第3443話 3研究所会議。4(二研の研究も長い目で見れば経費削減になるのかも。)
「ご主人様、部屋の隅に盾と剣等を片づけ終わりました。」
「はい、ご苦労様です。
皆さんが先程の結果について考えていますよ。」
「「「「うーん・・・」」」」
既存の盾と二研の試作品、2つの盾でジーナからの打ち込みを受け終わった面々が席に戻り考えていた。
「なんとも不思議な感覚でしたね。
既存の物より重く感じましたが、受けた衝撃は柔らかかったです。」
王家専属魔法師部隊の次席が言う。
「確かに・・・柔らかいという表現がしっくりきますね。
衝撃が小さいように感じました。」
コンティーニが言う。
「足腰で踏ん張る感覚は変わらないが、盾を持つ腕の感覚は違ったな。
受け止めた衝撃の減衰力が違うという事でしょう。
既存の物よりも、防御後に体勢を崩され難く、反撃に移りやすいかもしれません。」
アルダーソンが言う。
「ふむ・・・キタミザト殿、この出来栄えで8割なのですか? 足りない2割とは?」
王家専属魔法師が聞いてくる。
「はい、研究室長からの報告では、盾の隅に先ほど想定した魔法を当てたら貫通したそうです。
なので、その問題を解消すれば、一応の完成としてご報告出来るでしょう。」
「なるほど、わかりました。
次回は開発完了の報告が聞けるでしょう。
この盾の開発完了後、次の研究は考えておりますか?」
王家専属魔法師が武雄に聞く。
「第二研究所では、自陣での防御の際はこのサイズで大型の盾として扱い、攻撃に転じる際もしくは移動時は盾を3分割にして小型の盾を兵士達に持たせられるようにする構想があります。」
「「分割式の盾。」」
王家専属魔法師とアルダーソンが呟く。
「過去に遡ってみるとあるかもしれませんが・・・現状で分割式の盾を見かけないので、そういった物を考えてみました。」
武雄が言う。
「キタミザト殿、その分割式の盾の研究には着手されているのですか?」
「ええ、研究室では考察を開始していますが・・・問題は山積のようです。
こちらは、今の所期限を設けずに色々と検討している所です。」
アルダーソンの言葉に武雄が言う。
「そうですか・・・ふーむ・・・」
アルダーソンが考える。
「アルダーソン殿、分割式の盾に興味が?」
王家専属魔法師が聞いてくる。
「ええ、二研の試作品を見て感じたのは、慣例の戦争等の戦地で陣地等の防衛を重視した戦術を念頭に置いた盾であるという事。
そして、今、キタミザト殿が研究を始めるのは、我々のような小部隊での戦闘行動を補佐する物を用意するが、戦闘行動をしない時は陣地を守るのに使っておくという事で。
分割式は構造が複雑になる分だけ盾のコストが嵩みますし、分割した部分を別の馬車で運べば輸送コストが嵩みます。但し、戦術的には部隊の機動力が向上します。如何にして盾の生産コストを下げ、上昇する運用コストを抑制出来るかが課題になると思います。」
アルダーソンが言う。
「大型の盾は持ち運びに苦労するのでね。
移動する際は分割した盾を皆で手分けして運び、現地で組み立てて使用するという考えですよ。
もちろん、分割した状態でも一定の防御力を確保しますが、じっくり守る時は連結して大型化した方が良いでしょうからね。
ただ、単純に分割した盾を兵士が手分けして持ち運ぶという事は、現地で陣地を守る際に盾を連結すれば、兵士の人数に対して盾の個数が不足するという事です。分割式盾の運用には盾の輸送や部隊編成の工夫が必要です。
なので、陣地を構築し、守る戦いをするのであれば、素直に従来の大型な盾を配備した方が良いでしょう。」
武雄が言う。
「ふむ・・・基本的には試作品の様な非分割の大型盾、部隊運用に合わせて一部を分割式の小型盾としておけば、大部隊での行動時も使えて、そこからの小部隊の行動にも反映させられるという事ですね?」
王家専属魔法師が言ってくる。
「そうなれば良いですね。
まぁ、今回の盾の完成とともに製造方法と基本価格は私達研究所の管理とし、守秘義務で縛った協力工房で生産、守秘義務付きで騎士団等へ納入する事になるでしょうね。
今回の一研と同じです。」
「なるほど。
王都は私が担当ですね。」
「ニール殿下領や西側貴族への販売は私ですね。」
王家専属魔法師とアルダーソンが言う。
「はい、東側貴族は私です。
もちろん、複製品を発見したら罰金を課すだけでなく、作った業者を潰す事をお願いします。
これは、国の研究機関の商品が不正に複製されるのを防ぐ処置ですからね。」
武雄が言う。
「「ええ、当然ですね。」」
「ま、最初は貴族方に売り込みますからね。
そこで横流しや不正品が見つかれば、関わった貴族がどうなるか・・・
陛下直轄組織の商品を複製するって大事でしょうね。」
「「でしょうね。」」
「とはいえ、製造元の私達はそこまで大きな利益を求めなくて良いと思いますけどね。」
武雄が言う。
「そうですね・・・西側貴族だけで一体どのくらいの盾が売れるのやら。」
アルダーソンが考えながら言う。
「その後の修繕も含めれば、結構な利益が積み上がりますよ。
ま、5年毎に改良修正した新版を発表して装備の更新を促していけば、それなりに売り上げも期待出来ると思いますがね。
利益はそこそこで、長期間の取引をして貰える商品と仕組みを考えましょう。」
武雄が言う。
「「はは。」」
王家専属魔法師とアルダーソンが苦笑する。
「えーっと、第二研究所からの進捗報告は以上です。
今後も盾を中心に開発していき、また、他に成果があったら随時発表と報告をしていきます。
あ、後、武具の共通化や規格の標準化については次回以降に報告をします。」
武雄が言う。
「わかりました。」
「はい、今後ともお願いします。」
王家専属魔法師とアルダーソンが頷くのだった。
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