第3444話 3研究所会議。5(王家専属魔法師部隊の研究進捗。)
「さて、最後は私達の長距離通信研究の報告ですね。
進捗状況としては、1割と言ったところです。」
王家専属魔法師が言う。
「へぇ・・・1割も進んだんですか?」
武雄が聞き返す。
「うっ・・・困難さはキタミザト殿はおわかりでしたか。」
「まぁ、相当に難しい技術だろうなぁとは思います。
最終的には、短い会話が出来るようになる・・でしたよね?」
「えぇ、城門と王城間での通話が目標です。」
王家専属魔法師が言う。
だが、武雄は「3都市間の意思伝達構想案が元になってウィリアム殿下経由での王家専属魔法師への依頼だからなぁ、本来の目標は遥か先なんだけどなぁ」と思っていたりする。
「確か、以前の会議で『隣の部屋への伝達』、『城内の距離が離れた部屋』、『王城と訓練場』、『城門と王城』という流れで、通話距離を広げていくという話でした。
確か、幌馬車に搭載できる大きさにすると皆様で話されたと記憶しております。」
コンティーニが言う。
「はい、あの時は白熱した良い会議でした。
さて、1割としたのは、途中成果として『隣の部屋への伝達』が出来たからです。」
「ほぉ。」
「伝達が出来たんですかっ!」
武雄とアルダーソンが関心する。
コンティーニは、言葉を発する事が出来ずに驚きの表情を浮かべていた。
「はい。
とはいえ、壁を挟んで隣の部屋、直線距離にして15mです。」
「え?15mも?
壁は木造ですか?石造りですか?」
興奮した武雄が聞いてくる。
「木造です。
ですが、ここで問題が。
現時点での装置の大きさが、机2つ分になりました。
そして、双方向での会話が出来ておりません。
今の所、単方向で20文字程度の短文が送れるようになりました。」
「「「「・・・」」」」
一研と二研の4人が考える。
「王家専属魔法師部隊としてはこの成果を踏まえ、音声での会話を一旦保留とし、文章の送受信に機能を絞る事で早期に実用化を図りたいと考えております。」
王家専属魔法師が言う。
「質問が。」
武雄が挙手する。
「はい、なんでしょうか?」
「私も、音声での会話に拘る必要は無いと考えます。
あの時の話では、最前線より後方に待機する王族や領主達、戦争を指揮する者達に対し現状を報告、それを受けて後方から前線部隊へ直ぐに指示出来る事を可能にする為の研究でしたよね?」
「はい、そうです。」
「で、あるのなら、短期的な目標を伺いたいです。
どのくらいの文字数を送れるようにしようとしていますか?
私も今回、魔王国との慣例の戦争で鷲を使って王城へ情報をお送りしましたが・・・中継役を務めたジーナ、貴方はどのくらいの文字数が必要だと思いますか?」
「はい・・・ご主人様の送ってきた内容がおかしい量だったというのを考慮しても・・・誰から誰宛であるか、現状の短文の報告を考えると最低、100文字はないと現状は伝えられないと考えます。」
ジーナが言う。
「ふむ・・・王家専属魔法師殿、どのくらいを目標にしますか。」
「・・・100・・いえ、120文字を目標にさせて貰います!」
王家専属魔法師が言う。
「120文字か・・・アルダーソン殿、戦地から100文字程度で送れる内容を絞る事は出来ますか?」
「宛名を除いて100文字ですか・・・必要最低限ならば・・・でしょうか。
その辺は実地試験をしながら確認しないといけないと考えます。」
アルダーソンが言う。
「ふむ・・・実践を想定しての訓練を重ねないといけないか。
文字数の設定はした、距離はこれから伸ばしていく・・・
この技術は早々に実用化して、訓練をしながら発展させないといけないです。
王家専属魔法師殿、この研究で困ったことがあれば、私や一研に相談を。
外から見たから気付く事があるかもしれません。」
「わかりました。
その際はご相談させて頂きます。」
王家専属魔法師が頭を下げる。
「さてと・・・王家専属魔法師部隊の研究の話も聞き終わりましたが・・・
あ、王家専属魔法師殿、デムーロ国から持ってきましたよ。」
武雄がリュックから冊子を2冊取り出す。
「デムーロ国で手に入れた精霊本が2冊です。」
「精霊本であれば、前回と同額で買い取ります。金貨10枚ずつで2冊、合計金貨20枚でお願いします。」
王家専属魔法師が頷く。
「キタミザト殿はいつもこのようなやり取りを?」
アルダーソンが聞いてくる。
「あれ?知りませんでしたか?
ほら、私達の所って精霊魔法師が多くてですね・・・王城でもうちの者達数名が精霊魔法師になりましたから。
減った精霊本を補充をしているんです。
良い値で引き取って貰っていますよ?」
「はは、適性がある者が多いのは羨ましい限りですが、出来るのにさせないのは国家の利益に反するでしょう。
幸い、キタミザト殿の元に行っている精霊方は戦争には不向きなようで。
まぁ、一兵士よりかは良いのでしょうが、戦争に従事するというのは精神的にも肉体的にもキツイ事です。
非戦闘員の方に戦闘が得意な精霊が付かなくて良かったですな。
それに、キタミザト殿がこうやって精霊本を持ってきてくれたという事は、キタミザト殿の身近に適応者がいなかったという事です。
私としてもキタミザト殿に、こうやって持ってきていただいて感謝しております。
その分、王都で精霊魔法師になれる者が増える可能性があるのですから。
アルダーソン殿も精霊本を見つけましたら、私にお譲りくださるとありがたいです。」
王家専属魔法師が言うのだった。
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