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第3440話 3研究所会議。1(私達は情報を取りに行く組織です。)

王城内の小会議室。

王家専属魔法師と次席、第一研究所のアルダーソンと研究所長コンティーニ、第二研究所の武雄とジーナが居た。


「それにしても、キタミザト殿の戦功は凄いですな。

 私も背筋を正して、報告書を数回読ませてもらいました。」

王家専属魔法師が言う。

「はは、私達試験小隊の働きが突出しているように見えますが、あの地に居た全兵士達の努力の結果です。」

武雄が言う。

「うんうん、そうですな。

 結果から見れば、キタミザト殿のやりたかった事はわかりますが、準備段階で、その結果を想像させ、他領の方々を説得し動かすのは、並大抵の苦労ではなかったでしょう。」

王家専属魔法師が頷きながら言う。

「現地に居た3伯爵の1人は妻の祖父でしたし、他の2人も顔見知りでしたからね。

 それに、魔王国側の展開兵力が、こちらと比べて著しく不均衡でしたからね。

 皆が皆、何かをしなければいけないと考えていた。でも、余計な事をしなかったのが良かったと思います。」

武雄が言う。

「なるほど、現地の状況も加味されての結果ですか。

 ふーむ、また読み直しますかな。」

王家専属魔法師が頷く。

「私も王城に着いてから読み直しましたが、キタミザト殿、どうやってあの戦術を考え付いたのですか?

 相手の配置とか・・・報告書では多く語られていませんでした。」

アルダーソンが聞いて来る。

「敵軍の配置については、随時確認していましたよ。

 私の場合は妖精のミアが率いる鷲達を使って、朝夕と戦場の上空を飛んで貰い、配置等に変化が無いかの確認と監視をしていました。

 それに開戦直後にうちの試験小隊が敵陣地に近寄って初期配置を確認しにも行っています。

 初期配置から何かが変わるのなら、敵軍が何をする気なのかを考察し、危険と判断したら伯爵達に連絡と相談、その対応を検討をしていました。」

「そんな事を・・・」

アルダーソンが考えながら頷く。

「私達研究所は、平時は研究をしていますが、戦時は戦場の情報を集めるのが仕事です。

 アルダーソン殿、刻々と変化する戦場の情報は大事ですよ。

 今、何が起こっているかを把握し、これから起きる事を予想し、他の皆さんに現状と想定を説明するのです。」

武雄が言う。

「ん〜・・・キタミザト殿のやっていた事を簡単に説明されただけでも情報が大事なのは、わかりますが・・・どうやるか・・・」

アルダーソンが

悩みながら言う。

「ミアはあげませんよ?

 紹介もする気はないです。

 もし、ミアを紹介をして働きが想定以下だった場合、私がミアにそう指示したと言われかねないですからね。」

「いや、そんな事は言わないですよ。」

アルダーソンが苦笑する。

「失敗すれば全軍敗走。

 前線指揮官達は責任の所在を問われ、誰のせいで負けたのか原因を追求されるでしょう。

 その際は、集めた情報に不備があったとアルダーソン殿にも矛先が向くでしょう。

 言い訳は・・・私が紹介した妖精でしょうか?

 ・・・我が身が可愛いのは誰でもそうです、今、そうでないと言ったとて、自身と家族の命に関わるかもしれない、敗戦の責任を免れるのであれば意見が簡単に覆るのが人間ですよ。」

「・・・」

アルダーソンが難しい顔をさせる。

「というわけで、我々は前線に展開している兵士達の命運がかかっている情報を扱うのです。

 過小、過大、見間違い・・・そんな情報を渡され続けたら信用出来ないでしょう?

 なので、こういった仕事をさせるのは、アルダーソン殿が自ら見つけ信頼を置ける者でないといけません。

 私にとってのそれが妖精のミアであり、その配下の鷲達だというだけです。

 ミアを始め、ミア軍団の者達は私に対して正直に受け答えをします。

 わからないならわからない、知らないなら知らない、微妙なら微妙と。

 なので、この子達の言葉を精査し、どう転んでも良い(・・・・・・・・)ように、自身の言葉で他の人達に説明するようにしています。」

武雄が言う。

「どう転んでも?」

「私に上がる情報は、見た目からの情報がほとんどです。

 なので・・・例えば戦場で、私が他の方に説明をする時には、ミア達からの報告を元に敵の数を過小評価、報告のまま、過大評価の3通りとして、対策を用意しておきますね。

 現状の報告をした上で、3通りの対策を提案し、他の方々の反応を見ます。」

「なるほど、それなら実際にどれが来ても誤差の範囲になる訳ですな。」

武雄の説明に王家専属魔法師が頷く。

「私達、情報を取ってくる者だって、『保身をして何が悪い!』っという事ですよ。

 で、3通り説明してから、情報を受け取った方々に、この後はどういう方針で進めるのか問う形になりますね。

 アルダーソン殿、ここで重要なのは『情報を受け取った相手方に決めさせる』ですからね?

 出しゃばってはいけませんよ~?ね、王家専属魔法師殿。」

武雄が王家専属魔法師に言う。

「ふむ・・・なるほど、キタミザト殿は私達はあくまで『研究所は戦場で情報を集める組織』であるという事を徹底するべきだという事ですね?」

王家専属魔法師が言う。

「ええ、今回の魔王国との慣例の戦争でもわかりましたが・・・私達は小隊編成の小さな部隊でしかありません。

 なので、戦争で戦闘部隊を運用するのは、複数の貴族領主軍ないし、王都の騎士団となります。

 その方々が、事前に集められた情報によって作戦を決定し、皆が合意して戦闘に臨む事で、全体がより機能的に動くのです。」

武雄が言うのだった。


ここまで読んで下さりありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
一言:タケオ の親心なのでしょうね。  色んな意味で。 同期の飲み会で、  アルダーソンから、厳しい言葉を感謝され、  それを聞いていた新貴族が、貴族会議の方向性を、決めていく そうなっていくと、…
中堅サラリーマンの本領発揮ですね。
タケオは速く合意させるように、根回し(事前の情報共有)や誘導的な言い回し(分かりづらい)もやらかしてるからね。(報告書未表記)
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