第3446話 ボールドと打ち合わせ。(王都でのキタミザト家関係の仕入れのまとめをしませんか?)
王立学院の学院長室。
武雄とジーナ、ボールドが話をしていた。
「はははは!いやぁ!面白い! まさに、青春ですねー♪」
武雄が笑っていた。
「はぁ・・・笑い事ではないですよ・・・」
ボールドが、ガックリと肩を落としながら言う。
「はぁはぁはぁ・・お腹痛い・・なんで一気に裸のお付き合いに行くのですか?
あ!いえ!わかりますよ?私も男です!綺麗な子に手を出す気持ちは十分に!
でも、相手は王族の姫君ですよ!
新興貴族の、それも男爵家の息子じゃ、普通は手を出せないくらいの高嶺の花だと思いますけどね。
しかも、エイミー殿下に現場を押さえられるとか、あはははは、手を出すならその辺はバレないようにしないといけませんよ♪
まるで大衆向け小説みたいな事をする人が、実際にいるんですね。」
武雄が目尻の涙を拭いながら言う。
「本当・・・何してくれているんだか・・・」
「まぁまぁ、経緯はどうあれ、結果的にはアズパール大公にも認められたんでしょう?
良かったですね。」
武雄が言う。
「良かったんですかね?」
ボールドが聞いてくる。
「うん?もう取り消せないでしょう?
なら、受け入れるしかないじゃないですか。」
「まぁ、そうなんですが。
息子だけでなく、私の方にも色々と条件がありましてね。」
「まぁ、でしょうね。
アズパール大公の言葉だけで、納得する貴族ばかりではないでしょう。
いくら子供達が勝手に見初めたと言っても、親の実績も必要でしょうね。
ま、今回陞爵しますし、少しは有象無象の声が小さくなるかもしれませんね。」
「そうであれば良いのですが、私の陞爵は息子とグレース殿下がやらかした結果ですからね。」
「ボールド殿やアズパール大公の意思とは別に、客観的に見ればボールド殿が息子を政争の駒に使ったのですから、親自身も爵位相応の力を示さないといけないでしょうね。
息子さんの為です、甘んじて苦難を受け入れてください。」
武雄が言う。
「はぁ・・・そうですね。
それにしても目に見える成果が望まれているのですが、王都務めでは、なかなか無いのですよね。」
ボールドが考えながら言う。
「目に見える範囲にないなら、掘り起こすしかないですね。」
「掘り起こしですか?」
「ええ、商機というのは何処かに眠っているものです。
例えば・・・貴族会議の方々の副業は、主に不動産業と運送業と酒場でしたか?
商売で、王都の利権に食い込みましょうか。」
「・・・キタミザト殿、喧嘩を売るのですか?」
「なんで、最初からバレるような事しなければならないのですか?
わざわざ教える必要はないでしょう。
それに奪う訳ではありません。
扱う物を変えれば良いだけです。
商売は競争するのが当然。
競合を上回る品質、安定した供給、適切な価格を用意すれば自然に集客出来るのが商売です。そこに、目新しさや希少性が加われば申し分ありません。
相手の店が潰れるのは、努力を怠ったからです。」
「それは・・・そうですが・・・」
ボールドが考えながら言う。
「例えば・・・エルヴィス伯爵領から仕入れてみますか?
ゴドウィン伯爵領からも入れられるでしょうけど、2つの仕入れルートを持てば、それなりの商品が扱えますよ?」
「ふむ・・・エルヴィス殿の所からという事は、キタミザト殿のかかわる商品も?」
「ええ、というより・・・主に私の協力工房からの商品の取り扱いでしょうかね。
現在、衣服は製造元の協力工房が王都の小売店に直接卸しています。
将棋や黒板は、協力工房と客先の直接取引です。
その他の雑貨も他の店で扱っていますが、協力工房と小売店の直接取引です。
なので・・・あ、衣服は無理ですが、他の商品の取次販売をする店を王都に持ってみては?
卸売業ですね、王都内のキタミザト家、エルヴィス家からの注文を一手に担って貰います。
やる気があるのなら、手筈を整えても良いですよ?」
「うーん・・・なるほど。
キタミザト殿にメリットは?」
「窓口が1つになるという事は協力工房や店の仕事が減らせます。
また、今は製造元の協力工房が個々に客先との取引をしているのですが、それを1つの卸先に集約する事で王都での販売傾向が掴みやすくなります。
協力工房間の連携もしやすいでしょう。」
「協力工房間での諍いはないのですか?」
「私の協力工房間では共栄共存が成り立っていますからね。
その心配はいりません。
それにボールド殿だって・・・例えば、黒板を売りに行ってた先で、話の流れで家具を売り込んでも良いわけです。」
武雄が言う。
「それはまた・・・随分と別の商品ですね?」
ボールドが苦笑する。
「そうですか?
王立学院内を見ても、教室の中に黒板があり、机があり、生徒達が物を置く棚があるのでは?
それを別々の業者に発注するのではなく、一つの業者に頼めば揃えられるのです。
発注や清算が1回で済みます。」
「なるほど。」
「それに将棋、リバーシ等の玩具や黒板、鉛筆、消しゴム等の文具なんかも一緒に注文出来ます。
個別に発送するより、1回にまとめて送れば送料も安くなりますからね。
それに、ボールド殿という貴族の店なら、信用も高くなって購入する側も安心でしょうからね。
希少な懐中時計の注文や、王城からの大口注文もあるかもしれません。
それに、私の協力工房の商品は王城や貴族からの注目度が高い商品です。これらの王都での流通を握る事は、口さがない貴族達を黙らせる程度の効果はありますよ。陞爵に値する成果とは違いますが、ボールド殿の王都での影響力は無視出来なくなるでしょう。」
「そうなのですね。」
「ちなみに、卸売業者が仲介すると中間マージンで価格は割高になるかもしれませんが、反面、物流や代金決済がシンプルでスムーズになります。
ま、一度考えてみてください。」
武雄がボールドに言うのだった。
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