るか確認しないと。」
「そっちでも中途採用ですか?」
人事局長が呆れながら言う。
「使える人材はいくらでも欲しいんです。
仕事は幾らでもありますから、暇になる事はありません。
ですが、給料面が低いのがなぁ・・・」
武雄が難しい顔をする。
人事局長と総監局長も「どこも人が足りませんね」と思うのだった。
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