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第3453話 専売局で打ち合わせ。2(輸入鋼材の話とステンレスが出来ました。)

次に、武雄はブリアーニ王国からの鋼材の輸入について話をしていた。


「すみません・・・話を、整理させてください。

 空白地帯をエルヴィス伯爵領に併合してアズパール王国の領土とし、其処にある鉱山の採掘権をブリアーニ王国に譲渡する。彼方側では魔王国の技術協力で鉄鉱石の採掘から製鉄まで行い、出来上がったものの一部をブリアーニ王国経由で我が国が輸入すると?」

「はい、魔王国内の流通価格の1割増しで売って貰える事になりました。

 1割り増しであっても、流通量の限られたドワーフ王国産の鉄をカトランダ帝国と取り合うよりかは安いのではと思ったんですが?」

「うーむ・・・」

専売局長が言う。

「昨夜、陛下へ報告した際には『その話、国として追認するから上手くやれ』と言われました。」

「・・・陛下は、それしか言えなかったのでは?

 その話もあって、今の会議に巻き込まれる部署が増えているんでしょうね。」

「でしょうね。

 で、輸入した鉄は専売局に卸す事になるでしょうから、先ずは今後継続的な購入枠として確保したい最低輸入量、現時点で希望する年間輸入量、最後にドワーフ王国とのバランスでブリアーニ王国に割り振れる支払い可能な年間予算を教えて下さい。」

「最初から年間予算・・・予算の総額ですか?」

専売局長が呆れながら聞いて来る。

「当然です。予算と必要量から逆算して、いくらまでの購入金額を提示可能なのかを知らないと交渉出来ません。

 ブリアーニ王国からの輸入価格は、魔王国で流通している価格の1割増とは言っていますが、デムーロ国での件で魔王国内の需要もあるのですよね。

 なので、交渉のスタートラインはその1割増しで始めますが、実際の輸出量が此方の希望を下回ったり、流通価格が変動した際に交渉を止めて、専売局の承認を待たずに私がその場で輸入価格や輸入量を変更出来る裁量権が欲しいのです。

 まぁ、魔王国側の外交や輸出入は陛下より一任されている現状ですから、キタミザト家()の利益を少々入れさせて貰いますけどね。」

武雄が言う。

「ふむ・・・即決で・・・ですか。」

専売局長が考える。

「場合によっては、今の想定価格より多少高くなるかもしれませんが、その場で即決する方が、お互いに持ち帰って決めるより数量や価格が想定に近くなる可能性があります。」

「ふむ・・・キタミザト殿は、その勢いでヴィクター殿達を買ったり、小麦や毛布の輸出案件を貰ってきているのですよね。」

「即断即決。

 危ういのはわかっています。

 無理だなというのは受けないようにしていますが、小麦も毛布のように行けると思えば、その場で引き受けて、相手が一度考えて、断ってくる前に動いてしまっていれば、断れないでしょうしね。」

「まぁ、キタミザト殿は魔王国、ブリアーニ王国からすれば他国の方。

 即決で契約を結んだり契約変更をしてしまえば、相手が他国の者であれば尚の事、結んだ契約を反故には出来ないでしょうね。」

「ええ、特に今回は魔王国やブリアーニ王国では、上から数えた方が早い立場の人達と折衝した案件なので、彼方は面子を大事にされています。

 とはいえ、小麦も毛布も実際に不足して需給が逼迫していたので、契約が反故にされる心配は無かったのですけどね。」

「ふむ・・・なるほど。

 んー・・・財政局長は今、その話を聞いているでしょうね。

 ・・・わかりました。

 キタミザト殿が帰るまでに、輸入鋼材の交渉に必要な数字を書類で用意します。」

専売局長が言う。

「ありがとうございます。」

武雄が頭を下げる。

「それにしても、ドワーフ王国に加えて魔王国からの輸入か・・・ここに来て、考えないといけない事が増えましたね。

 あ、ちなみに魔王国から輸入する鋼材なんですが、一旦王都に全数入れてください。

 その後、専売局から各地に販売とします。

 輸送費用等を安くする為に、途中のエルヴィス家での荷降ろしも考えられるのですが、それは止めてください。

 あくまで、王都に集めてからという事にします。

 これは、ドワーフ王国産の鋼材もそうだからです。」

「はい、わかりました。」

武雄が頷く。


「あ、そうだ。

 キタミザト殿、前に魔王国に行った際に、向こうから教えられた合金の配合の鉄板なのですが。」

「・・・あ、紅鋼とかいう材料を使った、硬度のみ追及した硬い鉄合金ですね。」

武雄が思い出す。

「キタミザト殿から厚さ1mm、2m×1mくらいの大きさでという依頼で試作を繰り返して、やっとお送り出来そうです。」

「製造の目途がたったのですか?」

「はい。とは言え、まだ高炉等での大規模な生産ではなく、前にキタミザト殿の協力工房に教えた小型高炉での少数生産品としての扱いになります。」

「ふむ、板厚は1mmになったのですか?」

「すみません、現場も頑張ったのですが、1.5mmでした。

 これでよろしいでしょうか?」

「十分ですね。

 性能は?」

「魔王国からの情報通り、曲げに対しての耐力はありますが、限界を超えると割れます。

 今まで見た事もない割れ方です。

 縦にビシッと!

 いやぁ、長年、鉄の合金は見てきましたが、初めてみましたよ。」

専売局長が言う。

「ふむ・・・1.5mm厚で大きさは?」

「えーっと、そちらは精製時の枠の関係で1m×2mになりました。

 1回の注文で6枚での販売ですね。

 価格としては、6枚で銀貨3枚で、送料は別です。

 納期は、こちらに注文書が届いてから3週間で発送になります。

 感覚的には、工房がエルヴィス家に注文の取次を頼んで約1か月で王都より発送です。」

「わかりました。

 注文します。

 3セット、18枚をお願いします。

 以後、エルヴィス伯爵領からの注文は他の鋼材と一緒に注文します。」

武雄が言う。

「わかりました。

 ならば、明日の昼までに注文書をお持ちしますので、提出してください。

 請求の方はエルヴィス家経由でお送りします。

 あ、そうだ、アズパール王国内での製品名はどうしますか?」

「あ、なら、ステンレス鋼としてください。」

「わかりました。

 以後、ステンレスという鋼材名で流通させます。」

専売局長が言うのだった。


ここまで読んで下さりありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
その時歴史が動いた……までは行かないかもしれないけど凄い発明だよなぁこれ
大変な更新回ですね。 > キタミザト殿が帰るまでに、輸入鋼材の交渉に必要な数字を書類で用意します。 > 今後継続的な購入枠として確保したい最低輸入量、 > 現時点で希望する年間輸入量、最後にドワー…
割れたらマズい箇所には使わずに、割れることを指標にできるところで使えば(この時代で言えば先進的な)危険の事前察知とかできそうよね。
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