第3438話 研究所の総務部では。(展示即売会の企画と丸ゴムの契約書。)
第二研究所の3階 総務部。
「ヴィクター様、どうでしょうか?」
アスセナが提出した書類を見ているヴィクターに聞く。
「ふむ、主が持ってきたデムーロ国の物と、魔王国から送られてくる品々の展示即売会の概要ですが。
これを3種類に分別するというのですね。
私は良い案だと思います。」
「ありがとうございます!」
「主がデムーロ国から持ってきた品々は、研究所2階の倉庫に保管して置いていますが・・・
アスセナ、リストと見比べましたが、どう思いましたか?」
「日用品の数が多かったのではないかと。
少数の嗜好品というか意匠性が高い物が含まれていると思いました。
大袋を使用しての輸送でしたので、割れたり、ヒビがあったり、大きな欠損があるような物もなかったかと。」
アスセナが言う。
「うむ、だが、少々の傷がある物もありましたね?」
「はい。」
アスセナがヴィクターの言葉に頷く。
「・・・ふむ・・・雑貨屋のイーリー様にこの企画書を見て貰うと同時に今2階にある物を検品し、修繕出来る物はしてみた方が良いと思いますが、アスセナはどう考えますか?」
ヴィクターが聞く。
「はい・・・ヴィクター様、イーリー様を頼って良いのでしょうか?」
「ふむ、確かに主が買い付けた物に手を加えるというのは心苦しいかもしれませんね。
確かに美術品、嗜好品については、入手先が特別だった場合は、手を加えてはいけないかもしれません。
ですが、今回については大丈夫でしょう。
一商店からの入手ですからね。
それに、今回の展示即売会は今後の魔王国からの輸入拡大に繋がる試金石になるかもしれない事と、主の小遣いを回収する事が優先事項になります。
なので、軽微な欠損等で修繕が可能な物は直して販売しないと価格が下がってしまう、もしくは売れ残りになると考えます。
主は売れ残っても良いと言っておりますが、出来る限り、売れる物は売らないといけません。」
「なるほど。
そこでイーリー様にご協力を仰ぐという事ですね?」
「ええ、イーリー様は協力工房の中では、販売に特化している方です。
なので、各商品の仕入れ先や工房を知っているでしょう。
その中で、修繕を請け負ってくれる方を紹介いただけるかもしれません。」
ヴィクターが言う。
「ですが・・・イーリー様を信用しない訳ではありませんが、修繕を手掛ける工房まで信用しても大丈夫なのでしょうか?」
「確かにワザと目立つ修繕をして、安く物を買い、その後、綺麗に修繕するという事も考えられますが、それはそれ。
綺麗にして販売する際にデムーロ国産、魔王国産と銘打つでしょうし、私達は修繕前の物を見ています。
イーリー様の商売の仕入れ先の話ですが・・・下手な修繕をするようなら、次はないでしょうね。」
ヴィクターが言う。
「ふむ・・・キタミザト家が持ってきた物の修繕を請け負ったにも関わらず・・・ですか?」
「いえ、本当に上手く修繕出来ない物というのはあるでしょう。
なので、私達は何も言いません。
修繕した物と実際に展示即売会後に店に並んだ商品で差異があった場合、イーリー様は、その工房や店と取引はしなくなるだろうという事です。
少なくとも、イーリー様は主と直接話をしますからね。
主に『修繕を依頼されて、手を抜く工房と付き合っているのか?』なんて問い正されたくないでしょう。」
ヴィクターが言う。
「そうですね・・・わかりました。
この概要を持って、イーリー様の所に行って、お願いして来ようと思います。」
「ええ、そうしてください。
それと陳列方法については、また後日、魔王国から来る品々を含めて考えないといけないですが、今の所の概要についてもイーリー様の意見を聞いた方が良いでしょう。
アスセナも販売員をしていましたが、イーリー様は、この地の方です。
この地の方が好む陳列というのもあるかもしれません。」
「わかりました。
陳列方法等も含めて、イーリー様と打ち合わせを実施します。」
アスセナが頷く。
「はい、では、こちらは返します。」
ヴィクターが企画書をアスセナに渡す。
「はい、ありがとうございました。」
アスセナが礼をして、自分の席に戻る。
「ふむ・・・ふぅ・・・」
ヴィクターが茶を飲みながら外を眺める。
「ヴィクター様、スズネ様の丸ゴムの契約書が出来ました。
アスセナ様に確認頂きましたが、ヴィクター様もお願いします。」
マリスがヴィクターの元に書類を持ってやってくる。
「はい、わかりました。
今日の夕方までには見終わります。」
「はい、お願いします。」
マリスが書類を置いて、自分の席に戻る。
「ふむ、契約書ですか。
主が戻ったらまた、何か始まりそうですね。」
ヴィクターが呟き、お茶を置き、契約書の中身を確認し始めるのだった。
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