第3441話 3研究所会議。2(一研の研究成果。)
「うーむ・・・難しいですね。」
アルダーソンが言う。
「んー?アルダーソン殿、難しく考えると体に悪いですよ。
ある程度、シンプルに考えないと。
要は情報をしっかり集めて、皆さんに現状を報告する。
その上で、アルダーソン殿は現状から想定される展開と、可能な対応策を提示。
『あとは領主貴族方の合議でも、総指揮官の判断でも好きに決定してね』と言って結果をぶん投げる。
それが済んだら、後はアルダーソン殿が作戦会議を主導しないように立ち回り、推移を見ていれば良いんですよ。」
武雄が言う。
「そんな簡単には・・・」
アルダーソンが苦笑する。
「いや、それは良いやり方ですね。
キタミザト殿が先ほども言った『我々は情報を集める部隊』というのを仕事として徹底するなら、現状をしっかりと把握して、報告すれば自分達の役割を果たした事になるでしょう。
戦地に動員された貴族領軍を実際に動かすのは、現場指揮官たる領主貴族方です。
アルダーソン殿の情報を信じて戦術を考えるか、信じないで戦術を考えるか。
彼らはどちらかを選ぶでしょう。
採用する戦術の決定は、アルダーソン殿の領分ではないです。
なので、ここでアルダーソン殿の情報を信じなくても、アルダーソン殿は怒らず、何も言わずに会議の決定に頷いておけば良いのです。
どの様な決定であろうとも、領主貴族方の同意と指示が無ければ兵士達を動かせないのですから。」
王家専属魔法師が言う。
「そそ、アルダーソン殿、情報を集めてくる大仕事の後は、他の方の領分ですよ。
私達研究所の部隊は数が少ないので、戦闘時は後方待機で良いんですよ。」
武雄も言う。
「・・・なるほど、情報収集と現状分析を行えば、その後の事は他の方がすると?」
「そうですね。
研究所は戦闘力としてあてにすべき部隊ではありません。」
「機動性や即応性、情報収集用の少人数組織ですよ?
陛下が大人数を与えないのは、役割が戦力ではなく情報収集だとお考えだからですよ。」
アルダーソンの問いかけに王家専属魔法師と武雄が頷く。
「なるほど・・・・コンティーニ、わかったか?」
アルダーソンが隣で書記をしているコンティーニに聞く。
「・・・まぁ、言っている事はわかります。
そしてそれを貫くには、受け身でなく積極的に情報を取りに行く方法を確立をし、正確な情報を分析する能力が必要という事です。」
コンティーニが書くのを止めて言う。
「まぁ、キタミザト殿みたいに戦闘で戦果を上げてしまう方が例外で、研究所本来の目的はそうだという事です。
キタミザト殿が戦闘に参加したからといって、私やアルダーソン殿が同じことをしないといけないというわけでもありません。」
王家専属魔法師が武雄に言う。
「私のは所詮、オーガ相手の戦術ですよ。
これが、魔王国の地方領軍や王軍の魔族相手なら通用しなかったでしょう。
ま、その際は盾を構えて、防御を固めて向こうのやる気が失せるまで耐え続ける程度だったでしょう。」
武雄が呆れながら言う。
「ふむ・・・まぁ、停戦に至らず戦闘が継続していたらキタミザト殿の言うとおりになったかもしれません。
ですが、結果はこの通り。
相手に慣例の戦争継続を断念させるだけの衝撃を与えたと。」
「ええ、その為の情報収集はしていましたからね。
上手く行って良かったです。
お二人はゴドウィン伯爵の報告書を読んでいますよね?
私の主観での報告は、今回陛下に提出してきました。
あとで読んで見てください、参考程度にはなると思います。」
「「わかりました。」」
王家専属魔法師とアルダーソンが頷く。
「さて、魔王国との慣例の戦争の話で盛り上がりましたが、そろそろ研究の話をしましょうか。」
王家専属魔法師が言う。
「「はい。」」
武雄とアルダーソンが頷く。
「まずは、第一研究所ですね。
早々に使用魔力量軽減の指輪が出来たそうで。
大変立派な成果ですね。」
王家専属魔法師が言う。
「おめでとうございます。」
武雄も言う。
「ありがとうございます。
陞爵の通達の際に王家専属魔法師殿、キタミザト殿には連絡が入っていると伺っています。
一応、成果が出たという所を陛下が評価してくれたと考えております。」
「ふむ・・・詳しい内容はなかったのですが、使用魔力の1割減なのですね?」
王家専属魔法師が聞く。
「はい、正確には初級魔法の発動にかかる魔力量を1割減に出来る指輪になります。」
アルダーソンが言う。
「ふむ・・・」
王家専属魔法師が考える。
「初級魔法とは、どこまでですか?」
武雄が聞いてくる。
「ご説明します。
今回の指輪で効果がある魔法は、ファイア、アクア、ストーン、ブリザドになります。」
コンティーニが言う。
「ふむ・・・4つですか。
・・・これは素晴らしい。」
王家専属魔法師が頷く。
「その4つなら戦術の幅が広がる・・・、魔王国との戦争でも、使用したポーションの数が尋常じゃなかったから、1割減でも相当数のポーションを節約出来たはず・・・。
凄いな。とんでもない指輪を開発しましたね。」
武雄が称賛する。
「・・・」
「その程度か」といわれると覚悟していたアルダーソンが少し呆気に取られている。
「・・・再び失礼します。
第一研究所としては、今後の方針としては、1割減の効果がある魔法の種類を増やす事と、使用魔力量を2割減にする事を目指したいと考えています。」
コンティーニがアルダーソンの代わりに発言するのだった。
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