第3461話 軍務局と外交局との会議。2(やっかみや嫌味は覚悟してください。)
「後は『両国との民間の輸出入に関しては特に制限しない。鋼材なんかの国の予算に関係する部分だけ注意してくれ。』と陛下より言われていますので、相手と交渉しながら進めて行きます。」
武雄が言う。
「そちらはお任せします。
それと、空白地帯の件ですが、交渉の経緯を鑑みても最大の成果を出されたと外交局は認識しています。
時間が限られた中、かなりギリギリの交渉だったのはわかりますが、採掘権を譲渡した事に対して貴族会議や西側貴族の反応が気がかりです。」
外交局長が言う。
「何か言ってきますかね?」
「王城内は、私と経済局長で説得します。
王城内では、この件においてキタミザト殿とエルヴィス殿に不利な意見が出る事はないと断言しておきます。
事実として、ブリアーニ王国の併合宣言という0対100の交渉開始から、土地の所有権と採掘権を分離させた共同管理案の30対70まで譲歩させたのは、国力に勝る魔王国を相手していると考えれば、これ以上ない成果です。
実利は十分なんですが『鉱山の採掘権』と言う言葉が、眩し過ぎるのです。」
「キタミザト殿の報告を陛下から聞きましたが、魔王国とは兵力が違いすぎますからね。まるで喧嘩になりません。
これがわかっていないと、エルヴィス殿が交渉で失敗したかのように捉えかねません。
特に、先の慣例の戦争では我が国は勝ったと西側貴族は勘違いしていますからね。
勝ったのに、こちらの得る物が少ないと言いかねません。
・・・はぁ・・・今回エルヴィス殿が来なくて良かったです。」
外交局長と軍務局長が言う。
「非難は、私に集中するかな?」
「「ん~・・・」」
外交局長と軍務局長が、腕を組んで考える。
「まぁ、流石に代理のスミス坊ちゃんに難癖を付けてきたら守りますけど。
それ以外は、嫌味を言われるのも仕事の内だと思っておきます。」
武雄が言う。
「授与式の控室では、警備局やキタミザト殿の同期の貴族方にもお願いしてキタミザト殿の周辺に待機して貰い、万が一の時はキタミザト殿の壁になって貰うようにはしています。」
「ご面倒をかけます。」
武雄が、外交局長に頭を軽く下げる。
「いえ、どちらかというと我々の方がキタミザト殿に面倒をおかけしているので・・・
キタミザト殿は、自由にしていてください。
キタミザト殿が身構えると、たぶん全体が緊張し始めてしまいます。
他の面々が、キタミザト殿と不穏な貴族との間に立つようにしますので、キタミザト殿は気を楽にしておいてください。」
軍務局長が言う。
「わかりました。
とは言え、自由にして良いとは言ってもゴドウィン伯爵やテンプル伯爵と一緒に居るでしょうけど。」
「そうして頂けると助かります。
お付きは別室待機になっているのですが・・・そちらも気がかりです。」
軍務局長が言う。
「ジーナもヴィートも姿形は人間ですから、種族を理由に絡まれる事はないと思います。
ただ、見た目が若いですからね・・・」
「そうなんですよね。
キタミザト殿達、貴族方もお付きの控室も警備局とメイド達が居ますから悪質な事はしてこないと思いますが・・・用心はさせてください。」
外交局長が考えながら言う。
「ジーナ、流石に剣を抜いてはなりませんよ?」
「基本的に、場内に刃物類の持ち込みが出来るのは、騎士団、王都守備隊、警備局、軍務局を除けば貴族のみです。
まぁ、警備局と協議して、警棒を携帯していますが。」
「あれ?・・・軍務局長、警棒の持ち込みは良かったのでしたか?」
「警備局が良いと判断したのでしょう。
警棒は以前見ましたが、通常では短かったですよね?」
「約20cmです。
伸ばせば小太刀と同じ50cmになります。
非殺生型の武器になりますので、護衛時と防御時のみ使用という約束で持ち込んでいます。」
ジーナが言う。
「・・・まぁ、ジーナ殿なら許可は出るでしょう。」
外交局長が頷く。
「まぁ、御前仕合の優勝者ですしね。」
軍務局長も頷く。
「あ、そうだ。
ジーナの優勝に賭けていました。
誰が私の掛け金を受け取っていますか?」
武雄がジーナに聞く。
「王族とご主人様の掛け金の受け取りは、王都守備隊で管理しているはずです。」
ジーナが言う。
「わかりました。
なら、あとで聞きに行きましょう。
で、ジーナが居る控室の、西側貴族のお付きの命が危ないのでしたか?」
武雄が、軍務局長を見ながら言う。
「ご主人様、警棒は非殺生型の武器です。」
ジーナが言う。
「スミス坊ちゃんと一緒に、ジーナが私闘に及んだ事は聞いていますよ。
どこぞの男性の腕を叩き折ったのでしょう?
ジーナの事ですから、相手を無力化する事に集中して的確な打ち込みだったんでしょう?」
「・・・それ程強く打ち込んではいませんよ。」
「えぇ、ジーナが本気で打ち込んだなら、腕が折れる程度で済むわけないでしょう?
魔眼を使ったら折れるどころの話じゃないんですから。」
「そんな私の本気の一撃を、事もなげに防ぐご主人様が目の前にいらっしゃいますが?」
「アリスとジーナの魔眼状態での打ち込みを経験しているからこそ断言します。
魔眼状態で打ち込めば、命の保証は皆無です。」
「それを打ち込まれても、ご主人様は生きていますので説得力はありませんね。」
「いやいやいや、ジーナさん?なぜそこで反論をするのかな?」
「魔眼がさも脅威だと言うからです。
ご主人様もおっしゃっていたではないですか、『速いだけ』だと。」
「『威圧感と威力は凶悪だが、それだけ』とは言ったと思いますけど・・・言ったかな?」
武雄が自分が言ったかもしれない言葉を思い出せない。
「はい!言いました!」
ジーナが断言してくる。
「・・・なら言ったのかな?」
武雄とジーナが雑談をしている中で、外交局長と軍務局長は「個人の武勇で王国の頂点に立つ者同士しか話せない事だ」と思うのだった。
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