第3463話 軍務局と外交局との会議。4(ウィリプ連合国とカトランダ帝国の情報。)
再び、武雄と外交局長と軍務局長の会議。
外交局長が、ウィリプ連合国とカトランダ帝国の情勢について話していた。
「ウィリプ連合国とカトランダ帝国の状況は理解しましたが・・・」
外交局長の話を聞いて、武雄が考えている。
「まぁ、今の所カトランダ帝国の方に大きな動きは見られません。
今後の動きとしては、陛下が口約束をした慣例の戦争ぐらいでしょうか。」
外交局長が言う。
「それも議論すべき事項ですが、今はウィリプ連合国の方が・・・
外交局長、新年挨拶でのウィリプ連合国の中央政府大統領や連合各国の国王の会話は本当ですか?」
「先ほども言いましたが、何人か間に入っている伝聞情報の為、真偽は不明です。
ですが、その場に居合わせた者に近い筋からの情報です。」
「『魔王国打倒を宣言し、アズパール王国に協力するように要請を出す』が、ですか?」
武雄が聞き返す。
「はい。」
「・・・・・・」
武雄が腕を組んで考える。
「この情報は、これから上げる報告書に載ります。
『真偽不明の噂話』だという注釈がつきますが。」
外交局長が言う。
「はぁ・・・その話し事実だとして、魔王国の耳に入ったらどうするんです?
これ幸いとばかりに『その喧嘩、買ってやる!』と戦争になりかねませんよ!
ウィリプ連合国と魔王国の双方から『協力しろ』と言われたら、難しい立場になりますよ?
下手したら、ウィリプ連合国と魔王国の双方が侵攻して、我が国が戦場になりますよ!
もしウィリプ連合国に協力すれば、慣例の戦争の停戦は破棄されて魔王国の強大な武力で我が国の町や村は壊滅します。逆に魔王国に協力しても、侵攻して来るウィリプ連合国は奴隷制度に積極的ですから、我が国の住民がどんな扱いを受けるのか・・・
我が国だけが割に合いません。」
「そうですね。
この情報が上がって来て悩んだのは、キタミザト殿にどう知らせるかという事です。
色々検討したのですが、『主観を交えず素直に報告しよう』で、今に至ります。」
「はぁ・・・知らされても困りますが、私が知らないまま魔王国の耳に入る方が恐ろしいので、この情報はありがたいと思いますが・・・困ったなぁ・・・」
武雄が天井を見上げる。
「キタミザト殿、どう扱います?」
「・・・外交局長や軍務局長は陛下から聞いているでしょうが、ウィリプ連合国との戦争に対して魔王国から義勇軍の派遣を受ける条件提示がされているのですよね。
義勇軍の件を報告した際、王城で外交局から聞かされたと言うほかないですが・・・良い方にも悪い方にも話が転がりそうで、交渉する立場としては『余計な事を言いやがって』と毒づきたくなります。」
「まぁ、そうですね。」
「ですが、『困った困った』と言っているだけでは、何も動かないですよね。
うーん・・・・・・魔王国に報告して感触を確かめます。」
武雄が考えながら言う。
「はい、お願いします。
他に気になる事はありますか?」
「ウィリプ連合国は、引き続き我が国を侮ってくれていた方が好都合です。警戒されない様注意してください。
それと、上層部の噂話に関する情報を収集し、真偽を確かめてください。」
武雄が言う。
「わかりました。」
「それと、スミス坊ちゃんに『カトランダ帝国向けに領地1つ分の小麦を王国の全領地から分散して買い集める』という話を振って、スミス坊ちゃんが協力できないと言った事自体は良いのですが、カトランダ帝国がアズパール王国からの小麦輸入を増やしている現状から、カトランダ帝国とウィリプ連合国を不仲にさせる動きがないかの確認をお願いします。
これは、ウィリプ連合国とカトランダ帝国の双方で確認が必要と考えています。」
「はい、我々もその可能性は考慮しております。
そもそも、ウィリプ連合国とカトランダ帝国には経済連携協定があります。
2国間の経済連携を抑制しようとする動きがあるかもしれないと考えています。」
外交局長が頷く。
「今まで1つの仕入先だったのが、2つに増えた事により価格交渉が可能になるでしょうからね。
そこでどう動くか。
価格が下がった分だけ購入量を増やすのか、それとも購入量は据え置きで支払額を減らすのか・・・はたまた何か面白い事を考えるのか。
気にしておいた方が良いでしょう。」
「はい、こちらとしてはカトランダ帝国からの注文量を注視していますが、それと同時にカトランダ帝国では卸先への聞き取り調査もしていきます。
ウィリプ連合国の方は、王都守備隊や第1騎士団といった潜入している方々からの情報を精査していきます。
カトランダ帝国は主力をアズパール王国に向かわせたいはずなので、我が国から小麦を輸入している事は公言しないと考えますが、反面で輸入小麦の価格や量を有利にしたいと目論みつつ、ウィリプ連合国に攻め込む際の大義名分を考えているはずです。
それも、経済連携協定を一発で覆す何かを。」
外交局長が言う。
「・・・物騒な方法が一番手っ取り早い方法だとは思いますが?」
武雄が考えながら外交局長を見る。
「それはクリフ殿下・・・新国王の生命を危険に晒すかもしれない行為になりかねません。
が・・・そうですね、一番わかりやすく、周知しやすい方法ではありますよね。
その辺の情報も拾えるようにしていきます。」
外交局長が頷くのだった。
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