第3465話 軍務局と外交局との会議。6(クロスボウの試射をします。)
王城内の室内訓練場。
最初、第1騎士団の訓練場でクロスボウの試射をしようとしていたが、機密性を重んじ、少々手狭な室内訓練場での試射となった。
参加者は外交局長と次長、軍務局長と次長、第1騎士団長と上位陣数名と1個小隊。
試験小隊からは、ベイノンとブレアが来ていた。
もちろん、未だアズパール王国で知られていないクロスボウの試射の為、周囲から覗かれないように第1騎士団が周囲を警戒している。
「ここを踏んで、引っ張って、金具をひっかけて、矢を置くと・・・了解です。」
「なんとかできそうですね。」
「そうですね。」
武雄と軍務局長、試射を担当する第1騎士団員が説明書を見ながら各部の操作を確認していた。
「的の用意は?」
「用意完了しています!」
軍務局長が他の騎士団員に聞くと、答えが返って来る。
「ふむ・・・やってくれ。」
「はっ!」
軍務局長に言われ、試射をする騎士団員がクロスボウを持って的から20mの位置につくと、安全の為、自身のフルプレートのヘルメットと上半身の武具を装備し始める。
武雄と軍務局長も、安全の為、少し離れて盾を構えた騎士団員の後ろに移動する。
「さて、どうなるか。」
「失敗しないで!
というより、試射の後でならいくらでも失敗して良いから、この1回は成功して!輸出に繋げて!」
武雄が祈りながら言う。
「はは、そうですよね。
キタミザト殿からしたら大口契約になる可能性があるのでしょうからね。」
外交局長が苦笑する。
「準備良し!指示願います!」
試射を担当する騎士団員が言う。
「行え!」
第1騎士団長が言う。
「了解!試射1回目!放ちます!」
そう言い、騎士団員が的に向け構え・・・撃つ。
バンッ
と音と共に、的の端に命中する。
「「「「おおおお~・・・」」」」
皆がどよめく。
「連続2回行え!」
第1騎士団長が言う。
「了解!試射2回目!・・・準備良し!!放ちます!」
そう言い、騎士団員が準備をしクロスボウを的に向け構え・・・撃つ。
バンッ
という音と共に、先ほどよりも的の真ん中に寄った位置に命中する。
「試射3回目!・・・準備良し!!放ちます!」
そう言い、騎士団員が準備をしクロスボウを的に向け構え・・・撃つ。
バンッ
と音と共に先ほどよりも的の真ん中に寄った位置に命中する。
どんどん真ん中に寄っていく。
「よし!連続4回行え!」
「了解!試射4回目!・・・準備良し!!放ちます!」
そう言い、騎士団員が準備をしクロスボウを的に向け構え・・・撃つのだった。
・・
・
その後も試射を続け、計10回の試射をした後、終了となった。
「何とかなったぁ・・・」
武雄が安堵の表情を見せる。
「うん・・・キタミザト殿としては、新しい武器を紹介をするという点で上々でしたね。
軍務局長は?」
「うーん・・・キタミザト殿、今後は雨天や夜間等の全天候での運用試験を行い、警備局とも打ち合わせをして採用の可否を判断したいのですが・・・先行して何個かクロスボウを売って頂けますか?」
軍務局長が武雄に聞いてくる。
「ブリアーニ王国からは50個1組での販売なのですが・・・
今回は10個1組での注文にしますか。
値段としては提示した金額の・・・3割で。
輸送料とかを考えれば、妥当でしょう。」
「ならば、1組を。」
「わかりました。
ジーナ。」
武雄がジーナに声をかける。
「はい、注文書と注文請書は、すぐに用意します。
リーザが戻りましたら、すぐにキタミザト家に送り、王都向けの荷物と一緒に載せて貰うように手配します。」
「うん、お願いします。
まだ、ブリアーニ王国からは届いていないでしょうが、ヴィクターに処理させてください。」
「はい、畏まりました。」
ジーナが頷く。
「軍務局長、先ほども言いましたが、この商品は民間に卸しはしません。
まずは王城、王家や特定の貴族に限定して納入します。民間に流出させてはなりません。
民間に流通させないのは国防や防犯上の理由もありますが、この商品は輸入品であり、ブリアーニ王国から輸入し始めたばかりです。
複製品が出まわると、ブリアーニ王国の機嫌が悪くなるでしょう。」
「心得ております。
その辺は徹底させます。」
軍務局長が言う。
「キタミザト殿、ちなみに複製品を発見したらどうされるのですか?」
「私が乗り込めるのなら、乗り込んで、工房を物理的に破壊します。
契約では、基本的にブリアーニ王国で作った物を輸入する事になっているのですから、複製品を見つけ次第対処しないといけません。
この件を理由に、ブリアーニ王国との戦争に発展させる訳に行かないのでね。
それに複製品の取り締まりで、関与する商店や工房がある街の貴族が抗議するのなら、複製品を容認したとして、潰す・・・あ、貴族を私の一存で潰すわけにはいきませんか・・・貴族の処罰については王城に対応してもらう事になるでしょうね。
ですが、複製品という犯罪を貴族が見逃した、ひいては国家が容認したとブリアーニ王国が判断するなら・・・関与した商店や工房がある一区画程度は消失するかもしれませんね。
天災によって。」
「天災ですか?」
外交局長が聞く。
「複数のドラゴンが飛来して、軽く運動して帰っていくかもしれません。」
武雄が言う。
外交局長と軍務局長は「あれ?キタミザト殿の配下にもドラゴン殿が居ますよね?」と思うのだった。
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